「https://UPCP.jp/metal.sword」

時刻は朝八時。

日本人が活動を開始し始める時間帯。


「いっけねー!遅刻遅刻☆」


澄み切った青空。それを妨げる高層ビル群などははない。

季節は真夏。この時間はまだ涼しい。大きく深呼吸すれば朝の薫り。頭の奥まで届き渡る安心感と言うのだろうか。何とも心地よい気分にさせてくれる。

さて、自然に囲まれた車があまり通らない車道を鞄を背負って走る少年が一人。


「やべ~。大地君に怒られちゃう~。」


彼の名前は「赤城アカギ アキラ

青森県のとある町に住んでる高校2年生。

黒髪で、特に髪型を弄っていないショートヘアな、よく見る平凡な顔つきの高校生だ。スマホは右ポケットに入れ、白いイヤホンを右耳だけにさしながら走っていたが、だんだんとスピードが下がり遂には歩き出した。


「はぁ……。こりゃ無理だな遅刻だは。大地君にLINEで謝っとこ。」


『暁:ちょっと遅れる(´>ω∂`)』


『大地:殺すぞ』


『暁:ひょえ~~~~』


『大地:早く来い。白石さんが待ってるぞ。』


『暁:白石さん来るの早っ。』


『大地:当たり前だろなんだから。』


『暁:さすがUPCPのタク…エースだな。』


『大地:お前今タクシーって言おうとしたな。』


『暁:今すぐ向かいまー三┏( ^o^)┛』


『大地:急げ』



「ふぅ~。白石さんもなー。俺をワープして連れてってくれればいいのになー。」


「来たぞ。」


背後から声をかけられる暁。


「んわおっ!白石さぁん!びっくりー!」


「お前が遅いからだ。早く俺の腕に捕まれ。直接アジト行くぞ。」


「お願いしまーす。」



ここは、日本のどこかにある地下施設。白衣の大人たちが忙しなく歩き回り、いつも何かの機械の動作音が鳴り響く秘密の仕事場。


【UPCP日本支部】である。


UPCPとは。

~UPCP~

unidentified

phenomenon

countermeasure

project


の略語。

直訳すると未確認現象対策プロジェクト。


とある熱帯の島に未確認生物が降り立った。その生物は次々と近くを通る飛行機や船舶を行方不明にさせる。そんな事件を口火に次々と起こる異常事態。その規模は都市伝説や噂の類で語られて終わる程安易なものではなく、世界各国のトップ達は必ず対策を取らねばならない程の案件にまでなった。

そして世間には秘密裏にこの案件を解決するために作られた組織がUPCPである。この組織は日頃、未確認現象が世界のどこかで起きてないかの監視、起きた時の処置、対策を行う。まだ出来て間もないため細かいルールなどは無く、志願するとある程度の実績、能力があればすんなりと加入できる。

アメリカ、イギリス、中国、ロシア、日本などの先進国には支部が設けられており、国で起きた未確認現象に素早く対応できるようになっている。


――この作者の他作品「悲観者トーマス」より抜粋。もっと詳しいことが書いてあるためhttps://kakuyomu.jp/works/1177354054886538925 にアクセスしてみんな読もうね!



「おっせーよ暁!」


暁が到着するや否やいきなり大声を上げる少年が一人。


「申し訳ねぇ。大地。」


彼の名前は「星野ホシノ大地ダイチ

暁と同じく青森県に住み、暁とは小さい頃から親しい親友。茶髪で前髪だけ立ててる、ややいかつい顔つきの高校2年生。


「おら、着替えるぞ。早速出た。」


「えぇ、もう?」


「そうだよ、だからお前もUPCP戦闘用スーツに着替えろってんだ。」


「俺あのスーツあんましかっこよくなくて嫌いなんだよね。なんか、工事現場の作業服みたいで。」


「何言ってんだ。あれはあれでかっこいいだろ。」


「はいはい、そだねー↓そだねー↑。」


「U字工事みたいにそだねー言うんじゃないよ。」


2人は更衣室と書かれた部屋に入ってゆく。


赤城暁、星野大地。

2人共、人間の力を超越した力を持つ「異能力者」と呼ばれる人間だ。

彼らの異能力は2人とも突然発生した。しかもほぼ同時に。大地はこの能力を隠しとうそうとしたが、目立ちたがり屋の暁は自分と大地の異能力の動画をSNSにアップしてしまった。大地に怒られたため、動画は削除したが、UPCPはそれを見逃さず、すぐさま2人をスカウトした。


色々、悩んだ2人は


「ジャンプ主人公になれるぞ俺ら。」


という理由で承諾した。


「で、大地君。今回のお敵さんは?」


「でっかいアリだと。都会の方に出たみたいだな。」


「マ?それまんま地球防衛軍やんけ。」


「あー。確かに。」


「それに、都会の方に出たら皆にバレちゃうんじゃない?」


「まぁ、バレるだろうがマスコミを封じときゃある程度は大丈夫なんじゃないか?」


「スマホとかで撮られたら?」


「知らねー。オレもさ、もう隠す必要ないと思うんだよね。今、世界が滅亡の危機に瀕していること。てか、今回の件で流石に公に言うんじゃないか?」



「おい、お前ら、早く着替えろ!行くぞ!」


先程白石と呼ばれた男が2人を呼ぶ。


「「は、はい!」」


白石シライシ水碧ミドリ

彼もまたUPCP日本支部のメンバーである。異能力者の中では珍しい空間移動系であるため、メンバーたちから移動の際に重宝される。大地と暁は青森県に住んでるため、一旦白石が青森へ移動し2人を抱えてアジトへ運んでいる。20代後半だと思われるが、あまり身だしなみに気を使ってないらしく、無精髭は生え散らかり、茶色がかった髪の毛はボサボサである。何故か目元を周りに見られないようにいつも深くキャップを被っている。

普段は何の仕事しているかは分からない。メンバーたちからはニート説が濃厚である。


「はぁーい!準備出来ましたっ!」


元気よく声を出す暁。


「よし、行くぞ。2人共捕まれ。」


「「はいっ。」」


白石は空間に捻れを生み出す。





2人が辿り着いたのは首都、東京。

普段なら人人人の人しか見えないこの地だが、今だけは無人。自衛隊の誘導の元、人々の避難が済んでいた。


「着いたぞ、東京だ。」


「「あっっっつ!!!」」


東北育ちの少年2人が東京に来てみた第一声はそれだった。

夏の光はいきなり目の前で白い爆発を起こしたみたいに明るい。


「信じらんねぇ。なんでこんな暑いの????」


「落ち着け暁。今、ニュースでやってただろ異常気象だって。」


「暑wすwぎwでwしょwwwww」


「まぁ、ビルが密集してるからな。風がうまく通り抜けないんだろう。」


「2人とも。任務に集中しろ。巨大蟻は近くにいるぞ。じゃあ俺は一旦戻るから、終わったら連絡して。」


「あっずるい!白石さんだけ一人でクーラーあるとこ行くつもりだ!」


「じゃあな。」


白石はまた空間に捻れを生じさせて消えていった。


「暑い……暑い……。青森さ帰りてぇ……。」


「巨大蟻なんてとっとと倒して、帰るべや。」


「だな。」



2人は無人の東京を散策するが巨大蟻を見つけられない。

ギラギラとした太陽光が周囲の建物に満遍なく降り注いでは甲斐もなく跳ね返されていた。

炎天下のアスファルトは、弱火にかけたフライパンの底のように熱い。



「おい……マジでふざけんなよ……。何処にもいねぇじゃん……。暑い……。」


「巨大蟻と戦う前にオレらが熱中症で死ぬ……。」


「軽い気持ちで~ここに来たのにねぇ~。」


「いや、シャボンデイ諸島に来たらレイリーと闘うハメになった時の黄猿のモノマネはいいから。」


「困ったねぇ~。」


「黄猿で続けるんだ。」


「もしも~し、もしも~し、あれぇおかしいねぇ~。」


「え、なにそのシーン。」


「これは電伝虫の種類を……って。あれ?来た?」


ゴゴゴゴゴゴ


突如揺れ始める地面。

勿論地震ではない。


「来るぞ暁。」


「おいおーい、マジか。」


「あ、今度は青雉?」



2人の目の前のコンクリートが盛り上がったと思えば破裂し、砂塵の中から巨大なシルエットが映し出される。


「でっか。」


「おいおーい、マジか。」


「青雉のレパートリーは少ないのね。」


「シャアアアア!」


現れたのは巨大な蟻。その大きさは大型バスほどあるだろうか。その巨大生物は2人を見下ろす。


「……大地君、戦闘準備は?」


「出来てるよっ。」


「シャアアアア!」


蟻が、大地に向かい噛み付く。


しかし、大地に噛み付いた顎は大地を貫くことは無かった。辺りには釘を打ち付けたような音が響く。それどころか持ち上げることすら出来ない。


「おいおい、蟻って力持ちじゃなかったのか?」


大地は異能力を発動させていた。発動させたと言ってもシルエットは変わっていない。強いていうなら色が変わった。全身が銀色の、まるで鋼鉄のような色だ。


《肉体変化:鋼鉄》


大地は、全身を鋼鉄に変化させることの出来る異能力者。質量は激増し、この状態から繰り出される攻撃はあまりにも強烈。


「シャアアアア!」


蟻が力を込めると何とか大地が持ち上がった。


「お、おおおお。やっぱ蟻ってすげー。」


そのまま大地を振り回そうとするが


「ふんっ。」


大地が自らを挟む蟻の大顎を両手で叩き、砕いてみせた。


「よいしょ。」


そのまま大地は蟻の顔へパンチを一発放った。すると、瞬く間にヒビが広がっていき


ブシャアアアア


蟻の体液が辺りに散らばった。


「きったね。」


大地が着地した衝撃でコンクリートには大きな亀裂が入る。

蟻はそのまま力なく倒れた。


「はい。終わり。」


鋼鉄化を解く。


「大地ナイスぅ!俺に異能力を発動させることもなく終えてくれたね。」


「所詮は蟻よ。」


「ま、地球防衛軍でも雑魚敵だからね。そんな大量に発生しない限りは……。」


また地中を掘り進める重機の如く轟音が2人の耳に入る。


「おい、暁てめぇ……。フラグ立てたな……。」


「ですね……。」


その轟音の正体は大量の巨大蟻の足音だった。仲間がやられたことを察したのか、一気に押し寄せてきた。


「今度はお前も戦えよ暁。」


「おけまる。マジ卍。」


《肉体変化:鋼鉄》


再び異能力を発動させる大地。


そして暁も発動させる。


「いくぞー!」


《兵器顕現:バスタードソード》


暁は何も無いところから自分の身よりも遥かに巨大な大剣を生み出した。


「見ろこのかっこよすぎる大剣を。まるでFF7のクラウドを彷彿とさせる……。」


「いや、お前FFやったことないじゃん。」


「じゃ、一護。」


「じゃ、って何だよ。失礼だろ!全てのBLEACHファンに謝れっ!」


「ごめんなさいっ!」


そんなやり取りをしている間にも近づいてくる巨大蟻群。周りを取り囲まれているようで、逃げ道などない。


「大地しゃがんでー。」


「あい。」


「行くぜ必殺!トルネードスラアアッシュッ!!!」


そう叫びながら回転し大剣を振り回す。いや、振り回すというより振り回されてると言うべきか。大剣のあまりの重さにコントロールが上手くできず、遠心力に身を委ねて回転しているだけだ。

だが、威力は絶大。その回転斬りを喰らった蟻たちはスパスパと、まるで溶けかけのバターをナイフで切るかのように脚や頭部が切断されてゆく。切れ味は抜群だ。


「その自称必殺技の名前はかっこいいけど、見た目はかっこ悪いんだよなぁ。」


大地は回転斬りが自分に当たらないよう伏せている。もし大地に大剣が触れると、大地が斬られるのか、大剣が折れるのかはまだ試したことは無い。だが、お互いの身にならないため試そうとも思わない。


「おぇぇぇぇぇ。」


回転斬りが終わると同時に暁はその場に膝をつき、悲痛の声を上げた。ああもぐるぐる回ったのだから無理はない。


「あ、ああ!あああ!世界が回る!」


「馬鹿だなぁ。なら、回転せずに一体一体斬ればいいじゃん。」


そう言いながら暁に近寄る蟻たちを撃退してゆく大地。正直言って大地だけで事足りる戦いだ。

殴る。割れる。蹴る。吹き飛ぶ。また殴る。汁が噴射する。

この繰り返しだ。途中から暁も復活し、一体一体、言葉通り一刀両断していった。



「これで全部か?」


「うん。オワオワリってやつだね。」


「じゃ、白石さん呼ぶべ。」


「だな。」



暫くすると白石が空間の捻れからやって来て2人を回収していった。


そしてそこには大量の巨大蟻の死体と、噴射された体液、蟻の脚や頭部がゴロゴロ転がっていた。



アジトの更衣室で着替える2人。


「ふぁー。終わった終わった。大地ー、この後暇?」


「ポケモンGOの予定が入ってますね。」


「あ、行く?」


「お前も来る?」


「うん。そろそろコミュニティデイだからね。今の内にボールとか補充しときたいかも。」


「じゃ、飯食ったらいつものポケストップな。で、まず駅の方行ってから、市役所の方へ向かうと。」


「いつものね。」


「暁お前遅れんなよ?もしかしたら雨降るかもだって。」


「あ、じゃあ雨降ったら大地ん家さ行って地球防衛軍やるべ。」


「それすばらー。」


2人は更衣室を出て、白石の方へ向かう。


「じゃ、また。」


「ああ。ちゃんとモバイルバッテリーも忘れるなよ。」






これは、こんな高校生2人の物語だ。

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いきなり神を殺せって言われても…ねぇ……? 狐狸夢中 @kkaktyd2

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