第5話「僕らはみんな生きている生きているから―」

俺にも見えた。


髑髏の顔でローブを羽織り、右手には鮮血に染まる大鎌、左手に切断されたタクミの生首を握る死神の姿が。





「うわあああああああああああああああああああああああああ!!!た、た、タクミィィィィ!!」


俺の悲痛の叫びも勿論タクミには届かない。

だってもうタクミは明らかに死んでいるから。


「……やぁ、来たのかい。せっかくさっきは見逃してあげたのにね。」


死神が喋った。その声は一言一言発せられたびに筋肉が震え、血流が加速し、汗が噴き出し、自らに訪れる「死」を直感させる。


「死……神…………。」


「死神……か。うん、そうだね。私は死神だね。」


「……タ、タクミを……。」


「ああ、彼かい?私と会うなり襲って来たから、ね。」


「……う、うう。」


「……まぁ彼は私が手を下すまでもなく死ぬ運命だったし。遅かれ早かれ、ね。」


「……死ぬ……運命?」


「そうだね。」




……死ぬ運命。。。

そして「さっきは見逃してあげた」。。。

………………。

……あれ?もしかしてそういうことか……?




「サキちゃん逃げ」


俺がそう言う前にサキちゃんはすでに死神に飛びかかっていた。


「死ねぇっ!!」


ドゴォンッッッッ!!!!


サキちゃんは衝撃波を死神にゼロ距離で放つ。衝撃波は死神に直撃した。


「いっった……。」


「うらああああああああっ!!!」


ドゴォンッッドゴゴォンッッッ!!!!


連発する。


「おっおっおっおっ。」


死神の身体はローブごとバラバラに吹き飛んでゆくが、髑髏は普通に喋り続けている。ダメージは……無いのか?


ドゴォンッッッッ!!!!


ついに髑髏も砕けた。


「……はぁ、はぁ、はぁ。」


サキちゃんも弾切れのようだ。しかも衝撃波を撃ちすぎたせいか手袋から血が流れている。弾切れどころかオーバーだったようだ。

サキちゃんが衝撃波を乱射した跡には木や大地が抉れに抉れたまるで大嵐が過ぎ去ったような荒野に成り果てていた。


「……はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」


「サ、サキちゃん。大丈夫?」


「……ええ。ちょっと無理はしたけど……。」


「そ、そか。よかった……。」


死神は髑髏の破片とローブの切れ端が辺りに乱雑に散らばっており、動いたりする気配はない。本当に倒してしまったのか?

……もし、倒していたにしても俺の推測が間違って無ければ……。


「サキちゃん、取り敢えずここから離れよう。もしかしたらこいつは再び復活するかもしれない……。」


「そうね。離れま」












ザシュッ









「えっ」



死神 の 鎌が サキちゃん の 首を 切断 した。



ドッ



地面に落ちるサキちゃんの顔。




「サキちゃ」



あら?なんだか思考回路が異様に早い気がする。これって……例のあれか。成程ね。

……やっぱり俺の推測は合ってたんだな。死神がサキちゃんに見えていて俺に見えていなかったのは、死神が俺を見逃してあげてたから。サキちゃんに見えていたということは……。


あーあ。俺もなー。あん時にサキちゃんと共に生きると決めたからなー。いや、別にサキちゃんを恨んでるわけじゃない。俺は自らサキちゃんと生き延びる道を選んだんだ。を変えてしまったのならしょうがない。Game Overです。


……うーんそうだなー。もし次生まれ変わったら働かなくてもいいニートになりたいなー。





俺は目の前に迫り来る鎌を見ながらそんなことを強く胸に誓っ









ザシュッ





ポンッ

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