14
「ゆきやんおつかれ。これ落とし物。最初来た時ステージの下で発見したんだけど、たぶんれんれんのだと思うから渡しといて」
「廉人の?」
受け取るとそれは、ローマ字でRentoと名前が入っている銀のプレートのネックレスだった。
前に廉人が身に付けているのを見た事がある。
「これ、ステージの所に落ちてたの?」
「うん。昨日バタバタしてたからその時に落ちたんじゃない?」
僕たちは昨日、ステージに近付いてはいない。
むしろその反対側で騒動を見ていた。
不意に、何かが頭を過った。
突然現れた蜂。学校長のコロン。オブラート。
あれは良くない偶然が重なった不運な事故だった。偶然…?
「ちょっと廉人に聞いてみるよ。掃除おつかれ様。また明日ね」
校門へ向かって歩きながら、携帯で廉人の番号を呼び出す。
さっき思い浮かんだもの。僕の気のせいならいい。そう、きっと変に考えすぎた妄想だ。
「あ、廉人。今何してた?このあと時間あるなら一緒にご飯でも食べに行かない?」
電車がホームへ入ってくる。ちょうど帰宅ラッシュの時間なのか、大勢の人が飲み込まれるように車内に収まっていく。
その様子をぼんやりと駅前のファミレスの窓から眺めていると、何度目かの来客のチャイムが鳴った。
「雪夜、おまたせ」
春らしい爽やかな色のコートを着た廉人が、僕の向かいに腰掛ける。
「もう何か頼んだ?」
「まだだよ。やっぱりご飯は揃ってから食べたいし。それより急に呼び出してごめん。いろいろやる事あったよね…。大丈夫だった?」
「朝から顧問弁護士とか言う人が来て、たくさん書類を見せられながら説明されたけど、正直1回聞いたくらいじゃ全部わからなかった」
「なんだか大変そう。おつかれ様。思ったよりも元気そうで良かった」
その後メニューを開いてあれこれ話しながら、それぞれハンバーグ定食と鯖の味噌煮定食を注文した。
食後にドリンクバーから持ってきたオレンジジュースをストローで吸い上げる。
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