永遠のベール
黒い刺繍糸で編まれたベールが わたしたちの夜だった
海水に浸かった夜は永遠に重たく
その幕間で繰り返される光景を見たものはいない
波間を漂う肉に宿るわたしには記憶が欠けている
呼び起こさないで 近づかないでほしい でも 触って欲しかった
ここしか知らないのに ここではないのを知っている
波間に漂う記憶が沈むのを見ながら
白い刺繍糸でベールを編む 別れのしるしになればいい
刺繍糸はおひさまの光から作られた
朝な夕なに鳥たちがついばんだ光を糸へ練りあげる
わたしたちはベールを編む
どこまでも長く 永遠に続く白糸と黒糸で結っていく
永遠のベールが わたしたちの夜となり
いつかあなたを覆い尽くしていく
近づけないまま 追いつけないままに
迎えにいくの
糸は取りこぼされ、夜がやわらかな雫となり、あなたへ影を落とす
やがてぜんぶ なにもかも おおいかくすものとなる
わたしたちはどこまでも結い続ける
それがたったひとつの与えられたものだった
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