13
「これは、蜂?」
落ちていたのは蜂の死骸だった。
場所からして、恐らく昨日の蜂だろう。
あの後開いている窓から外に出て力尽きたのか、それとも誰かに退治されて捨てられたのか。
「あれ?よく見たら足に何か付いてる」
昨日は離れていた為に全然気付かなかったが、近くで見ると蜂の足や口の周りに、何か透明なゼリー状のものが付いていた。
こういう花の蜜もあるのか、どこを飛んで付いたのか。蜂にも花にも詳しくはないが、好奇心が沸いてそっと触れてみる。
「匂いはしない。それにこの感触、何かに似てるような…。あ、オブラート?」
もしオブラートだとして、何でそんなものが付いているのかと思ったが、会場のテーブルには様々な料理が並べられていた。
飛び回っているうちにどこかで付いたのかもしれない。
「あれ、ゆきやん。どうしたのそんなところで」
「砂桐さん」
頭上からの声に顔を向けると、窓から砂桐さんが覗いていた。
「あー、なんか落ち着かなくて学校に来ちゃった。砂桐さんは?」
「片付けだよ。昨日はみんなそのまま帰っちゃったからね。でも料理は勿体ないから、ラップしたりお皿に入れて残ってた人に出来るだけ持ち帰ってもらったんだよ」
「そうだったんだ。僕もそのままにしちゃってた。手伝うよ」
玄関に回り会場へ入ると、何人かの学生と先生たちが片付けをしている最中だった。
「ステージも片付けちゃっていいの?」
「ほとんどは4月の歓迎パーティーで使うから、そこはモップ掛けるくらいで大丈夫」
「わかった」
掃除ロッカーからモップを取ってくると、まずはステージ上の物を端に避ける。
花に見立てた段ボールを持ち上げた時、何かの汚れが付いているのが目に入った。
「食材入れてたものをそのまま使ったのかな」
特に気にする事もなく、全体にモップを掛けていく。それが終わると、壊れてしまった装飾を取ったり直したりし、ゴミ捨てや窓拭きまで終わる頃には夕方になっていた。
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