第9話 鹿族への道
鹿族を探すには、何から始めるか、作戦会議が始まった。
といってもかなこが文机の前に陣取り頭の中で思考を巡らし、思いついた単語をつらつらと紙の上に書き連ねて行く。そして必要な情報が出てきたら、すぐさまおちよに情報収集を頼む。
滅多に姿を見せない鹿族ではあるが、春日の原始林の中を不定期に動き回る鹿神さまを探すよりは、動物の行動にも春日の原始林にも精通している鹿族に協力を仰ぐ方がはるかに短時間で効率が良い。何でもお金が許すのであればプロに頼めるのであれば一番だ。
カムさんとの会話の中身の整理から始める。
パソコンがないので、削除などは面倒だったが、徐々にこの紙文化にも慣れてきた。筆による手書きの分、書く内容は厳選され、ポイントのみになる。硯で墨を擦りながらポイントを整理していく。そして手で書いたことは忘れにくく、何かの拍子に先ほど書いたことを思い出して繋ぎあわせることができるのもメリットだ。
一に、鹿の角は不老長寿
二に、鹿は3000ー5000頭
三に、リーダーでない雄鹿は自由に活動
四に、水飲み場に鹿は集う
五に、鹿神さまが私に求めていること
六に、鹿族は革の商い
七に、慈乃尊
八に、瑠璃色の玉
様々話を思い返しつつ考えるが、果たしてどこから攻めるのが効率的なのか。
鹿族は人知れず山奥に暮らし、鹿を熟知している。どのように鹿族は鹿を追いかけているのだろうか。現代であればどうするかを想像してみる。
野生の鹿を何頭か確保できるのであれば、その足にGPSセンサーを取り付けて鹿の行動を把握し、鹿溜まりを特定してそこを攻めて鹿神様を見つける。鹿の背中に小型カメラを設置して、周囲の様子をカメラで撮影して場所の特性も掴む。鹿の動向をデータ化すれば、鹿の集まる場所はだいたい掴めるだろう。そして山の地形や起伏をすでにプロットしている地図をパソコンの画像処理ソフト上で重ね合わせれば、そこまでの最適経路が意図も簡単に組みあがる。さらにAIを利用すれば、鹿の溜まりやすい日時が予想できるし、天気情報を組み合わせればベストコンディションな日を選ぶことも容易にできる。
しかし現代のAIをもってしてもそのデータ分析およびプロットについては膨大なデータ量と時間がかかるのである。鹿を追いかけてセンサーを取り付ける。そもそもそのセンサーにしてもこの時代にはないものなので、それに変わる何かを考えなければならない。取り付けたとしても、数頭を管理し出すと訳がわからないくらいになる。データ量はどのくらいの期間取得するのが最適か。1週間か1か月か1年か。1年も鹿神さまを求めて山の中を彷徨うことなんでできない、それでは私自身が鹿になってしまうではないか。
逆に鹿を追うのとは別のアプローチはないだろうか。
虫や獣にセンサーをつける方法、しかし虫は鹿ほど行動エリアは大きくない。獣は鹿と縄張り争いをしていたら、的確に情報を掴むことができない。であれば、動物以外のものをたどっていけないだろうか。そう、例えば川をたどってドローンを飛ばし、鹿が水を飲みに来る場所を辿るとか。「四に、水飲み場に鹿は集う」ともあるではないか。
「そうだわ川だわ。おちよ、春日山にある鹿が水飲みに使いそうな川はどれくらいあるのかしら。」
やはりこの書き出したメモを頼りに一歩一歩進めて行こう。
自身の拙い字を見つめる。「六に、鹿族は革の商い」とある。
そう、革を扱っているお店のその仕入れ先を確認するという方法があるではないか。その仕入れ先の先の先かもしれないが、鹿族にいつかはつながるはずである。
「あと、こちらのお屋敷に革の製品を仕入れている方を探してちょうだい。」
おちよはそそくさと地図と納入業者一覧を持ってくるよう下女に指示している。
「あ、あと慈乃尊について誰か知らないかもあたってちょうだい。」
「かなこさま、承知いたしましたが、おそらく東大寺の神職であらしゃいますカムさまでさえご存知ないことであればどなたも知らないのではごじゃりませんでしょうか。」
確かにそうだ。神々の時代の記録や伝承を受け継いているところでなければまず慈乃尊の名前すら聞かないであろう。
「そうですね、カムさん以外は知らないかもしれない。しかもこの辺りで最も書物を保管しているところの長なのだから、それ以上はそこにヒントは見つからなさそうね。」
なんだか迷路を進んでいるような気分である。様々な条件が繰り出されるが、この時代の技術や検索能力ではすぐに行き止まりになってしまう。そこが歯がゆい。
しばらくすると下女が春日山の地図を携えて戻ってきた。
地図を広げてみるが、そこに春日山の状態は詳しく書かれておらず、平城京の仔細の隅に「春日山」と丸で囲まれた文字が載っているくらいである。これ以上詳しい地図はない、この時代には衛星を使ったグーグルアースのように便利な位置情報アプリもなければ、ドローンをひとっ走りさせて山の映像を撮影する最新技術を駆使することもできない。すべてが人の手作業による計測なのである。
それでも川は幾つか描かれている。支流が平城京に流れ込んでから先、綺麗な形に成っているのは平城京を作った際に碁盤目に京を整えるのに川の位置をずらしたからであろう。
それにしてもこれだけ支流が分かれていて多くの川が流れているのであれば、想定した通り川を遡っていくことはできまい。特に鹿は獣道も行けるのであるから、人が歩いて通れる川沿いなどにはあまり姿を現さないだろう。
別の下女が今度は革製品の納入業者一覧を携えてやってきた。こちらは昔ながらの薄い木簡に書かれたものである。
「この形、この雰囲気、社会の教科書で見たやつだわ。」
と思わず喜びの声を挙げてしまった。
「そうでごじゃりまする、釈迦のお経が載っていたのもこのような木簡でごじゃりました。」
おちよの都合良いお耳のおかげで助かった。
「記録帳であれば紙の巻物を使いまするが、物の取引には木簡を使いまする。その方が、ものの上に置いて数を確かめることもあれば、そのまま荷札として預けることもできまする。」
そう言いながら、3つの木簡を手渡してきた。
納入業者は以下の3人。
人足中麻呂 牛革 伍拾
山之辺亜母 猫革 参拾 、 馬革 拾
木乃山多彦 蛇革 弐拾 、 牛革 参拾
鹿の革を扱っているところはないようだ。
「鹿は神さまでごじゃりまするので、大和では鹿の殺生は禁じられておりまする。もちろん死んでしまったものを扱うことはあるでしょうが、表立って出ることは、あらぬ疑いをかけられまするので、なされておりませぬ。」
鹿革を期待していたと顔に書いていただけに、がっくりと来ているかなこへおちよのフォローが入る。
それにしても狗猫も革を売られているとは驚きである。蛇革も何に使っているのであろうか。
そこへ水果が運ばれてくる。
「かなこさま、少しはお休みになられまし。さぁさ、今日は瓜をどうぞ。」
水を張ったタライの中で丸々とした瓜が泳いでおり、見るからに涼やかだ。一つを取り上げて目の前でおちよが切り分けてくれる。よく見ると使っている手刀の取手部分が革張りになっている。
「おちよ、その手刀を見せてちょうだい。」
「そんな急にお手をお出しになったら危のうござじゃります。」
と言われつつ見せてもらった手刀の取手部分には丁寧に蛇革が巻かれていた。
「こんなところに蛇革が使われているのね。」
関心しながら手刀の美しさを眺め、切り分けられて雅な器に盛り付けられた瓜に手を伸ばす。
「蛇の革はこのような手刀の取手部分に取り付けると滑りづらく扱いやすいのでごじゃりまする。その他にも蛇は水の中へもスムーズに進める滑らかさも持っているため、水を用いるところでも使われております。確か武具や馬具でも重宝するとか。」
なるほど、蛇の革はあらゆるところに使われているのかと納得する。それに蛇を捕まえるとしたら山の中が多いのではなかろうか。
3つの商人のうち、明らかに山手にいそうな者として蛇革を扱っている商人に遣いを出して鹿族と内密にコンタクトを取りたい旨を依頼するが、商人はそれだけはご勘弁をと聞いてくれない。ただただご勘弁をと言っているのだから、知っていると言っているようなものである。
さらに相応のお金を出すと言ってみても、今後の納入に影響が出てしまうからと頑なな態度だったという。蛇はどこで取られているものかと聞いても山の方だというだけでそれ以上の情報を出そうとはしない。
「なんと多彦は強情なのでしょう。」
「かなこさま、木乃山 多彦ではなく、木乃 山多彦でごじゃりまする。本当に名前も言い難い、扱いずらい、ここからの取引をやめてしまいまするか。」
おちよは案外短気なのかもしれない、敵に回すとあな恐ろしや。
山多彦をこれ以上正しても情報はなさそうなので、仕入れに行く日を探り出し、その日に合わせて尾行することにする。
さすがに物騒な話になりだしたので心配になったおちよは腕の立つ者を2人を護衛につけた。どうやってパパを説得させたのかは分からないが、護衛は高額の給与をもらえればかなこの行き先などは他言無用とのこと。本当におちよを現代の秘書として雇いたいものである。
かなこはお忍びスタイルである。
この時代からいたかどうかは分からないが、おちよが準備してくれたのは忍者スタイルである。いつものごとく小さい鏡を遠くに置いて全身を眺めてみる。
長い髪の毛はコンパクトにまとめられて、動きを邪魔しないようになっている。首、手首、足首には布をバンド状に巻かれて安定した動きができるように固定されている。この機能は、服の隙間から虫が入ってこない役割も果たしているのだ。
服装自体は鈍色でモンペのような形である。この色は、砂や筵のようなものが多い市中でも、緑が多い山の中でも周りの環境に上手く身を溶け込ませてくれるそうである。
そして履物は草鞋である。慣れない草鞋に戸惑う。新しいものを用意してくれたので、まずは畳の上で履いてみて、慣らす。普通であれば素足で履くものらしいが、慣れていないだろうからと気を利かせて足袋も用意してくれた。これであれば痛くなりそうな鼻緒部分にもクッションができて足への負担も軽減されそうだ。
背中には風呂敷に必需品をいくらかコンパクトに収納している。小さめの竹筒に水を少々、食料として乾燥させたクコの実。緊急時の伝令用にペンセットと木笛。寒くなった時のための火起こしセット。小刀。必要最低限だとおちよに言われるがままのものを風呂敷に包んで背中に背負う。
おちよはかなこと同じものに加えて、更に様々なものを集めてきていた。
顔を隠すための薄布、もはや顔がばれてもこの際何も困らないのではないか。
薬草を煎じるための石挽、こんな重いものはいらないのではないか、しかも薬草は持っているように見えない、現地調達する気であろうか。
マムシを乾燥させたもの、鹿が好むらしい。本当かどうかはかなり怪しいところだ。
生米、炊くための道具がないのにそのまま食べるようなことになるのはごめんだ。
他にもどこで登場するのであろうかと思うようなよく分からないものまで詰め込んでいる。
さて、荷物はさておき全体をトータルすると、どこからどう見てもお忍びスタイルである。
くノ一になれるのではなかろうかと中腰になって手裏剣を投げるようなモノマネをしたところで、おちよの冷たい視線を感じ、そそくさと出かける準備が万全になったことを伝える。
そのまま鹿族を追っていくことになるかもしれないのだ。険しい山道に獣道、ヒルやマムシというような虫に出くわすかもしれない。簡易な救急セットも持ち合わせてすぐに出立し、山多彦邸に向かう。
おちよは山多彦とは面識があるようで、邸から出てくる面々の顔を見つつ、違う違うとつぶやいている。
しばらくして蓑笠を被った小太りの男が出てきた、遠目に見てもはっきりと分かるほど眉毛はぶっとく、目と鼻と口はぼってりとしている。後ろを気にしつつ下男を一人だけつけて出ていく。
かなこ側は4名体制ではあるが、護衛達はこのような尾行にも慣れているらしくすでにかなこたちにもどこにいるのか分からない。きっといざとなった時には素早く助けに来てくれるのであろう。テレビの時代劇で良く観るようなシーンを思い描き、自身が悲劇のヒロインになったようでニンマリとしてしまう。
「かなこさま、あの者にごじゃります。仏頂面で強情を顔に貼り付けたような風貌、間違いごじゃりませぬ。」
普段はのんびりとこの時代の雰囲気に合わせて会話をするおちよであるが、今日は尾行をして山の中へ幻の鹿族を探しに行くという冒険心に火をつけたのだろうか、口調も早く、普段は3倍遅程度だったのが私の通常スピードになっている。そして的確に表現をしているものの、口悪くなっているのは気のせいであろうか。
「気づかれぬようにそそっと、そそっと。」
重い着物を吸って歩くのに慣れつつあったので、この服装はなんと軽やかに動けるのであろうか、筋トレのダンベルから解放されたかのような軽やかさである。
そそっと動くにしても、隠れられるようなものが藁だけの家や、藁の家の塀や、藁の蓑笠を被った行僧、基本的に藁が多いエリアなので、いっそのこと藁に身を巻いて、山多彦がこちらを向いたタイミングだけ藁の中に身を潜める方が効率的ではなかろうか。と思い至り、横を見ると、ちゃっかりおちよは藁敷をすっぽりとかぶり、両手で藁敷の両端を掴んでいる。さすがである。
「かなこさま、山多彦がこちらを向きましたぞ。ささ、頭を下げて。」
と言いながら、かなこを囲むように藁で包んでしまった。
きっと山多彦からは単なる筵をかぶせたものに見えたであろう。しかもちゃっかり、藁敷の中でも外を伺えるように小さい穴を幾つか開けている。おちよは現代の秘書と言うよりもスパイとしての方が活躍するかもしれぬ。
尾行に気づいていない山多彦の行動を見ていると、辺りを気にしながら春日大社の参道を通り、裏の小川が流れているところへたどり着く。
ここまではおちよも何度か来たことがあるらしいが、あの小川が流れているところから先は獣が出るため行ったことがないという。とうとうその奥へ入り込むのかと心構えをする。
すると、山多彦はまた後ろを振り向きながら、裏の小川沿いから少し進んだところの祠の前で立ち止まる。
さすがに周りに藁がない状況なので、かなこは幹の太い木の後ろに隠れ、おちよは頭の頭巾にたくさんの小枝や葉をかぶせ、手にも大きめの枝葉を両手に持ち、ささっと木のくぼみに身を隠している。
いつの間に藁敷の小道具から枝葉に持ち替えたのであろうか。そして見事に騙し絵のごとく周りの風景に溶け込んでいる。
山多彦はと言うと、周囲をさらに入念に窺いながら懐から小さな木片を取り出し祠の中に手を入れてゴソゴソとやっている。
通りがかりの人から見るとただ単に祠にお参りをして、少し掃除をしているようにしか見えない。だがあの木片は鹿族との商いをするための札証になっている。
一通りの作業を終えたのか、山多彦は最後は丁寧に祠の中のお地蔵さまを拝んで何事もなかったかのように仏頂面のままそそくさと立ち上がり帰路につこうとしている。
山多彦から姿が見えないようにするため、山多彦と対称的な位置に太い木の周りを回ろうとしたところで、足もとにあった小枝を踏んでしまい、バキッツと大きな音がしてしまう。
「あっ。」
「誰かいるのかっ。」
かなこが思わず発してしまった小さな声と、山多彦の声が重なったため、声は気づかれなかったようであるが、山多彦が近づいてくる。かなこはこれ以上音を立ててはいけないとその場にしゃがんでしまうが、山多彦が一歩ずつ近づいてくるので、すぐに見つかってしまうだろう。
一歩、一歩。
間合いを詰めてきているのが、山多彦の足音で分かる。
そして、懐から短刀を出してシャッと鞘を抜く音がする。護衛もいざとなったら出てきてくれるのだろうか。であれば、姿は見られてしまうが、すばしっこく逃げるのが正解かもしれない。
よしっと心の中で気合いを入れて立ち上がろうとしたその時、
「クウォォォン。」
と少し遠くの方から音がした。
「なんだ、鹿神さまか。」
山多彦は納得顔で声のした方に一礼をして顔を上げる、すると遠くの方で鹿が横切っているのが見えた。仏頂面で強情ではあったが、意外と信心深い一面を垣間見た。
安心した足取りで元来た道を下りて行く山多彦の姿が完全に見えなくなってから、かなこは一息つき、そっと道へ出てくる。
「かなこさま、ほんに危のうごじゃりました。」
「本当に、危なかったわ、鹿神さまが私たちをお守り下さって助かった。」
いやいやと首を横に振りつつ、おちよは平安顔をぐいとかなこの前に出し、いつもは小さい目をガバッと見開き、自身を指差す。
「もしかして、さっきの鹿の鳴き声は。」
「わたくしめも日々無駄に過ごしているわけではごじゃりませぬ。鹿神さまからも教えを請うた事があるのでごじゃりまする。たまたま、先ほどは鹿神さまも私の声に反応をお示しくださり、お姿を現してくださり幸いにごじゃりました。」
やはりスパイは違う、近くにいたのに、いかにも遠くからそれらしい鹿の声を出してしまうとは。さらには本当の鹿を導いてしまうとは。
「さてかなこさま、あちらの祠を見に行ってみますか。」
何食わぬ顔をして気持ちを切り替え指定いるおちよに向かって大きく頷き、そっと祠のところへ向かう。
山多彦がやっていた動作を思い出し、木の簡素な祠の前に立ち、中を覗き込む。
現代の世でもありそうな石のお地蔵様が微笑んでいる。それ以外には何もおかしなところは見当たらない。しかし長らくごそごそと山多彦はやっていたのだから、どこかに何かはあるはず。「お地蔵さま、お許しください」とつぶやきつつ、地蔵をそっと傾ける。地蔵の土台のところに小さな窪みがあり、先ほど山多彦が懐から取り出したと思われる小さな黒ずんだ木片が現れる。木片には文字が書かれており、上には小さな穴が空いていて紐が通されている。
「これだわ。おちよ、何て書いてあるのか分かるかしら。」
「かなこさま、これだけでは分かりませぬ。この木片は半分しかごじゃりませぬ。」
なるほど、確かに文字が半分で切られている。4文字からなっているようだが、左半分だけしかないので読めない。
「これは、鹿族に伝わると言われている、ものの形を基本に型どった文字かもしれませぬ。」
「なんと、つまりは鹿族秘伝の象形文字ね。ロゼッタストーンのような文字変換できるものがあればいいんだけど。もちろんできれば古文対応の電子辞書が数万単語入っているので一番重宝するのだろうけど。」
かなこの独り言はそのまま神聖な春日の山の澄んだ空気に溶け込んでいった。隣でおちよは熱心に木片を撫でて様々な角度から見ている。
「かなこさま、ここに何か線があるように思われませぬか。」
確かに文字が書いてある側面には線が斜めに走っているが、まっすぐではなく、ただの木の節目のように見える。
「木の節目ではないかしら。手で引っ張っても爪を入れてみてもほら、開いたりしなさそう。」
「これはまじないでごじゃりましょうや。」
「まじない。火で炙ったり、水の中でこすったりするのかしら。」
鹿族しか開けられないのであれば、山多彦はその方法を知っていて、中に何かを入れているのだろうか。そんなかなこの思いを汲み取ったかのようにおちよが応える。
「これは鹿族秘伝の封詰め方法、他の者に教えはしないでありましょうぞ。となると、どうやって山多彦はこの中に物を詰めるのか。」
「この紐が怪しいわね。」
かなこが言うやおちよが紐の結び目をほどき、紐を抜いてみる、小さな穴が開いており、中を覗けば確かに何か笹の葉のような素材がくるりと丸まって収まっているのが見える。
つまり山多彦は笹の葉のような紙代わりのものを注文票として記載し、この紐の穴から中へ丸めて入れる。鹿族はこれを受け取って、4つの文字に合うもう片方の木片で誰からの注文なのかを確認した上で、鹿族秘伝の開封方法で木片を開いて注文を受けつける。
この注文はおそらく都度ではなく定期的に決まった日付、つまりこの時代であれば太陽や月の暦を用いて行なわれているのであろう。そういえば、近く満月になるはずである、満月の日が注文受付の月の締め切りなのかもしれない。
だが注文された商品をどのように商人に納め、代金を得るのかはわからない。
ここまで内密に姿を現さずに対応をしているのに、商品を大きい単位で納めるには人目についてしまう。蛇革であればまだ嵩張らないであろうが、鹿革となると目立って仕方がない。代金の授受もいずれは後をつけてきた盗賊に奪われるのがオチであろう。
「そのあたりは、鹿族にしか分からないのありまするが、鹿族には俗世役がいるようで、こっそりと街へ下りて行き、商品を市場近くで渡すそうでごじゃりまする。そういえば、呪い師の家のようなところでこっそりと取り引きしているのでしょうか。」
鹿族についても最近知ったばかりのはずのおちよだが、さすが入念な調べようだ。
俗世役とは即ち、山の中と都の間を行き来する資格のあるもの。鹿族の秘密を絶対に守り、決して尾行されてはいけない、正体を知られた場合は自決するという恐ろしい掟まである。
「まるでどこかの社会主義国のようですね。日本でも古来にこのような掟が存在していたとは。」
「そうでごじゃりまする。おしゃかさまの掟に背く行為でごじゃりまする。」
社会主義国の社会だけを聞き取ったおちよはお釈迦さまの掟と変換したようだ。
かなことおちよは顔を見合わせ、事前に用意しておいた置き手紙をそっと地蔵の下に入れ、お地蔵様を元の位置に戻し、山多彦と同じようにそっと手を合わせて鹿族とコンタクトが取れるよう祈る。
しかし置き手紙だけではまず鹿族は無視する可能性が高い。そういうことを考え、祠の中に合わせて銅銭と高価な絹織物を入れた麻袋を忍ばせている。
置き手紙には心づけだから受け取るようにと記載したが、実は麻袋は二重になっており、銅銭と絹織物が入っている下側の二層目には光に反射する石を削った粉を入れている。細かく削っているので麻袋から徐々に落ちて行き、光に反射して道筋が見えるような仕組みだ。
発案はかなこであるが、この時代で光る素材を探してくれたのはおちよである、見事な連携プレー。光に反射する道筋が残り、これを辿ればきっと鹿族、そして鹿神さまに会えるはずだ。おそらく満月の日がものの交換日であるとすると、その前後に雨が降らなければ月明かりだけでもかなり明るく反射してくれ、探しやすいのではないかと思われる。
本来であれば日中に探しに行きたいところなのだが、光に反射する石の輝きは陽の元では薄れてほとんど検知できないのである。事前に別邸で行った実験によりやはり夜道でなくては辿れないと判断をした。
満月の日の翌日夜。幸運にもここ数日は雨が降らず天候に恵まれていた。
再びのお忍びスタイルで祠のところへ行ったかなことおちよ、そしておそらくうまく姿を現さずに見守ってくれている護衛たち。夜の山道は危ないと聞いていたが、夜行性の獣が嫌う匂煙を身にまとっていく。
そして先日よりもさらに万全の装備でもって先日通った道をなぞる。
まずは先日置き手紙を置いた祠に行き、鹿族から返事があるかを確かめることだ。鹿族から返信があり、会っても良いということであれば、指定された日時に行くだけなのだから手っ取り早く確実に会うことができる。
その様な返事を期待しつつそっと祠の前で手を合わせてからお地蔵様を傾ける。
お地蔵様の裏に置いていた麻袋はなくなり、木片も消えている。期待をしていた鹿族からの返信は何もなかったが置き手紙も麻袋と木片と共になくなっていた。
その場で開けて中身を見たとしても、すぐに返信を書けないし、もしかしたら取りに来た鹿族は文字を読めないかもしれない。しかし、山多彦の注文は誰かが解読しているはずであるのだから、きっと読めるものに託してくれたと気持ちを切りかえたい。
祠のお地蔵様を元通りに戻し、祠の周りに目を向ける。
次第に雲に隠されていた満月が、太陽の代わりに世の闇を振り払い、世界の隅々までを照らすようにその姿を現わす。
その月光が祠の周りにも降り注がれると共に、祠を起点として山奥へ続くキラキラとした道が出来上がって行く。
「かなこさま、光の道でごじゃりまする。キラキラと美しゅうごじゃりますな。」
気づくと護衛の一人がすぐ後ろに立っていた。
「かなこさま、この道は山の奥深くに続いている模様でごじゃりまする。夜の山道は危険が多く危のうございますので、ここは我らにお任せくださいませ。」
「かなこさま、この者の言う通りでごじゃりまするよ。ここまで来ただけで十分ではごじゃりませぬか。万が一朝までに別邸へお戻りに慣れずお父上様に事の次第が露わになってしまいましたらば、かなこさまは幽閉されてしまうのでごじゃりまするよ。そうなりますればおちよもどうしたら良いのやらあああぅぅぅ。」
袖で涙を拭いつつ懸命に訴えてくる。
「護衛さん、おちよ、私の求めている答えがこの一縷の光の道の先にあるかもしれないの。この道を自身で歩まねば後で後悔することになるかもしれません。それは絶対に嫌なのです。自身で決めたことなのですから一心に邁進していきたいと考えています。」
護衛もおちよも深刻な表情を浮かべて黙り込んでいる。
「夜の山が危険なのは承知しています。たとえ命を落としても、自身に鹿神さまが何かを求められているのであれば、その期待に応えねばなりません。それに、今から行けば、鹿族がちょうど置き手紙を読んだ頃合いで、こちらの急ぎ度合いも伝わるかもしれないじゃないですか。」
何としても鹿族に会いに行く意思が固いことを伝え、その先の道へ皆で足を踏み出すことを決めた。皆でといっても、もちろん護衛の二人はそのまま姿を消して、どこか見えないところからかなことおちよを見守っているはずである。
キラキラ道を月明かりに照らしつつ進む。
春日のお山は原生林と現在呼ばれているだけあって、もっと鬱蒼としているかと考えていたが、奥へ進むと杉の木々が端整に伸びており、その隙間をキレイに月明かりが照らしてくれるので見通しが良い。そしてしっぽりとした夜の静寂を帯びた森は、空気が澄み渡っていて清々しい。
新緑たちは夜に鋭気を養って、ゆっくりと呼吸をしているのが感じられる。
これこそ深い森の新緑の香りだと思わせる、ミントの若葉を揉んだような爽やかな香りに少し湿気を帯びた水の香りが混ざる。
かなことおちよの木々の根を踏みつけるバシンバシンという音が静かな森に響く。
2人に足音しか聞こえてこないので、護衛たちは一体どのようにしてどこから私たちを守っているのかいささか不安を覚える。ここまで静かな森で気配を消せるとは。
バシンバシン。
バシンバシン。
ササッ。
「おちよ、後ろで変な音を立てないでちょうだい。」
「ずっと同じ調子で歩いているのですが、気をつけまする。」
バシンバシン。
バシンバシン。
シュッ。
「だからおちよ、変な音を立てられると気が散ってキラキラ道が見分けづらくなるじゃない。」
「かなこさま、私ではごじゃりませぬ。」
2人の目が合ってしまう。
先ほどから何かの動く気配が漂っている。私たち2人を追ってきている可能性がある。
音は元来た道の方からしているようである。
ササッ。シュッ。カサコソ。
「この音は虫が動くような音ではない。何か獣が動いているような音だわ。」
「護衛の2人ではないのでしょうか。」
「いや、あの2人はここまで物音ひとつ立てなかったのだから違うわ。」
とそこへ気配を察した護衛の1人がすぐ後ろに立っていた。
「ぎゃっ。」
あまりに突然の出現で驚いてしまった。かなこの発した「ぎゃっ」という声が木霊となって森の木々の中を反射しつつ遠のいていく。
「驚かして申し訳ございませぬ。しかし姿の見えないものがお2人に近づいておりまする。」
「姿の見えない者とは、もしかして鹿族が私たちに気づいてこちらに向かっているのかしら。」
鹿族が近づいきたかもしれないという期待から少し声が上擦る。
「いいえ、それであれば進行方向の先の方から近づいてくるはず。姿が見えないのは木々の背丈よりも下にいるから、つまり獣ではないかと思われまする。」
「木々の背丈よりも小さいのであれば問題なさそうですね。かなこさま先を急ぎましょう。こんな夜中に森を歩いているなんてこと自体が尋常ではないのですからさっさと済ませましょう。そして月夜が照らすうちに別邸へお戻りにならなければ屋敷中が大騒ぎとなってしまいまする。」
おちよの心配は最もである。
先ほど、かなこの固い決意を伝えて納得したものの、この静かな森の中を2人だけで歩いてい流とだんだんと不安になってきたのであろう。何故こんな夜中に山の中を歩いているのだろうか。本当に目指すべきところはこの光の道の先にあるのであろうか。何かの囮に利用されているだけではなかろうか。鹿族は巧みに姿を隠して暮らしているのであるから、罠にかけようとしているのではなかろうか。ひたすら木々の根に足を引っ掛けてしまわないように、ぬかるみに足を取られてしまわないように、その心配をしつつひたすら歩いていると、どんどん邪念が頭の中を占領していくのである。
こんな夜更けにうら若き乙女が山深く分け入ってるということは異常事態なのだ。もちろん現代でも有楽町や銀座を歩いているのならまだしも、こんな山の中を歩くなんて異常なことだ。
そんな不安と恐怖と迷いが重なっている状況の中で、身の危険を感じる音が迫っているとなると、余計に不安になるものである。
「いいえ、木々の背丈よりも小さいから余計に厄介なのでございまする。我ら護衛からしても標的が見えぬためお守りしづらく、今もう1人の護衛が獣の姿を探しに行っておりまする。この場で今しばらく様子を見ていただけませぬでしょうか。」
かなことおちよは顔を見合わせてお互い緊張した面持ちで頷き合う。
3人が口を閉じるとまたしても静寂が森の中を覆った。こちらの様子を窺っているのか、獣の立てる音も聞こえてこない。
しばし無言での気配の探り合いが続く。
緊張してしまい一歩も足を動かせない状況にだんだん痺れてきた。
「待機」と命じられた瞬間のかなこの足の位置が、微妙に居心地悪いのである。ちょうど行先に一歩左足を出してそちらに8割方の重心を乗せ、体をひねって振り向いている状態である。そこから体勢を立て直せれば良かったのだが、流れ的にそのまま「待て。」を言い渡された状態である。
左足がしびれてくる。
せめて利き脚の右足に重心がかかっていればと後悔の念である。
そして腰のひねりも、いくらうら若き身体とはいえ、10分程度同じ姿勢で固まると疲れてくる。
「そ、そ、そろそろ良いでしょうか。」
あまりに無言の時間に息も潜めていたので限界である。恐る恐る護衛に聞いてみる。護衛も耳を澄ませて集中していたようだったが、こちらに意識を戻した。集中を途切れさせて申し訳ないと思いつつ、続ける。
「少し体勢を変えさせてください。」
「これは配慮が足りないことで失礼いたしました。どうぞそちらの小さい石にお掛け下さい。」
護衛も小声でヒソヒソと心遣いを見せてくれる。
これは助かったとばかりに静かに最小限に小さい足音になるよう身体を引き締めてつま先歩きをしながら指示された小さな岩の上に腰をかける。
「アァ助かったわ。」
ふと岩の横を見ると、月明かりに照らされて陽気を養ったとばかりに胸を張り、体を黒光りさせている特大の百足と目が合ってしまった。ここで百足と目が合うという表現は正しくないかもしれないが、現に百足と対峙してしまったのであるから仕方がない。
「ぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
先ほど護衛がいきなり後ろに立っていた時の驚きとは比にならない大声をあげてしまった。
しかも特大の百足は100本の手をうねうねと化け物のように自由自在に動かしながらかなこを威嚇してくる。
良い獲物を得たとばかりに突進してくるのである。おそらく百足にとって人間は食する対象ではないであろうが、咄嗟に食べられると感じたのだから仕方がない。
「うぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」
とまた盛大に声を上げつつ護衛とおちよの元へ駆け戻り、かなこの「ぎゃあああ」という声は木々を大きくザワザワと木霊させ、共鳴させ、盛大に森を賑やかにさせた。いつも冷静なおちよもかなこの月明かりの元でのパニック顔を見て驚き、小さく悲鳴をあげている。
それらの音に反応したらしき獣もこちらへ突進して、一目散に3人のいる方へ周囲の低い木々を動かしながら進んできた。
うぎゃあああぁぁぁぁぁ
シュパッ。
キューーーーン。
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
様々なものが盛大に動き、音を立てたので、森がザワザワとしたが、かなこが共鳴させた悲鳴が落ち着いたところでまた森には静寂が戻った。
「仕留めましてござりまする。」
気づけばもう1人の護衛が小さな山犬を捧げていた。
野生の犬であるが、歯をガッと見開いて凶暴な様相である。この時代では犬は野生で山を駆け巡り、かなり凶暴であるようだ。時には鹿神さまをも襲うらしい。
「ありがとう、助かりました。」
ひと安心である。これでまたキラキラ道を辿ることができる。
「ところであなた方はどのように私たちの後を追っているのですか、本当に物音ひとつさせないので驚いています。」
気になっていたことを聞いてみる。
「山の中では下を通ると音を立ててしまうので、木々の上をうまく渡って移動しております。その方が鳥の目で警備ができまする。しかし女人のお二人は足音も軽やかで小さいためそのまま下をお通りいただいておるのでございます。」
「木々を渡るとは日々の鍛錬がなくては出来ぬこと、ほんに神々の領域、素晴らしいことでごじゃりまする。」
おちよもいつもの通り手元で目元を覆い涙を流す。
気を取り直してキラキラ道をたどっていくと、尾根を登っていたと思っていた道はいつしか降っており、サラサラと水の流れる音に近づいてきた。おそらく近くに沢があるのであろう。沢まで出てひと休みである。
獣道を覚悟してきたが、鹿族と言えども人間、さすがに急な崖をロッククライミング並みに上り下りすることはなかった。かなこのうら若い体力を持ってすれば、時に四つん這いになり、時にお尻が弾けそうなほど足を開脚して乗り越え、時に護衛の2人に引き上げてもらい、時にアクロバティックに木から出ている蔦に腕を絡めてターザンのように岩場から岩場へ身を移して最終的にサラサラと水が流れる沢までたどり着いた。
「楽勝の道だったわね。」
「ほんに、楽々でこれる道でごじゃりました。」
かなことおちよは真っ黒に汚れた顔、破れてしまった服をお互いに見合いながら、ここまで来た嬉しさでいっぱいである。
護衛の二人はさぞかし疲れたことであろう。杉の木々の間を超えたあたりから道が険しくなり、とうとう根をあげてヘルプを出してきた二人をサポートするのに相当の体力を要したはずである。
「この沢は大和に平野に続いているのでしょうか。」
「そうでごじゃりまする。佐保川あたりにつながるのではないでしょうか。」
であれば帰りはこの川沿いを下った方が良さそうだ。船はないが川のそばを歩く方が今のアクロバティックな道のりを逆に辿ることを考えたら楽な気がする。
沢の水を飲み、汚れた顔を洗いながらひと休みしたところで、キラキラ道の続く先を見つめる。
川に沿って上流をたどっているようである。
さらに四半時、川を上流に向かって歩いていく。すると小さな人影がいくつか月明かりで影になって浮かんできた。
「ここは先に我らが偵察に行ってまいります。」
すかさず護衛の一人が音もなく先へ進んでいった。まずは周りから様子を伺おうとしているのか、途中で俊敏に姿を消した。
あれがおそらく鹿族であろう。鹿族とて人間、おそらく昼間に活動をして夜は寝るはずだ。だが夜の森の中では危険が多い、順番に見張りのものを置いて眠りにつくはずであろう。
しかも森の中で生活をしてきているのだから、聴覚、及び夜の視覚にも優れているはず。こちらの気配はおそらくずっと前から気づかれている。しかも山の中であれだけ盛大な「ぎゃあああ」という悲鳴をあげ、山の静けさを一気に打ち破ってしまったのだ。そのこだまはここまでも届いていたであろう。であれば、護衛のものが戻ってきたら、早めにこちらの正体を明かして身の潔白を証明してから近づいていく方が得策ではなかろうか。
「あちらは夜間の警備の者の合図で何人か起きてこちらの様子を伺っている様子です。獣ではなく人間が近づいてきていることには薄々気づいているようです。」
護衛からの報告を得て、決心がついた。こちらが人間だと分かっているなら話しかけてみよう。
「鹿族の皆様、夜分に申し訳ございません。お地蔵様に託けを入れさせていただいた者でございます。どうしてもお尋ねしたい儀がございまして参りました。お話を聞いてはもらえませんでしょうか。」
かなこの声は厳かに森に響いた。
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