第28話虚構のゆうべ
その
これには
「お姉!」
「……行くよ」
この機に乗じ、いち早く姉の手を
かの子どもの
と言うよりは、先の
どちらにせよ、己の敗色を
現状は、逃げの一手こそが最善策だ。
「あ!? 待て! この──ッ」
少女の暴言を背中に聞きながら、狭い屋内を駆けた私たちは、裏口に設けられた簡素な木製ドアを蹴破った。
その間際、例の子どもが再び大声を張った。
先頃と同じく、非常なる
「待って! お姉ちゃん!!」
しかしながら、どうにも言葉の意味が不可解で、ただでさえ慌ただしい頭内を、
単に、目上に対する呼称と考えれば
合点は行くのだけど、なぜだか無視のできない感懐が、私の胸中をチクリと
“お姉ちゃん”
この不審を追求する間もなく、街の中心に
「それからどうしたの? どうやって───」
「ん。 もうね、大冒険って感じで」
「おぉ? 詳しく聴きたい」
「や、ごめん。 そんなに大層なものじゃないかも」
私が身を乗り出すと、対座のほのっちは
その模様から、生来の野次馬根性を反省し、屈託のない談笑に戻る。
「そういうの、よく考えることあるよ」
「え?」
「見知らぬ世界で大冒険。 ほら、RPGみたいな感じの」
私が言うと、かの親友はマグカップを口につけたまま眉根をひん曲げ、珍しく皮肉っぽい表情で応じた。
「あぁ……、でも実際に遭うとね? そんな目に。
「我が家っていうか、
「そうそう。 変わらないことは良いことだよ。 ホントにねぇ」
私には、ここ数日間の記憶がない。
何をしていたのか、何を思っていたのか、わが事ながらまったく判然としないのである。
驚いたことに、同様の症状を訴える者が、日本全国、
これはもしや悪魔の仕業かと危惧していたところ、かの親友の口から、それらしい辻褄を得た。
何でも、
「それにしても……」と、ソファの一角に立て掛けられた物珍しい品に、
「“羽”ちゃん、痛くない? 大丈夫?」
「おう」
姿形こそ違え、いつもの調子でぶっきらぼうに応じた彼は、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます