第5話 追加された問題

「捕まってる?」


「あれは半年前…まだ萬屋探偵事務所が動いてない頃ね」


 希美はスマホを取り出す。


「?」


 そのスマホに見せる写真か何かがあるのだと思ったが、希美はスマホを高く掲げた。


 どうやら見せようとしたのはスマホではなく、ぶら下がっているストラップらしい。


 ピンクと白のクリスタルビーズで出来たテディベアと、小さなシルバーの星が三つ連なった、可愛いストラップだ。


「捕まった理由は、万引き」


「万引き…そのストラップをですか?」


「そ」


 冷静を装ってはいたが、正直愛花は驚いていた。


 一生懸命で、真っ直ぐで、商売敵の自分が相手でも本物の笑顔を見せてくれた希美が、万引き。


 万引きは立派な犯罪。


 端的に言ってしまえば、希美は犯罪者。


「正直ね、このストラップじゃなくても、万引きするなら何でも良かったの」


「…」


「若気の至り…とはちょっと違うけど、あとは高校卒業を向かえるって時、私はとてもイライラしてた」


 今度はその顔に陰りが見えた。


「同級生の殆どは進学や就職が決まっている中、私はやりたい事が何も見つからず、焦っていたの」


「そのストレスで…ですか…?」


「うん…で、トドメを刺す形で、親に小言を言われた挙げ句、このストラップを万引き」


「あらら…」


「鞄に入れた瞬間だったわ。萬屋さんに腕を捕まれたのは」


「…未遂だったんですか?」


「正確にはね。で、警察に連れていかれるかと後悔した時、萬屋さんはこう言ったわ」


 少し間を置き、少し低くした声で言った。


「『そのストラップ欲しいの?なら俺にプレゼントさせてよ!君可愛いからさ、ナンパ初心者の俺の最初のナンパ記念にさ』って」


「…へ?」


 それを聞いた愛花は、ポカンとしていた。


「私も最初はそんな反応だったわ」


 愛花の反応を見て、クスクスと笑う。


「で、無理矢理鞄からストラップを奪われてね、そのままレジへ持ってって、あっさりお会計」


「うわぁ…」


「しかもレシートをその場ですぐにビリビリに破いて、返品出来ない様にしてたわ」


「悪どいですね…」


「でしょ?勿論、すぐにお金を返そうとしたわ」


「でも、受け取らなかった、ですよね?」


「ん…で、反省の意味も込め、探偵事務所で働けって言われたの」


 困っている人を助け、自身がやった事の小ささを再確認させる。


 泰造なりのやり方なのだろう。


「正直、最初は『三食プラスおやつ付き』に食い付いただけだったけど…でも、そんな萬屋さんを側で見ていたら…その…」


 そこまで言って、口籠る。


 しかし、愛花は容赦が無かった。


「好きになっちゃった、ですか?」


「はっきり言わないでよ!まぁ…そうなんだけど…」


 先程とは比にならない位に、希美の顔が赤くなっていく。


「…昔タイ兄ちゃんは、とても一生懸命でした」


 くるりと前に向き直し、ロッジへとまた歩いて行く。


 反射的に希美も歩を進めた。


「一生懸命で、空回りもしていましたが、良くも悪くも人一倍諦めの悪い人でした」


 ふと、祖母を思い出す。


 祖母は泰造の事をよく話していた。


「おばあちゃんは、警察官の中でもタイ兄ちゃんは特に目を見張る物があるって言ってました」


「そっか…嬉しいな」


「え?」


「八重さんみたいな凄い人に褒められて。萬屋さんの事なんだけど、まるで自分の事みたいに嬉しいの」


「はい。おばあちゃんは凄いんです」


「八重さんが認めたんだもの。今回の依頼、頑張らないとね」


「あ…えと…そうですね…」


「何?」


 まるで何かを誤魔化す様な言い方に、希美は問う。


「いえ!何でも無いですよ!」


 この慌て様、絶対何かを隠している。


「何よ~…白状しなさい!」


 少し屈む様にし、愛花の両脇に手を伸ばした。


「きゃははは!止めて下さい~!私、脇腹弱いんです~!」


「なら、もっと攻めてあげるわ!さっきの蛇の仕返しも含めてね!」


「ひぃ~っ!」


「何やってんの…?」


 ふと声をかけられ、くすぐる手が止まる。


 いつの間にかそこには泰造がいた。


 と言うより、いつの間にかロッジに着いていた。


「ロッジの前で何やってんの…?」


 再度同じ問いを投げる。


「いえ…何でも…」


 ふぅ、と鼻で大きく息を吐き、泰造は希美の頭に右手を乗せた。


「…っ!」


 希美は一瞬驚いた様子を見せたものの、後は俯くだけで特に抵抗はしなかった。


「もうすぐで飯だとよ。早く中に入っちまいな」


「…はい…」


「てか…愛花嬢ちゃんのお仲間は?」


「少し別行動してて…すぐに戻ってきますよ」


 そう言った矢先、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。


「お待たせしました」


「よし、残りはお前さん達だけだ。早く入っちまおう」


 希美の頭から手を離し、さっさとロッジへ入ってしまう。


 それに続くように直人、浅葱、愛花の順で歩き始める。


 が、一番後ろにいた愛花が服を引っ張られた。


「希美さん?」


「あ…あのさ…」


「はい?」


「さっきの事…二人だけの秘密だからね…?」


 愛花は一瞬キョトンとするが、いつもの笑顔で答える。


「勿論ですよ。女の子同士のお約束です」


「ありがと」


 そして二人はまた手を繋ぎ、ロッジへ向かった。




 中に入ると、既にテーブルの上は料理で埋め尽くされていた。


「うわぁ…美味しそうですね」


「腕によりをかけましたから」


 最後に座った二人の前に、英里が水の入ったワイングラスを置く。


「ありがとうございます」


「パンとライス、どちらに致しますか?」


「えと…パンがいいです」


「私もパンで」


「僕はライスで」


「両方」


 浅葱のその答えに、直人は持っていたフォークを落としてしまう。


「浅葱さん!」


「いいじゃねぇか。歩き回って、腹減ったんだからよ」


「コテージで寝てたじゃないですか!」


「はっはっは!英里さん、両方持ってきてあげて」


「はい」


「すみません…」


「いや、構わないよ」


「そうだぜ坊主。人間なんざいつ、どんな事で死ぬか分かんねぇんだからよ、好きな事やっとかないと損だぜ」


 L字ソファーに座っていた蒼也が、持っているウイスキーのビンを掲げる。


「例えば…悪ふざけが過ぎたりよ」


「え…?」


「いい加減にしろ、蒼也!」


「あぁ?誰に向かって言ってんだ?」


 一瞬にして表情が変わり、蒼也は立ち上がる。


 その眼は、洒落にならない位に据わっていた。


「やるか?俺ぁ知ってんだぜ?お前と…の関係をよ」


「っ!?」


「平然としてっけどよ、お前は俺を殺したい位憎んでんだろ?なぁ!?」


「そんな事…!」


「そこまでです」


 二人の間に、零士が割って入る。


「零士さん…」


「んだぁ…?お前がやるってか!?」


 そう言って蒼也は零士の答えを待たずに、拳を振った。


「「うわっ…!」」


「「きゃっ…!」」


 拳は零士の左頬にヒットする。


「ちょっ…冗談でしょ…!?」


「墨田さん!?」


 それを見て、思わず立ち上がる直人と希美。


 しかし、直人は浅葱に、希美は泰造にその腕を掴まれた。


「大丈夫だって」


「ほい、そこまで」


「え…?」


「何を…!?」


 そこで二人は漸く状況を再確認する。


 蒼也の拳は確かにヒットしていたが、なんと零士はビクともしていなかった。


「嘘だろ…!?」


「気は済みましたか?」


 静かに言ってはいるが、零士の声に確かに怒りを感じた。


 零士は蒼也の手首を掴み、強制的に腕を降ろさせる。


「すまない、零士さん…」


「いえ…怪我が無くて何よりです」


「ちっ…」


 零士の手を振り解き、今度は愛花達の方へと近付く。


「おい、そこのオールバックの兄ぃちゃんと、眼鏡のチビ助」


「んぁ?」


「はい?」


 直人、浅葱、希美の三人に緊張が走る。


 蒼也が名指しで呼んだのだ。


 一体二人に何が起こるのか、全く予想がつかない。


 が、それは呆気の無い内容だった。


「お前ら探偵なんだろ?なら一つ、クイズだ」


 クイズ。


 突然の事に、頭が付いていけない。


「今回この島に来た十二人に、あるがある。それを当ててみな」


「十二人の…」


「共通点ねぇ…」


 考えているのかいないのかはよく分からないが、二人は黙る。


「…それ、十年前にも言ってなかったかしら?」


 パンを千切りながら千鍵が呟く。


「私達と、の四人にって…」


「おい、余計な事言うんじゃねぇ」


 どんどん場の空気が悪くなっていく。


 何か話題はないかと直人が考えている時、それは愛花によって破られた。


「中井さん、一つ訊いてもいいですか?」


「ん?何だい?」


「この島を購入した後、中井さんが手を加えたのは建物類だけですか?」


「そうだよ」


「自然物には…」


「いや、道は元からあった様なものだし…川に橋を架けたり、崖に柵を作った位かな」


「そうですか」


「何?何か分かったの?」


 隣に座っている希美が肘で突っつく。


「いえ…」


「ああ、そうだ。一応注意しとくけど、天宮探偵事務所の方達のコテージの近くの川には気を付けてね」


「オレ達のコテージの近くっつーと…」


「赤い鳥居の手前の川ですね」


 流れの速さを見ただけでも、あの川は危険だと理解出来る。


 が、それだけではなかった。


「あの川に落ちたら海までノンストップだし、高さはそんなに無いが、海に出る手前には滝があるからね」


 つまり、滝に叩き付けられた後、そのまま海に流される。


 あの流れの速さで叩き付けられたら、最悪命は無いだろう。


 そうなったら、後は魚の餌になるだけ。


 それはまるで工場のベルトコンベアーを連想させる。


「分かりました」


「森の方も手付かずの場所も多いからね、そっちも気を付けて」


 先程の緑の鳥居の周りもその一つだろう。


「ご馳走様」


 カランと食器同士がぶつかる音が聞こえ、振り向く。


 食事を終わらせたのは浅葱だった。


「早いわね…暴食は身体に悪いわよ」


「うっせ。お母さんかお前は」


「貴女が身体を壊したら、私の友達が泣くもの。それは許さないから」


「…俺だって泣かす気はねーよ」


「わっ!?」


 すれ違い様に浅葱は愛花の頭を撫でる。


 少し乱暴気味だった為か、頭頂部を中心に髪が乱れた。


「?浅葱ちゃん?」


 食事と考え事の最中だったのか、愛花は二人の会話を聞いていなかった様だ。


「何でもねぇよ。あっちに行ってるぜ」


 あんな事があったにも関わらず、浅葱は蒼也へと近付く。


 蒼也は最初は睨み付けてはいたが、三分もしない内に浅葱と酒を飲み交わしていた。




「むむむ…」


「へっへっへっ」


 午後八時。


 愛花、直人、泰造、希美の四人は現在二戦目となるババ抜きをやっていた。


 直人と希美は既にあがり、残るはダイヤとクラブのQとジョーカーだけ。


 ジョーカーは愛花の手にあり、泰造がそれを引こうかという場面だ。


 愛花の番に廻るのか、泰造があがるのか。


 この一手で全てが決まる。


 因みに罰ゲームは全員からのデコピン。


 そして愛花は既に一回負けていた。


 直人と希美はそれなりに加減をしてくれたが、泰造は容赦が無かった。


(もうあれは嫌です…!)


「こっちだ!」


「ああっ!」


 しかし、そんな思いも虚しく、泰造はあがってしまった。


「イエー。二連敗だな」


「うぅ…」


 覚悟を決め、愛花は自分で前髪を上げ、額を露にする。


「ど…どうぞ…」


「では…」


 直人の右手が目の前に差し出され、愛花はギュッと目を閉じる。


 よく見ると、ほんの少しだけ涙が浮かんでいた。


(う…)


 その顔を見てしまったら、普通の人間ならば加減をするに決まっている。


 勿論、直人もだ。


「いきます…!」


 ペチンと軽い音を立て、人差し指が額に当たる。


「じゃあ次は私が…」


「はいぃ…」


 希美も同様、優しいデコピンを放つ。


 問題は次だ。


「おいおい、駄目だろー?罰ゲームなんだから、厳しくいかなきゃ」


 やっぱりこの男は手加減する気ゼロらしい。


「いや、流石に可哀想でしょ…」


「僕もそう思います…」


「しゃーねーなぁ…んじゃ、俺が二人の分もやってやる」


 そう言って泰造は構えた。


「ちょっ…何ですかそれー!?」


 通常、デコピンは人差し指、または中指を親指で抑え、威力を溜めて放つもの。


 しかし、泰造はそれだけではなく、人差し指から小指までの四本の指全てを親指で抑えていた。


「言ったろー?二人の分もやるって」


「指一本多いんですけどー!?」


「オマケだよーん」


「いらないで…ひっ!?」


 左手で頭を掴まれた。


 どう足掻いても、逃がす気は無いらしい。


「うわ…悪い顔してるわー…」


「これこそ悪意の塊ですね…」


「いや、悪そのものでしょ」


「あわわ…」


「三…二ぃ…」


 カウントダウンをするものの、泰造は終わる前にデコピンをした。


「みぎゃっ!?」


 相当な威力だったのだろう。


 掴まれていたにも関わらず、愛花の首は後ろへ反ってしまった。


「ひどいです…」


「ははは!」


 額を擦る愛花を見て、二人は思う。


「白石君…一ついいかしら?」


「ええ、勿論」


 と言ったものの、お互いの顔を見なくても、言いたい事は分かるし、考えている事が一緒だというのも分かる。


(愛花さんの…)


(愛花ちゃんの…)


 そしてお互いに頷き合う。


((仇は絶対に取る…!))


 そして五分後。


 泰造は土下座をしていた。


「大人気ない事をして、申し訳ありません」


「は…はい…」


 罰ゲームは、最下位の人は一位の人の命令を一つきく、だ。


 因みに、やったのは大富豪。


 どんな手を使ったのかは分からないが、希美が早々に一抜け、二人のフォローで愛花が二抜け。


 最後に直人が泰造を追い詰めるように三抜けした。


 そして、希美が泰造に命じたのは、愛花に土下座して謝る、だった。


「てか、希美ちゃん!一応俺上司なんですけど!?」


「知りませんよ。こんな小さな女の子を泣かす、大貧民に成り下がった大人なんて」


 泰造を見下す希美の目は、今まで見た事が無い位に冷たかった。


「辛辣!」


「あはは…」


 と、カコォンという高い音と、それに続くように複数人の驚きの声が聞こえた。


「ん?」


 振り向いた愛花の視線の先には、浅葱、拓真、千鍵、友和の四人がビリヤードをやっていた。


「上手いわね…やっていたのは学生の頃だけとは言え、そこそこ自信あったのに…」


「マッセもバンクもキャノンもあそこまで使い熟すとはなぁ…」


「中々やるなぁ、ねーちゃん」


「まーな」


 得意気に笑う浅葱は、どことなく無邪気な少年の様にも見えた。


 女だが。


「っと…そろそろ私は失礼するわ」


 千鍵は持っていたキューを元の場所に戻す。


「ん?もう戻るんかいな?」


「夜更かしは美容の大敵だもの。寝る前のケアもしておかないと」


「千鍵は昔から早寝早起きだからな。毎日ちゃんと十時に寝て、六時には起きるもんな」


「ええ、それじゃ」


 全員に背中を見せながら右手を振り、森へと消えて行く。


 夜とは行っても、今夜は満月。


 月明かりのお陰で、それなりに明るかった。


「さて…次はどうする?またカットボールにするか?」


「いや、ボウラードはどうだい?」


「ええで、自分は乗った」


 恐らく、ゲームを変えようとも、浅葱に勝つ事は難しいだろう。


 バーというバーで賭けゲームをし、タダ酒を飲んでいたのだから。


 ビリヤードだけでなく、ダーツも上手い。


 しかし、そんな事を繰り返している内に、出禁の店も増えていった。


「げ!?いきなりストライク!?」


「凄いな…」


「へっへっへっ」


(あ…さっきのタイ兄ちゃんと同じ顔をしてる…)


 しかも笑い方も一緒。


 愛花に出来るのは、賭け事にならないように祈るだけだった。




「ふみゅぅ…」


 午後十一時。


 眠気に負け始めたのか、愛花は直人の肩に頭を預けてきた。


「愛花さん?」


「ん?愛花嬢ちゃんはおねむの時間か?」


「ふぁい…」


 最早、瞼が開いているのかすら怪しい位、トロンとしている。


「そろそろコテージに戻りますか?」


「はぃ…」


 と言うか、自立する事すら難しい様だ。


「愛花さん?愛花さーん!」


「…」


 遂に返事が無くなった。


「仕方ないですね…浅葱さ…!」


 一緒に戻るつもりで浅葱を呼ぼうとするが、浅葱は既に酔っ払って床で寝ていた。


「ちょ…!浅葱さん!」


 泰造に愛花を一時的に支えてもらい、浅葱の身体を揺らす。


 が、返事は無く、聞こえてくるのはいびきだけだった。


「参ったな…」


「いいよ。そのまま寝かせてあげなさい」


 振り向くと、拓真がブランケットを差し出してきた。


「蒼也もどうせここで寝るんだろうし…ね?」


「わざわざすみません…」


 確かに蒼也も酔い潰れて、ソファーから起き上がる気配が無い。


「あとコテージに戻るんなら、これを使いなさい」


 次に渡されたのは、ハロゲンタイプの大きなライト。


「何から何まで…」


「ん、気を付けてね」


 ライトを受け取り、愛花の元へ戻る。


「よっと…」


 そしてライトを一度テーブルに置き、愛花をおんぶした。


「ちょっと待って。流石に危ないから、私も一緒に行くわ」


 直人に代わり、希美が立ち上がってライトを持つ。


 それに続くように泰造も立ち上がった。


「んじゃ、俺も行こう。帰る時、希美ちゃん一人じゃ心配だしな」


「ありがとうございます」


 希美を先頭にしてロッジを出ようとしたその時、玄関で零士と鉢合わせになった。


「きゃ…」


「と…失礼」


「いえ、こちらこそ…」


「すみません、中井さん。遅くなってしまって…」


「いや、かまわないよ。パイプはあった?」


「ええ、やはり船に忘れていました」


 そんな会話を背を向けながら聞きつつ、四人は暗い森を歩き始めた。


「大丈夫?」


「ええ、なんとか」


 希美が振り向き、直人の足下を照らす。


 殿しんがりの泰造も最大限に注意を払う。


 昼間と違い、夜の森は静かで、時折聞こえてくる鳥や虫の鳴き声が響いていた。


 それは都会では滅多に聞く事が無い、心地好い声だった。

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