明日に覆う

車から見た景色は 黒い雲に流れる

地下鉄の窓の向こうがわ

 目を凝らすと広がる わたしたちの草原


向こうに、あなたがいて ひとりきり

こちらを振り向かない 明日も わたしを見ないことを 覚えている


 それは忘れてどうか忘れて

 明日を おきざりにして


去年のこと、そのずっと後のこと

電車の中で あなたが隣に立つのを

 忘れたい

あなたの肩に映る黒い空へ 指を伸ばした

背中に広がる わたしの横顔見つからない


終わらせるのは簡単だ

 線を引くだけだから

向こうにいる、あなたの隣に立つわたし

遠ざかる 牧草地が隔てる なにもかも

 流れていく


響きあうのに すれ違う 会えないまま

 思いだせるわけがない

なにひとつ 見つからない


地下鉄の窓、向こうがわ 地平線が遠ざかる

明日に通り過ぎた駅を思いだしたくて

わたしとあなたが 暗い窓を覗きこんでいる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る