永遠の脈

目の前をよぎる 波の音で

 海があるのを知る

古い記憶を運ぶ

 白く脈打つ

夜の海が 寄せては返す 指を伸ばせば触れられる

その 冷たいであろう 塩水


 ひたれば新しい記憶が 皮膚から浸透

 脈を流れて 侵食される

知りたくない 忘れ難いのに

 なにも覚えていない 


産まれてすぐ口にした

 忘却の記憶 どこかに転がっているはずの

思い出がわたしを責める


なにもかも

どこもかしこも

だれもかれも


ひとりで立つ しかない

 他に出来ることはない


途方に暮れる 夕暮れ 夜の海

浜辺に立ちつくす 記憶の 波間

 で あなたと わたしが

むかいあい すれ違い 気がつかない


明りが零れるのを だれもかれもこうべを垂れて

 待ち続ける 自分の頭に落ちてくるのを

ただただ 待っている


一枚の鳥の羽が 巨岩を 百年に一度だけ撫でる

 巨岩が小さくなるまで 待ち続ける 永遠

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る