第2話 誕生祭
第2話 誕生祭
この世界に生を受けて、何回目の誕生日が来ただろうか。
僕は今年、15回目の誕生日を迎える。これが何を意味するのか、それは、この世界の住民なら誰もが知っていることだ。
天職。
この世界では、いや、この国では15歳になる少年少女に、天職と呼ばれる4つの能力のうち、一つが与えられる。
だが、全員に与えられる、というわけでもない。
どういう方法で選んでいるのかは知らないが、選ばれた人のみににだけ与えられる。
僕も、その、一人だった・・・
◇
この世に生まれて何度目の誕生日が来ただろう。
生まれて0回目の誕生日から始まり、毎年、死に一歩ずつ近づいていく日だ。それを喜ぶなんてどうかしている。少なくとも、僕から見たら。
そして僕と、その隣にいる友人二人は逃れられない日を迎えることになる。
それが、15回目の誕生年だ。
この国では15回目の誕生日、詳しくは生まれてから15年目を迎える選ばれし子供たちに天職というものが与えられる。その天職を与える儀式のことを僕らは誕生祭と呼んでいる。
人類の平和、発展を脅かす妖怪に立ち向かう力を与える儀式を受けるために、今、僕らはここにいる。
正直、僕はここから先、どうしていいかがわからない。どれが最善策なのか。
いままで平穏に生きてきた僕らが能力を与えられ、妖怪と戦う。そんなことができるとはまったくもって思っていない。
ただ、能力を与えられたものには、自分の力で生き抜く術も与えられる。
それが、『学校』だ。その分けられた4つの能力の力を伸ばすための専門的な学校へ行くことができるのだ。
在学期間は四年だが、ある程度の能力を操れるようになった時点で卒業権というものが与えられ、卒業する事も可能である。
そしてその基準となるのが、『ランク』と呼ばれるものだ。
低い順からDランク、Cランク、BランクAランクとなっている。
ちなみに卒業権を渡されるのはCランクからである。
だが、何事にもランク外というものは存在する。Aランク以上の力をつけたものは、Sランクと呼ばれ、戦闘、頭脳においてすべてを超越した存在となる。もちろん、能力だってAランクの物とは桁違いの力を操ることが出来るのだ。
「これより!!!天職授与誕生祭を開始する!!!名前を呼ばれた選ばれし少年少女は祭壇にあがり、解析を受けたのち、帰宅することを許可する!!尚、許可なく帰宅した場合は名簿より住所を特定し、後日拘束するものとする!!!」
刹那、怒号にも似た叫びが辺りの空間を支配し、僕の意識もそっちへと引っ張られるようにもっていかれる。叫んだ男はどうやら誕生祭の開会をつげたようだった。
「とうとう始まっちまったな。」
僕の右隣では友人が気だるそうに溜息を吐く友人の姿が見える。光を反射させることも許さない黒髪を天へとむけて逆立ててるこの友人の名は、レント・マキアートだった。
「これで、私たちの天職が決まるのね。でも、選ばれたってことは可能性がある。ってことだから、私は頑張る。」
そして僕の左隣、赤混じりの茶髪を腰辺りまで伸ばしている少女は、アカネ・レテスだ。僕とレントとアカネは幼馴染みであり付き合いもながい。レントは基本明るくてムードメーカーのような存在だ。僕はレントと長年一緒にいるが泣いてる時や落ち込んでる時は見たことがなかった。
アカネは物静かで大人びているが、所々無邪気なところもあって可愛いイメージがあった。
「では!!これより天職授与式を開会する!名前を呼ばれた者は返事をして祭壇へ上がるように!!では一番!アイ・クリアー!!」
「はい!!!」
甲高い声を響かせ、一人の少女が壇上へと足を運ぶ。白く美しい髪は結ばれ肩まで垂らしてあり、物静かな印象が強い女性だった。
あの少女は今、どんなことを考えてここにたっているのだろう。
僕は、怖い。
これから先の未来が見えないからだ。天職という存在も、妖怪との戦いも、すべてが怖い。
死へのカウントダウンが一気に減っていくような気がする。
だが、逃げられはしない。たとえ逃げてもつかまるだろう。人類は発展を望んでいる。だから邪魔する者がいるならば、妖怪でも、人間でも、大人でも子供でも女性でも男性でも、排除されるだろう。
だから僕は逃げることのできない恐怖の中、未来というものが見えない恐怖のパラドックスのなか、冷や汗を垂らして待つことしかできなかった。
ただ・・・怖かった。
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