第12話 最弱ついに最弱を卒業

ザタンは落ち込みため息をついていた。


「はぁ~……」


「ザタンくんどうしたんでしょう……」


「分からないぜ……」


「理解不能……」


「もしかしてワリンさんが来ないことと関係してますの……?」


4人はこそこそ話していた。


「だったら聞けばいいんじゃない?わたし聞いてくるね♪」


「ちょ……!」


アーチの呼び止めも間に合わず


「どうしたのザタンくん、何かあったの♪?」


事情も知らないでニコニコのミッド


「実はワリンに絶交だって言われてよ、どうしたら良いのかわかんなくって……」


「そんなザタンくんに我がウルフ族に伝わる幻の術を教えるよ♪その名もハグ!これを30秒されればどんな種族もうっとり♪」


「あんな魔術ダーリンが騙されるわけ……」


「ありがとうミッド、俺頑張ってワリンを連れ戻してくる!」


「瞬殺……」


俺は教室を飛び出してワリンを探しにいった。


その頃ストレス狩り中のワリン達


「シャア!」


バースの双剣で切っていく


「ライトサンダー!」


雷の魔法でコゲコゲだ。


「さすがワリンだ。よし、休憩しよう」


キャンプをはって椅子も用意してそこに座らせ飲み物を渡すバース


「ありがとう」


「なぁ、ワリン」


「何?」


「ザタンくんと冒険するときもこんな感じなのか?」


「そんなわけないでしょ。キャンプははらないわ、飲み物食べ物は取りに行かせるわで散々よ……」


「そうか……」


休憩が終わり片付けて出発しようとした瞬間、植物モンスターモルボルが巨大な姿として現れた。


モルボルは触手でバースの双剣を弾き飛ばす。


「しまった!」


「モルボルは私が倒す!」


詠唱を始めるワリンに反応して触手を伸ばすがモルボルに石をぶつけるバース


「化け物!相手は俺だぜ!」


モルボルはワリンからバースに対象を変えた。


モルボルは触手でバースを捕まえようとするがバースは避ける。


「ワリン、まだか!?」


「もう少し……。キタ!食らいなさいファイアーウォール!!」


炎の渦でモルボルを囲み燃やす、モルボルは燃やされれば死ぬ、それが常識なのだが、モルボルを包んでいた炎の渦は突然消えて油断していたバースを掴む


「グッ……!バカな!炎に焼かれれば死ぬはずなのに……」


「どうして……私の魔法はモルボルを簡単に焼くぐらいの威力があるのに……」


バースは触手に捕まった。


「しまった!」


「バース!」


しかしバースはワリンに指示を出す。


「ワリン!もう一度詠唱しろ!」


「でもバース……」


「いいからやれ!なんとか抜け出す」


必死に抵抗して抜け出そうとするがびくともしない。


ワリンはお構い無しの詠唱をする。


「こいつ……もしかして」


バースはモルボルを見て気がついた。


「ワリン!詠唱をストップしろ!こいつお前の魔法を吸収しているぞ!」


「えっ……うん」


ワリンは詠唱中の魔法を中断する。


「クソ!手のうちようがねぇ!ワリン逃げろ!」


ワリンは自分が逃げることしか出来ないことに納得いかず逃げようとしない。


ワリンはモルボルに触手を捕まれてしまった。


「ワリン!」


(もうダメだ……終わった。私モルボルに食われるんだ)


ワリンは死を覚悟する。


モルボルは魔力が断然あるワリンから食べようと口をあける。


次の瞬間ワリンが囚われていた巨大な触手を誰かが切断する。


切った触手が消滅してワリンを空中から落ちるのをザタンがキャッチしてお姫様抱っこ状態だ。


「ザタン!?何故ここにいるの?」


「やれやれ迷惑かけるお姫様だ。おろしていいか?」


ワリンは少し顔が赤くなりうなずき、ゆっくり足元からおろすザタン


「お~い!ザタンくん、俺も助けてくれ!」


ザタンは銃を取り出してバースの囚われていた触手を撃つ、バースも助けるがバースだけはキャッチしない、尻餅で落ちるバース。


「イテテ……」


「男なら痛がるなこれぐらいで」


「…………」


ワリンはさっきの気まずさの声をかけられない。


「ワリン」


「は、はい!」


ザタンが呼び掛けて返事をするワリン


「大丈夫か?怪我はしていないか?」


「ワリンは大丈夫だ。それより俺を心配しろよ。尻から落ちてケガを……」


バースを睨み付けるザタン


「そもそもこんなことになったのも貴様のせいだ。覚悟は出来てるんだろうなバース?」


骨をポキポキならすザタンにビビって『ヒィ~!!』と逃げてしまったバース。


「……さてと、このデカブツを倒すか。ワリンこれを飲め」


「これは魔力の薬、何故ザタンがこれを……」


「いいから飲め」


ワリンは魔力の薬を飲むと魔力が回復する。


「こんなの飲んだところであいつは倒せないわよ?私の魔法吸収しちゃうもの」


「大丈夫だ、俺を信じて簡単な魔法撃ってくれるだけで良い」


「う、うん」


ワリンは簡単な魔法ファイアを放つ、モルボルは魔法を吸収すると同時にザタンは自分の魔力を剣に注ぎ込みモルボルに投げつける。


グサリとささった瞬間モルボルは破裂する。


「やれやれ倒したか」


「すごい、なんで……」


「ヤツは特殊なモルボルでな、人物がペットとして買うことであのような魔法を吸収するモルボルが誕生するってわけだ」


「だから私の魔法を……」


「そう、いくら上級の魔法放とうが、野生化したやつの前では無力だ。しかし、魔法を吸収する際に膨大な魔力を吸った武器をぶつけたなら破裂してチャラだ。あのときのブタストーカー男余計なものをペットにしたものよ……」


「…………」


ワリンは謝ることを決意し、言葉を発しようとすると、ワリンにハグをするザタン


「ちょっと!ザタン何をするの!?」


「すまなかった……」


「……えっ?」


「君を傷つけてしまって……。なんとお詫びをしていいか、分からないから、こうするしか思い付かなくて……」


「……うん、良いの。私もごめんなさい」


「なぁ、ワリン」


「なに?」


「強い人は嫌いか?」


「暴行するような人は嫌いだけど、私を守ってくれている人が好き……」


「そうか、お前昔とは違って、タイプ変わってるぞ?」


「そりゃ何年もたてばタイプぐらい変わるわよ……」


ザタンはハグを止めて離れる。


「ならもう一度聞くワリン俺のこと好きか?」


「はい」


2人は見つめ会いキスしようとしたその瞬間


「はい、カットですわ」


ビクッと反応してキスをやめるザタンとワリン。


草むらから出てきた5人。


「いや~今回の芝居には感動しました。すごい芝居上手でしたわワリンさん」


「ちょっと!芝居じゃないわよ!本当にキスしたかったもの!」


「先生が元気を出してくれて良かったです。……キス以外は」


「先生が居ないとE組が成り立たないけど、恋愛に関しては私だけでも良いけどね♪」


「先生浮気物」


「先生には戦闘面では負けるけど、ダーリンと私はとっくに一線を越えているのだ」


「私はザンちゃんの妻として愛人のワリンさんにはおとるつもりはございませんでしてよ」


「ちょっと!みんな勝手に何いってるの!」


「ワリン、なんかごめん……」


ワリンの肩に手を置いて謝るザタン


「なんかって何よ!なんかって!」


ワリンは仲直り出来て良かったと思っている。


この騒動から一変、バースはこの件以来、モテていた女性からワリンを助けずに自分よりランクの低いモルボルから逃げたと勘違いされ、無責任の男と思われ、彼のファンは1人も居なくなったが逆にザタンは……。


「ふぁ~あ……眠い。仕方ねぇか……ワリンが俺に授業を見てほしいって言うんだもんな。うぃーす」


教室に入ると仰天した。


俺の机には大量のラブレターが置かれていた。


「おい、なんだよこれ……多すぎだろ」


「ついにザタンさんに春が来たんですね!おめでとうパチパチ!」


アーチが笑っているが、心なしかなにやら暗いオーラが見える。


「へぇ~。モテるようにもなったんだね~」


ミッドは棒読みである


「俺がモテるわけないだろ、多分挑戦状だよ、なぁそうだよなオリマ?」


「切腹、殺害、滅殺……」


何やらラブレターに呪いの言葉を上書きで書いているようだ。


「……。あれ?ローちゃんは?」


「フン!フン!」


手紙を壁に張り付けパンチを連発している。


ヤルルは炎の小さい精霊を呼び出して1枚ずつ焼いている。


「ヒヒヒ……燃えてしまえば良いんですわ……」


「お前ら怖すぎだろ……」


「おはよう、席について」


ワリンがタイミングよく来てくれた。


「実は理事長から手紙を預かってたのでザタンに渡すわ」


「えっ、なんだろう」


ザタンは手紙を開くと、進級してみないか?と書いてあった。


しかし俺は破り捨てる。


「なんて書いてあったの?」


「進級してみないかと誘いが来てな、でも断る」


「なんで?」


「みんなと離れたくないからだ」


さっきまでブラックなことをしていた5人はデレてザタンに顔を向ける。


「俺は最強だけど、最弱の芝居をして来て良かったと思っているし、みんなと会えて良かったと思っている」


笑顔になるみんな、良かったと俺は思うのであった。

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