I love you

 ぼくは毎年彼に年賀状を出していたけれど、返事が返ってきた事はない。いつも零時ピッタリに、ショートメッセージがくるだけだ。


『あけおめ。ことよろ。』


 文面はコピペしたように、いつも同じで。一斉送信してるのかな? と毎年ちょっと寂しくなる。


『明けましておめでとう。今年もよろしく』


 そう返して、ぼくたちのニューイヤーは終わるのだった。


 だけど今年は、ショートメールさえこなかった。寝てるのかな。それとも、もうショートメールさえ送るのが面倒なのかな。ぼくは二時過ぎまでまんじりともせずに、彼からのニューイヤーメールを待ったけど、ついに着メロがなる事はなかった。


 朝起きて、ポストから年賀状を取り出す。ぼくはマメに出していたから、このデジタル時代だけど、毎年五十通くらいは年賀状がくる。部屋に入って、出し忘れた人は居ないかと、一通一通丁寧に読んでいく。


 今年は戌年だったから、愛犬の写真をプリントした人と、テッパンで家族写真をプリントした人が多かった。でも中に一通、異質な色彩を見付けて手を止める。『明けましておめでとう』も『Happy New Year』の文字もない、虹の写真の絵葉書。ひっくり返して差出人を確認し、急に鼓動が速くなった。彼の名前が、たった二文字だけ、書かれていた。


 ニューイヤーメールがなかったのは、この年賀状を出したから? 改めてぼくは、何も書かれていない裏面をひっくり返す。そして、目を凝らした。白いインクで、何か小さくメッセージ。それが読み取れた時、ぼくは身体中が心臓になったように騒ぎ出すのを感じていた。


『I』『love』『you』。信じられなくて何度も確かめたけど、確かに白いインクは、その三つの単語を紡いでいるのだった。ぼくは反射的に携帯を掴んで、彼の番号を表示させていた。『I love you』。ぼくも彼に、そう伝えたい。新しい年と、愛が始まる。


End.


↓年賀状画像

http://id16.fm-p.jp/data/331/nijiiro366/pub/98.jpg

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