第27話猛獣たちの夜半
ともかく、これに備えようと身構える私の襟首を、ぞんざいに掴み取る手があった。
それはすぐに馬鹿力を発揮して、この身を後ろへ引き寄せた。
喉が詰まる思いで頭上を
強敵を前にして、筆舌に尽くし
「お姉……っ、いや。 違う!」
「おらぁッ!!!」
「とぉ!!!」
並々ならぬ勢威を着た少女の殺到に
続けて
まかり間違っても、長尺刀の
現下の気運は、明らかに少女の方を向いている。
「このガキ……!」
「ちょっと!?」
こうなると、普通なら勝ち目の有無を早々に悟りそうなものであるが、うちの姉はその限りでない。
引き時をすっかりと
「この……ッ!」
「野郎ぁッ!!」
力任せに振るわれる長尺刀を、
こちらも、腕力に物を言わせた拝み打ちだ。
鍛鉄のそれに近しい刃鳴りが、断続的に
ただでさえ窮屈なロビー内を、
ともあれ、相身互いに咬み合う猛獣が二名。
この隙に、そそくさと逃げ出すのが正解だろうと判じつつも、良心がこれを
ならば現状を打破しようと試みるも、金棒を執る手がどうしても
その
もとい、あんな戦法では、決して長持ちの見込めるものでは無い。
ひとたび振り抜いたかと思えば、
ああいった打ち方を多用していては、じきに筋肉が悲鳴を上げる。
「
思った通り、両刃を斜め上方へ
酷使にともない、とうとう筋が千切れたか、あるいは肩骨の座りを損なったか。
もはや急戦は無謀だ。
対する少女は、
そのまま
「待って!!」
もはや、どうしたものかと
急いで金棒を振るい、二名の間に割って入ろうとした矢先のことである。
「見つけたぁ! やっと見つけた!!」
現下の気運をひっくり返す幸運の呼び声が、カンカンと響き渡った。
見ると、すっかり崩れ落ちた宿屋の玄関口に、愛らしい子どもの姿があった。
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