第2話「むしろ脱出用のヘリが壊れないなんてある?」



「俺の能力は弱いよ。とてもサキちゃんみたいに戦闘に特価してるわけじゃない。」


「渋るな。言え。」


「《コピー》。」


「コピー?……というと敵の能力を真似るの?謙遜してた割に強力じゃない。」


「俺のコピーは1度きりなの。誰かの能力をコピーして使用したらまたリロードしなきゃいけない。コピー自体は対象に触れさえすればできるけどね。」


「それでも十分でしょ。」


「……ま、この能力があって良かったことなんてないけどね。ゆうて他人の特技が一回できるだけだし。それはサキちゃんも一緒か。」


「…………。」


「……あ、ごめん。衝撃波持ちのサキちゃんの方がよっぽど辛かったよね……。」


「そうね……。私の能力は幼少期に目覚め、以来とある機関に引き取られ、監禁。それからは毎日能力の検証実験。……こうして日の光を見たのも10年ぶりなの。」


「……そか。」


「シロウも監禁されていたんでしょう?」


「うん。俺はコピーという地味な能力だから機関にバレずに過ごしてたんだけど、去年辺りに俺が……。」


「何をしたの?」


「いやぁー。コピーの能力をSNSに拡散しちゃって……wそれが偶然機関の目にね。」


「アホ?」


「うん。あの時はネットの有名人になりたいの一心でついね。でもでも監禁と言っても普通の家に閉じ込められただけで特別なことしてないし、それどころか家には娯楽もあったし、スマホは監視員の物をこっそりコピーしたのを使ったし。」


「…………。」


「oh! Ms.Saki! Stop! 無言で俺に掌をかざすの止めて!ごめんて!同じく監禁されていたどうしとか言ってごめんて!そうだよね!君の辛さに比べたら俺のなんて……ね!」


「……ぅ、ぅぅぅぅ。」


「あっちょ、泣ーかなーいーでーっ!辛かったね!寂しかったね!でも大丈夫!これからは俺が一緒にいてあげるから!」


「………………ホント?」


「もちもちのもちのロンだよ。」


「…………ふふ。」



ん?今の軽くプロポーズぽくなかったか?でもまあサキちゃんが泣きやんだからいいや。


……けっこうサキちゃんてメンヘラの素質があるのかな。サキちゃんの過去からしたら涙を流してしまうのもしょうがないのかもしれないけど。



ガサガサッ



「誰だ!?」


振り向くとそこにはマッチョなイケメンがいた。

迷彩柄のズボンと黒のタンクトップ姿の金髪。アメリカ人か?


「あーあーあー。女の子泣かしてるー。わーるいんだ、わるいんだ。せーんせーに言ってやろー。」


日本人だ。


「いやいやいや、誰だ君は。」


「おっとオレとしたことが。」


そう言うとマッチョメンはビシッと気を付けからの敬礼を取る。


「ハイッ!ワタクシ、特殊自衛隊員、二等陸士、齋藤 拓海 でありますっ!」


急に真面目に自己紹介するタクミ。


「自衛隊?しかも特殊?」


「さ、堅苦しいのはこれくらいにしてと……。君らもどうせ能力者だろうから言うけど、能力者の中にはその力のために生かそうと自衛隊に志願する者もいる。そういった能力者だけを集めた部隊、それが特殊自衛隊だ。」


「……なるほどなるほど。」


「君らは?」


「俺の名はシロウ。後ろの子がサキちゃん。」


サキちゃんがぺこりと頭を下げる。可愛い。


「どうしてここに?」


「どうしても何も。俺もサキちゃんも目覚めたら謎の寝袋と共にここに……。」


「…………そっか。」


急に顔が暗くなるタクミ。


「どうした?タクミ……さん。」


「ああ、タクミでいい。歳は23だが、オレは別に上下関係気にしないし。」


「そうか。」


「………………んーとだな。大変お気の毒と言いますか、なんつーか。」


「どした?急に。」


「えっとね。ここね、戦場なの。」


「戦場……?え、日本て何処かと戦争してんの?」


「いやいや、国どうしのじゃない。もっと大きな存在と、しかも日本だけじゃなく世界中と連携して。」


「世界中と連携て。いったい何と?」


「神話生物。」


「え?」


「神話生物。」


「……あー。はいはい。そういう系ね。GANTZとか地球防衛軍みたいな感じね。」


「ここは神話生物が不定期に降り立つ島だ。決まって神話生物たちはこの島に降り立つ。だが、神話生物をこの島から出る前に殺さなければ世界が終わる。」


「てーへんなことになってるなー。」


「そんな島に君らはいるんだよ?」


「オーマイガー。」


「オーマイガーつってもここは神を殺す場だけどな。」


「その神話生物ならさっき見たよ。」


「え、マジ?」


「てかサキちゃんが殺した。サ後ろに死体が。」


「うおっ!本当だ。気づかなかった。これは……オーガか?そこそこ強いやつだぞ。」


「オーガって鬼?鬼って神話に出てくんの?」


「知らんがな。」


「そんなことより。ここはヤバい島なんだろ?ここから出たいんだけど。」


「うーん。どうだろなー。」


確かにタクミは否定的な感じを出しているが、どうも何かを隠してるようにしか見えない。


「自衛隊はヘリかなんかでこの島に来たんだろ?ならそのヘリを使えば脱出できるだろ。」


「うーーん……ww」


「……タクミ、何を渋ってる?言いたいことがあるならいいな。」


「…………あの、さ。」





タクミが言い始めようとしたとき




ブウウウゥゥゥゥゥンッ



ヘリ?飛行機?何やら凄まじい音が聞こえる。


「来るぞ!」


タクミが戦闘態勢に入る。手にはアサルトライフルが握られている。


サキちゃんも掌を構える。


ブウウウゥゥゥゥゥンッ


その音が近づいてくる。


ブウウウゥゥゥゥゥンッ


近づいてくるにつれ、俺にもなんの音か分かってきた。……これは、羽音だ。

そして姿を現す。


「うおらっ!!」


ドパラタタタタタタタタタタタタッ


タクミは姿を見るや否やアサルトライフルを乱射する。撃たれてる生物も怯んでいる。


サキちゃんも俺も参戦しようとするが体が動かない。

なぜならこんな生物は見たことも聞いたこともないからだ。てかキモすぎる。


体は蟹のような蜂のような蟷螂のような甲殻類と昆虫を合わせたような胴体手足。そして顔は人の脳みそのような物がうねっている。


「きんも……。」


俺が気分を悪くしてると。


「うおおおらっ!!」


タクミは弾切れになったアサルトライフルを捨て直接殴りかかった。


ドンッ


拳は腹部に命中。甲殻に大きなヒビがはいる。虫にはかなりのダメージが入ってるようだ。虫はふらふらと揺れておりまともにその場に止まれない。


「これでも……!」


タクミはおもむろに力み始めると、なんとタクミの額から角が生えてきたのだ。ユニコーンみたいな角だ。

これがタクミの能力だろうか。


「くらいやがれっ!!」


そのままタクミは角を虫のひび割れた部分へと突き刺す。角は貫通し、辺りに紫色の液体が飛び散った。

そしてそのまま虫は動かなくなった。



「……ふぅ。雑魚が……。」


タクミは警戒を解き、角もしまう。


「……今のは?」


「だからこんなのが神話生物だって。」


「ええー。きーもーいー。帰ーりたーい!ヘリ出してー!」


「ヘリ……か。」



そして何故タクミが渋っているのかついに俺は察してしまった。そうだよ。こんな島に来たヘリだぞ?テンプレ通りにいけば……。


「ヘリは……ないんだ。神話生物に破壊された。」


ですよねーwww はいカプコン製ヘリコプターきたー。だよねー。こんな未知の生物がいる恐怖の島からヘリで脱出なんてそんな平和的なこと出来るわけないんだよねー。


「じゃどうするの?タクミも帰れないじゃん。」


「いや、特殊自衛隊には空間系の能力者がいるからそいつの能力で帰れる。」


「マ?なんだよ。俺らも帰れんじゃん。」


「……いや、それがさ。俺は帰れるけどお前らは帰ないんだ。」


「え?」


「お前ら突然この島に放り出されたんだろ?」


「うん。」










「それは……あれだ……。……言い辛いんだが、お前らは国から捨てられたんだ。厄介な能力者としてな。神話生物に殺されるためにお前らはここにいる。だから帰ることはできない。」

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