12

騒動の後、救急車と警察が来た。

僕たちも、状況を確認したいと事情聴取を受ける事になり、レセプションのリハーサルどころではなくなってしまった。


蜂の毒は短時間で症状が現れるらしく、学校長はすぐに来た救急車で運ばれたが、蜂毒アレルギーのアナフィラキシーショックで亡くなったそうだ。


「あの人はさ、前に山に行った時に蜂に刺された事があるんだ」

「だからあんなに恐がってたんだ…。蜂の毒は免疫がつかないって言うもんね…」


蜂は匂いに敏感な生き物で、花の香り以外にも香水や柔軟剤、ジュースにも寄っていく事があると言う。


黒色にも反応を示すらしいから、あの時近くにいた暗い色のスーツを着ていた学校長を警戒したのかもしれない。


「蜂がどこから出てきたのかはわからないけど、警察は不運な事故だろうって」

「うん…」

「コロンの香りも原因の1つじゃないかって。でも学校長に香りもののイメージないなあ」

「普段は料理するのに影響が出るからってつけないんだけど…。ただ今日は…母さんの命日だから。母さんがそういうの好きで、毎年この日だけはコレクションの中から選んでつけてるんだ」

「そっか。今でも大切に想ってるんだね」

「そうだね…」




事件の翌日。

この日は臨時休講となったが、僕はなんとなく家に居たくなくて学校へ来ていた。

今回の件は事故と見做されたのか、今日はもう警察官の姿は見当たらない。


さすがにこんな時に登校してくる人は少なく、いるのは昨日の料理の後片付けの残りや、何かの仕込みや準備をしていた人たちだろう。


特に当てもなく校舎の周りを歩いていると、会場となっていたホールの外へ来ていた。


「昨日、ここで…」


近付いて行くと、何かを蹴ったような感覚がして足元を見遣る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る