涙花草

 あなたの涙に相応しい花が咲きます。


 怪しげな謳い文句でチェーンの雑貨店で売られていたのは、掌サイズの植木鉢だった。小さな葉に囲まれ、固く閉じた蕾が一つ。

 嘘だろうけどインテリアに良いかと思い、一鉢買った。

 けれど、造花ではない手触りなのに一向に開花しない。


 そんなある日、くしゃみや涙が止まらなくなり、目も痒くなった。マスクに頼る日々の始まりだ。

「あれ、咲いてる」

 出がけに、見たことのない鮮やかな黄の花弁に気付いた。

 どんな香りがするのだろう。

 マスクを外して鼻を近付けた。すると花がくしゃみをするように揺れ、黄色い粉がぱっと舞う。

 それから、くしゃみや鼻水、目の痒みがひどくなったのは言うまでもない。最悪。


※297字

※Twitter300字SS参加作品。第51回お題「涙」

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