3

「あー、やっぱ俺絵苦手だわ!」

「大津って、なかなかの画伯だったのね。これは前衛的」

「は?ゼンエイテキってどういう意味だよ」

「それくらい、辞書引いて調べなさい、自分で。英くんは?」

「一応描いてみたけど…」


廉人の絵は、下手ではない。ある程度特徴も捉えていて、どれがどの先生かもわかるのだが。


「…普通だな」

「普通が1番コメントしづらいのね」

「なんだろう、あともう少し何かが足りないような…」

「…大津より全然上手い」

「…みんな、無理にコメントしなくてもいいよ。雪夜の方はどんな感じ?」

「あ、僕のはこれ」


手元の下絵を、みんなが見える位置に差し出す。


「いいじゃん!」

「これならなぞりやすそうね」

「…わかりやすくて愛嬌もある」

「実は自分でも結構上手く描けたと思ったんだよね」

「そこ謙遜しないのかよ!」

「俺も、雪夜のがいいと思うよ」


思いがけず満場一致で僕の絵が採用される事になった。


「メニューの方向性も決まったし、運営班に申請する材料のリストアップをしておくよ」

「あ、それは僕がやるよ。一応班長だし」

「大丈夫。班長こそ仕事多いでしょ。これくらいは任せて」

「ありがとう。じゃあお任せする」


今日は試作までする予定だったが、下絵をどうするかで思ったよりも時間を取っていたのと、肝心のオブラートもなかった為、取りあえずは解散となった。


「廉人、この後予定ある?」

「特にないけど、何かするの?」

「うん。“自主練”と言う名の夕御飯を作っていこうかなって思って」

「なるほど。それなら俺も便乗しようかな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る