真夏の夜の冷や汗・・・いや脂汗ものの話
暑い盛りの7月の夜、車検前日だというのに動かなくなった車を置いて徒歩で一時帰宅することになった。
途中、丘の上が公園になっている横を通り過ぎると、しばらくして子どもたちの声が後ろから聞こえてきた。
おそらく少し前まで聴こえていた遠く港の花火大会を公園に登って観ていたのだろう。
ところが笑いと燥ぎ声はある程度まで近づいてきたところで急に小さくになった。
不思議に思いながらも先を急いでいると、そのうちにボソッと「不審者じゃない?」という声が・・・。マジかっ!!
確かに予定外の徒歩帰宅になったことで、不用意にも半袖短パン姿に赤いバッグ肩に掛けて歩いていたのだが。
ここで動揺して変な言動でもすると余計に怪しまれるし、やり過ごそうと止まることもできず、ガードレールで仕切られた狭い歩道の上、早足で歩く怪しい男と、後ろから距離をおいて自転車を漕ぐ子どもたち。
とにかく道の切れ目で住宅街に入ることだけを考えていたが、いやまてよ、子どもたちもそこを曲がって自宅に戻るルートだったらどうしようか。
道の切れ目まで残り10メートルほどのところで葛藤する怪しい男。
いつの間にか子どもたちの声も小から無へと変わっていた。
どうする。いやどうしようもない。このまま真っ直ぐ進んで再び微妙な距離感を保って見えない次の切れ目までいく勇気は今の自分にはない。
ならば曲がるのみ。
曲がって驚くそこは袋小路の住宅地。
汗がどっと出る。頼む。子どもたち、通り過ぎてくれ。
幸い数秒の後、再び聴こえてきた声はすぐに遠く離れていった。
よかった。
あとは翌日、警察から不審者情報のメールが届かなかいことを祈る。
もし届いたなら、素直に「はいそれ自分です」と名乗り出るべきだろうかと新たな葛藤が生まれた。
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