詩集：小瓶の蝙蝠

銀河系ララバイ

ろくでもない男が　わめき散らす女を好きなように

私は夜咲く花のまわりを舞う　蝶たちの虜だ

老いぼれた　心だけ少年の　じいさんが囁いた

そこの少女たちは　アイスキャンデー一つとっても　猥褻にできる

魅力的なところは　その猥褻さに　毒が無いところだ

毒に侵されると　少女はたちまち　おんなになる

ティーカップには　アールグレイの残り香

少年のじいさんは　探検に出かけて　帰って来ないといった

じいさんの卑猥な物語には　やはり毒なんてなかった

あっけらかんとした　子供だましの　寓話的な類の　ポルノマガジン

昨日帰って来た　へべれけなあんたを　笑えるまでに成長した

元ヒステリカルな　わたしはいいこ　

ねえ　いいこ　いいこ　して

ぶっ倒れて　いびきかく　あんたの背中を蹴った

どうせなら　あと十回くらい蹴っとけばよかった

明日になれば　何にも覚えていないと思うから

ばかだね　ばかばっかり　みんなばかのふりした　いいこ

わたしは　いいこになれない　自虐的排他主義者

牛丼食って　寝るだけ寝て　あとは死んでる

明日きた朝は　今日帰る夕焼けよりも　美しいか

反対の裏側にある　絶対は失態よりも　偶然か

じいさんは帰ってくるか　じいさんは帰ってこずか

あんたは嫌らしいおやじの類になってしまった　ああ　もったいない

少年のおやじは　今一つ　夢のつゆとなって消えたんだ

私はちょっと　気分の乗らないままで　腹をつまみ

あんたの贅肉の　不安定な　冒涜遊戯に付き合ってる

こっちは　どっちで　そっちは　あっち

アリス的な事で　気分をどっかに飛ばす　

そうすれば　そこはたちまち　パラダイス

銀河の向こうは　サンシャイン　屍公園

伸びたり　縮んだり　膨らんだり　壊れたり

さあたいへん　明日はきっと　金が降ってくる

じいさんは　戦争で　人を殺したか

ばあさんは　戦争中　不貞を働いたか

活動写真の暗闇で　じいさん　ばあさんの　青春はあったのか

少年じいさんは　あの日死んだ　君ちゃんの事

ずっと　ずっと　ずっと　想い続けていたんだね

他の誰も好きにならず　切ないね

だけど　その切なさは　おんなになった　私には

解れない　解らない　解せない　解けない　知りもしない

じいさんが　てんごくで　こどくじゃないなら　それでいい

テキサスで　死んだ日本兵なんて　いないと思うから

それでいい　幸せなら　ね　それでいい