乙女心はわからない


「はぁっ!やぁっ!たぁ!」

「朝っぱらからご苦労なこって。」

「朝の鍛錬も騎士の勤め。サボっていいものでは無い。」

早朝から剣を降るラウラにフェリックスは呆れ顔で言う。

「鍛錬もいいけどよ?今日もまた長旅になるから程々にしとけよ。」

ラウラはふと、思い立ったかのように手を止めて聞いた。

「そう言えばだが、後何日くらいで港に着くんだ?」

「このまま行けば5日くらいだろ。明日上手く行けばだか、貨物列車に忍び込むつもりだ。その方が断然早ぇ。」

ラウラは顔をしかめる。

「無賃乗車はあまり気が進まないな。」

「何を今更腑抜けた事抜かしやがる。俺達は町一つぶっ壊した大罪人だぜ?」

ラウラはフフっと苦笑する。

「それもそうだったな。それにもし見つかってもゴリラ一匹と一人だ。乗車賃は一人分で済む。」

「抜かせ。ゴリラ一匹とナルシストゴリラ一匹だ。乗車賃は要らねぇイテテテ」

ラウラがフェリックスの足を踏みつける。

「仮にも女性にゴリラなんて言うものではないぞ。」

笑みが怖い。

「わかったわかったとりあえず飯だ。後で来いよ。」

フェリックスはその場を後にする。

「いってーな。やっぱりゴリラじゃねぇか……。」



その後フェリックスとラウラは道中の街へ寄って必要な物を買い揃える事にした。かなり遠くまで来たから顔は知られてないかもしれないが、念のためバレないようにフードを深く被っておいた。

「とりあえず必要な物を揃えたら夕方にこの広場で集合だ。」

「了解した。」

そう言ってフェリックスは人混みに消えていく。

「とりあえず私も用意しなくては。」

一応女性であるし、準備をせずいきなり街を出たラウラにも用意するものは沢山あった。

「本も見ていきたいし少し急がないといけないな。」

買い物を早く済ませるために走った…が、

「キャッ」「わっ」

ちょうど曲がり角で華奢な少女とぶつかってしまう。

すると別の方からまた違う少女の声が聞こえる。

「だから言ったでしょリリィ走ったら駄目だって。大変失礼しました。そちらの方は大丈夫ですか?」

三つ編みをしている眼鏡をかけた金髪の少女。幼く見えるが、意外としっかりしているようだ。

「こちらこそ済まなかった。僕も少し急いでいてね。そちらのお嬢さんは大丈夫ですか?」

そう言ってぶつかってしまった少女に手を差し伸べる。

「うん、大丈夫。ごめんね?ぶつかっちゃって。」

少女は差し伸べられた手をとって顔を上げると、ラウラはハッとした。

隣で立っている少女と今手を差し伸べている少女は鏡写しのように瓜二つなのだ。

「双子……?」

「あら、双子は珍しいかしら?」

眼鏡をかけた少女が小悪魔的な笑を浮かべる。

「いや、ちょっと驚いただけだよ。」

そう言ってラウラはリリィと言われた少女を引っ張り上げる。

リリィは恍惚な笑みを浮かべてラウラを見つめていた。

「素敵な方ね。」

「あなた達の方がずっと可憐ですよ。」

恥ずかしげもなく言い切るラウラ。

「あら、お上手ですのね。」

「あの、立ち話もなんだし、良かったらそこのお店でお茶でもどう?」

少し悩んだ末にラウラは答える。

「……申し訳ないが、少し急いでいてね。申し訳無いけどここで失礼させてもらうよ。」

「あら、それは残念だね。」

「本当に。」

二人は(特にリリィは)がっかりとしていた。

「急ぎの用なら仕方ないですね。私はアベリィ。」

「私はリリィ。また縁があればお話しようね!」

「ラウラだ。今度はゆっくりできるといいですね。では僕はこれで。」

そう言ってラウラは急いでいてその場を後にした。

「写真通り……いいえ、それ以上に素敵な娘だったね!アベリィ。」

「全く、街の中で鉢合わせるなんて冷や冷やしましたよリリィ。バレてしまうのではないかと思いました。」

アベリィやれやれとため息をつく。

「明日が楽しみね。どんな声で鳴いてくれるかしら。」

「そうね。明日が楽しみですね、リリィ。」



その頃フェリックスは『第3回腕自慢大会 賞金3000ドル!』と書かれたチラシを握りしめて会場へと向かっていた。

「暴れられて旅費も手に入るたァ、一石二鳥じゃねぇか。」

フェリックスは悪い顔をして会場へと向った。

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