第2話 下僕と初任務と名前

これを聞いた姫は

「まだあなたに語る資格すら無いわ。」


「ですよねー」


「当たり前よ、下僕が姫に名前を問うなんて失敬もいいところだわ」


「あーそう言えば自分の名前は....」


「貴方の名前なんて聞きたくないわ、下僕から名乗られたところでなにになるのかしら?」


失礼極まりない奴だ。傲慢なこいつが姫だと?しかも沙音似だと俺は認めん。心の内で俺はそう叫んだ。


「あーそう言えば、役割を伝えて無かったわね、貴方の初任務は私の護衛よ。」


「へ?」


「私を守るのよ!私は明日エリス王国を出て森へ行こうと思っているの。」


「は、はぁ」


「だから命をかけてでも私を守りなさい。死んでも置いてくからね!」


酷いやつだ骨一つ持ち帰ってくれないとは、それにしても死ぬ前提とは冷酷極まりない奴だ。


─翌日─


「それにしても不愉快ね。」


「どういうことだ?」


「貴方を見るとなにか頭痛がするのよ、記憶を誰かに強引に入れられてるかのようなね、そしてあなたに似た誰かにまた会えるよって言われた感じ。」


「その記憶戻り次第俺に伝えてくれないか?」


「なんでよ。」


「頼む!その記憶が俺がここで生きていくための鍵になるはずなんだ!」


「そこまでいうならいいわよ、伝えてあげる。」


熱意が伝わってくれたのかしらないがあっさりと了承が出た。


「でも願いを叶えてあげるのはこれだけだからね!普段は下僕なんだから普通は叶えてくれないわよ?」


「はいはい、感謝してますよ。」


と、駄弁っている間に森へと辿り着いた。


「なんだここ、暗いぞ。」


「なによ?ここからは貴方が私を守るのよ?」


無理ゲーすぎる暗い、音がしないこんなので敵が出るのか?守るにも守れんぞ。


「そのー、灯とか無いですかねぇ...」


「無いわよ!そんなの!とっとと行きましょ!」


準備が悪い奴だ、これじゃ遠足を手ぶらで楽しみに来たも同然だ。

何事もなく森の中心に着いた。

「ここで一休みよ、貴方に休みはないわ見張りなさい。」


「へいへい」


ガサガサ


「へ?」


ガサガサ、ガサガサ


「これはどう見ても敵の予感だ」


グルルルルル


「どうやら敵が現れたらしい。」

「あのー姫、武器持ってないですかね?」

「はぁ?あんた準備してないの?」

手ぶらで来たやつがなにを言う。

「しょうがないわねこれを貸してあげるわ。」


姫はなにか呪を唱え初め、驚くことに剣を召喚した。

「これでも、使いなさい!10秒だけ待ってあげる。」


タイムアタックとは鬼畜な姫だ。俺は剣を獣に向かって振り下ろした。


─キュイイイイン スパーン─

「へ?」


振り下ろした剣の波動は森の奥まで届きいろいろ破壊してしまった。勿論獣も真っ二つだ。


「やるじゃない、貴方にこんな魔力があるなんて下族にしたのは失敗だったかしら?でも森を吹っ飛ばしたのはマイナス点ね。」


「魔力ってなんだ?」


「貴方、本当に何も知らないのね、説明してあげるこの星には魔力が循環しているのよ、魔力は自然とほぼ変わらないわ。」


「貴方が使った風」

「風に有利な焔」

「焔に有利な水」


「王族はこの全ての属性を使いこなすことが出来るのよ。」


凄くドヤ顔だ。


「それにしても驚いたわ、貴方の魔力 王族にも匹敵するわよ。どこで手に入れた訳?」


「知らん、記憶が無いうちはな。」


「ふーん。」


話している間に森を抜けた。

「ここは....」

俺が落ちて、こいつと出会った丘だ。

「やっぱりここね、城下町を見渡せてそよ風も気持ちいいのよ。」


「一言いいか?」


「なによ?私の気に障ったら殴るからね。」


渋々伝えた。

「もっと楽な道あるぞ。」

姫は赤面した。

「んー...うるさい!」

バシッ

「痛っ!何しやがる!」


「あら、伝えたはずよ気に障ったら殴るって。」


自分の失敗を認めないのか....お偉いやつだ。


「まぁ、いいわ 報酬を与えてあげる。」


「ゴミを渡すなら勘弁だぞ。」


「報酬は私の名前を教えてあげる。」


なんて軽い報酬だ、嫌な気はしないが。


「私の名前は エリス ウィル サヤ」


名前まで似ている。


「貴方の名前を名乗りなさい。」


「俺の名前は新城 律希だ。」


「変わった名前ねどうやらこの国の出身ではないようね。」

「あっ、また頭痛が」


─また会えるよ─

─そうだね─

─じゃあまた後で─

─待ってるよ─


「何これ、貴方と私じゃない。」


話を聞くにこれは地球滅亡一時間前のカプセル内のビデオ通話だ。


「まぁ詳しい話は後日してあげる。」


「雲行きが悪くなってきたな。」


急ぎ足で帰り道に向かった。

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