第3話

口調はいつもの宗くんみたいに穏やかだったのに、その瞳は見たことがないほどに鋭かった。

「え?でも…。」

私がおどおどしていると、宗くんがその瞳のまま近づいてきた。

何だか怖くて、反射的に目を瞑った。

すると、

(ちゅっ)

理解するのにしばらく時間がかかった。

え!?私今キスされたの!?

状況が理解出来ないまま驚いて宗くんを見ると、彼の瞳はいつもの優しい瞳に戻っていた。

「ごめんね。忘れて。」

彼が優しく言うので、本当にキスされたのだとわかった。

いてもたってもいられなくなった私は、顔を真っ赤にしてその場から走り去った。


はあ、はあ、何で!?

何で宗くん私にキスしたの!?

しかもあんな宗くん見たことない…

宗くんのあの瞳を思い出すと怖くなった。


「わっ!奈央どこ行ってたの!?探したんだよ!」

声がして慌てて足を止めると、目の前に香織がいた。

「あっ…ごめんごめん。いい場所ないかと思って、探検しすぎちゃった!」

いくら友人でも香織に話すわけにはいかない。

宗くんはいわば「クラスのアイドル的な存在」だ。宗くんを好きな子はいるだろうけど、「みんなの宗くん」にスキャンダルがあってはいけない。

「そうなの?向こうで亜子と描いてるよ!一緒に行こ!」

何とか平然を装い、香織に手を引かれて亜子の待つ場所へ向かった。

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