Wherever you are
Wherever you are
これでもか、というほど晴れた夏の昼過ぎ。空のどこを探しても雲が見当たらない。雲は一体どこに隠れているのだろうか。僕は、どこまでも続く青空を見上げながら、浜辺のベンチに腰を下ろす。明穂はというと、サンダルを脱ぎ捨て、ロングスカートを膝までたくし上げて、寄せては返す波と一緒に遊んでいる。否、遊ばれている。太陽の光がキラキラと反射した翡翠色の海と、明穂の透き通るような真っ白な肌のコントラストが美しい。
「あっくん、水が冷たくて気持ちがいいよ。」
僕に向かって言うその笑顔は、こんな真夏の太陽なんかより、ずっとずっと眩しくてずっとずっと明るい。ペタペタと裸足で歩いた明穂の足跡は、数秒後には沖に拐われていってしまう。できるだけ多くの足跡を残そうと必死になっている姿が愛おしくてたまらない。彼女の行動、仕草、言葉、表情、声色、匂い、全ての瞬間を僕は記憶していたいと思う。瞬きするたびに、脳内でシャッターを切っている。それを全部保存したって足りないくらい、僕は明穂のことを愛している。だから僕は、今夜、明穂にプロポーズする。
どこにでもいそうな感じのぱっとしない平凡な僕の生活に、光を与えてくれた明穂。彼女を好きになってから、僕の毎日は虹色だ。この青空がどこまでも続いているように、僕の明梨に対する気持ちは生涯変わることはないだろう。明穂の笑顔はずっとそばで見ていたいし、悲しい時だって一緒にいて、涙を拭ってあげたい。明穂がもたらしてくれた幸せを、今度は僕が明穂に返してあげたい。
「あっくん、大好きだよ。」
突然、砂浜から明穂が僕に向かって叫んだ。甘く澄んだ綺麗な声が僕の耳に響いた時、僕も立ち上がって叫んだ。
「明穂、結婚しよう。」
彼女に負けない凛とした強い声で。今夜言おうと思って大事にとっておいた言葉だったのに。気づいた時にはもう、僕から溢れていた。
「あっくん、聞こえないよ、もう一回。」
意地悪そうに笑う、明穂のスカートがひらりと夏風に吹かれた。
一部引用
ONE OK ROCK. (2010). Wherever you are. Aer-born
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます