10
全ての準備が整い1年生たちが全員会場に揃うと、監督として立っていた先生が、壁際に整列するようにと指示を出し、そのまま外へ出ていった。
何十人もの学生たちが白のコックコート姿で帽子も被り並んだ姿は、まだまだ未熟な身ではあるが、なかなか壮観に思えた。
複数の足音が近付き、緊張が高まる。
扉が開くと、僕たちと同じくコックコートを着た先生方が続々と入ってくる。
教務部のスタッフはもう少し後に来るらしい。
1番最後に、チャコールグレイのスーツに身を包んだ学校長がゆっくりと入ってきて、ステージに上がると会場をぐるりと見渡す。
「…ねえ廉人、今日って学校長も参加だったんだね」
「このイベントには毎年参加しているらしい。そもそもこのレセプションを提案したのがあの人だって前に言ってたよ」
学校長がマイクへ向かうと、ざわついていた空気が締まる。
「1年生の諸君、ここまでの準備、本当によく頑張ったと思う。今日はまだリハーサルという事になっているから、そう固くならずに、肩の力を抜いて楽しんでほしい」
簡単な挨拶が終わると、他の先生が学校長の元へジュースの入ったコップを持っていく。
それを見て僕たちも乾杯の用意をする。
「先生たちもジュースなんだね」
「一応授業の一環だからね。雪夜は烏龍茶でよかった?」
「取りあえずだから何でもいいよ。ありがと」
それぞれがコップに飲み物を注いでいる中、近くにいた学生の話し声が聞こえた。
「あれって虫?」
「え?どこどこ」
「なんかあっちの方飛んでる黒っぽいの…」
その視線の先を追うと
「蜂だ!」
誰かの鋭い声が響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます