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「廉人って和食好きだよね」

「たぶん母の影響かな。小さい時に英家はなぶさけで引き取られたんだけど、父…学校長はほとんど家に居なかったから」

「その頃から忙しくしてたんだね」

「学校行事も、いつも母は来てくれたけど、父は来たことなかったな」

「あのさ、これ…」


言いながら、ポケットに入れていたネックレスを廉人に差し出す。


「あ、それ俺のだ。昨日から探してたんだよ。拾ってくれたの?」

「今日学校に行ってみたら砂桐さんたちが片付けをしていて、ステージの近くで拾ったんだって」

「え…」


口が乾く。ジュースを一口飲むと、真っ直ぐに廉人を見つめる。


「それ、いつ落としたの?僕たちの場所はステージから離れていたよね」

「最初に会場の様子を見に行った時だと思う。ステージの設営をしていたから、少しだけ手伝ったんだ」

「学校長先生の事なんだけどさ、あれは確かに事故だった。でも全部偶然だけで出来た事故なのかな」

「…どういう事?」

「昨日も言った通り、蜂って匂いに敏感なんだ。あの時たくさんの人がいたけど、コロンの…花の香りのするものを身に付けていたのは学校長だけだった。それにジュースも持っていた」


カラン。先程持ってきたオレンジジュースの氷が音を立てる。


「それだけじゃない。蜂は黒い色にも反応するらしいけど、先生方含め、僕たちはみんな白のコックコートと帽子を被っていた。学校長だけが暗い色の服を着ていた。あの中で1番蜂に狙われやすい要素を備えていた」

「偶然が重なる事もあるよ」

「僕もそう思う。じゃあさ、あの蜂はどこから出てきたんだろう」

「……」

「僕さ、昨日の蜂を見付けたんだ。会場のすぐ外で死んでた。その体に何か付いていたんだけど、あれはオブラートじゃないかと思うんだ」

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