第12話 空虚な目的意識





意味がない





この言葉が口癖になったのはいつからだったか

ケイシュウ=ミヅチは考える。



連合国と帝国の領土争いに毛ほどの興味も感じない。

ただの幼い子供の陣地合戦のように感じる。


だから、このスパイ捜索の仕事もどうにも乗り気になれない。




意味がない・・・か



ふと、昔、

師匠に脛を蹴られて・・・立てなかった時の映像が頭にちらつく・・・





だが・・・今はまだ

リジェットさんに従っておく必要がある。

俺の目的のために、自分の利益のために、それは必要なことなんだ。





$$$





パーティー会場の外に出る。

持ち場を離れるのはまずいが、外の空気を吸いたくなった。




男とぶつかる。


「おっと大丈夫か?悪いな急いでたもので」


髭の男は爽やかに去っていく。




・・・あの脛スネ・・・前に飯屋で見かけたことがあったな

ずいぶんお酒を飲みながら。「俺が祖国を救う」とかどうのこうの言ってたっけ


・・・まぁいいか


ん、あんな外見だったか?

微かな記憶を頼りに思い出す。

顔覚えるのホント苦手だ、こっちの人みんな同じ顔に見えるし



変装してる?



ケイシュウは奴を追う。




茂みの中から男の悲鳴、追いついた時にはもう遅かった。





$$$






シスナと俺はリジェットさんの自走車モービルで屋敷を後にする。


リジェット「今回はまんまと出し抜かれましたね」

シスナ「無傷で差し押さえて、こっち側のスパイを炙り出す予定だったのに」




シスナ「ケイシュウ、あんたさっきから静かだね、まさかとは思うけど、死体見て気分悪くなったとか?」

ケイシュウ「なわけないだろ」




ケイシュウは思い出す。

生前、飯屋でにこやかに「俺が祖国を救う」と話すあの男のことを


あの男は気づくべきだったのだ。

ちっぽけな個人にそんなことが出来るわけがないと

予想すべきだった。

そんな甘言に乗せられた末路を




今日の気分は優れなかった。



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