それが彼女との出会いだった

 仲間と共に山に仕掛けた罠の様子を見に行くと、子狐がかかっていた。

「毛皮を取れないことはない」

 仲間は小刀を取り出すが、必死にもがく子狐はいかにも哀れだ。

「まだ子供だ。見逃そう」

 不満そうな仲間は、それでも刃物を収めてくれた。

 罠を外す間も暴れる子狐は、自由になるとあっという間に山奥へ消えた。

「……もう罠にかかるなよ」


 後悔はしていないが、それから仲間は共に山へ入ってくれなくなった。

 一人での猟は厳しく、食べていくのがやっとだ。

 嫁をもらう余裕もないと溜息を吐いていたある日、見知らぬ若い娘が家を訪ねてきた。

 何の用かと尋ねると、頬を染める。

「あなたに、会いに来ました」

 外は、晴れているのに雨が降っていた。



※297字

※Twitter300字SS参加作品。第55回お題「あう」

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