第4話サヨナラと旅

「えっと、誰?」


「おっと、申し訳ありません、私の名前は”優族”サティーと呼びます。」

「びっくりしましたよ、背中を切られた状態で尚、歩いてここまで来たのですから。」


嘘だろ、俺は切られて倒れていたはずだ。


「覚えていないかも知れませんね、とても意識は朦朧としていましたし。」


「.......。」


「どうしましたか?」


「いや、すいません。」

「姫と敵陣はどうなった?」


「姫はいま休憩中ですよ。」

「敵陣は姫の好戦で一時撤退しました。」


「よかったよ。」


「街の被害は過去最大級のものであり、死者も出てしまいました。」

「国王も倒されてしまい、国をまとめる人物はもう姫しかいません。」

「貴方は姫の下僕ですよね?」


「あぁ、そうだが」


「僕はですね、下僕というのは少し言い過ぎなのではないかと思います。」

「僕からしたら下僕ではなく使い魔みたいな感覚です、付き人ですよ。」


「なんで優族のお前がそんな事を思う。」


「僕も昔は下族で王国の人の下僕でしたから。」

「その人はとても優しい人でした、下僕の僕にも関わらず 休みもくれた、ご飯だってくれた、一緒に笑った。」

「その分、僕は期待に応えようと頑張った。」

「例えどんなことであろうと。」

「さぁ、ここのどこに下僕と呼ばれそうな要素がありますか?」


「無いね、それはもう家族だよ。」


「でも、僕はその人を守れなかった。」

「昔は国同士が戦う時代でした、それ故、下僕は愛された分、主人の為命を燃やして戦った。」

「だが、僕は油断してしまった、敵に切られる時、身代わりになったのは、主人でした。」

「その時は自害を考えたくらい申し訳なかった。」

「主人は死んでしまった。」

「主人を失った僕は平民になりました。」

「今は丁度平民から優族に上がったところです。」

「おっと、話が長すぎましたね。」

「姫がお待ちですよ。」


「色々すまんな、タメになったよ。」


「嬉しい所存です。」


俺は守るべき人の為走った。


勢いよくドアを開けた。


「人の部屋に入るときは、ノックして入るという常識が貴方にはないのかしらァ?##」


「すいません。」


「無事で良かったわね。」

「私に言うことは?」


「期待に添える事が出来なくすまない、油断してたよ。」


「そうね、分かってるじゃない 戦場で油断は許されないのよ、気を引き締めなさい、貴方は私の下僕で、傍にいないと貴方は無意味な存在なんだからね。」


「あぁ、了解したよ。」


「それでこれからどうするつもりだ?」


「国を出るのよ。」


「民を置いていくつもりか?」


「狙われてるのはね 私 」


「ここからでれば民が襲われることは無いのよ、万が一の為にもう遠征兵は返して来ているわ。」

「貴方は私についてくるの?戻るなら今よ。」


「俺はお前の下僕だどこまでもついて行くよ。」


「なんか、言い方が気持ち悪いわね。」


「おい、俺は名言を放ったつもりだぞ。」


「何が名言よ、ついて行きます、で充分でしょうが!」


前に言った冷静な姫って言う言葉は撤回してくれ。


「いいわ、来なさい。そして私に命を捧げる気でいなさいよね!」


「契約か。いいとも行こうじゃねぇか。」


お前が望む終わりの無い旅に付き合ってやろうじゃねぇか。


─翌日─

「ムホホ。いってらっしゃいませ姫様。」


「ありがとう叔父様、叔母様、民のみんな!行ってきます!!!」


こうして、俺らは終わりのない、対して目標もない、自由な旅に出ることになった。

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異世界に行ったら彼女がドSな姫君になっていたなんて認めん! またっつ〜 @matattu

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