波間の読者
彼女はいつも、夕方、波打ち際で流木に腰掛けていた。
遠い波間から、あの子は何をしているのだろう、とわたしはいつも眺めていた。
ある日、気まぐれな大きな波が、わたしを波打ち際に押し流し、彼女と邂逅した。
そして、彼女は波打ち際で本を読んでいたと知った。
海の中にはない紙。人魚は持たない文字。
彼女から文字の読み方を教わったら、彼女が読んでいた本を読んでみたくなった。
紙の本は海の中に持っていけないから、と彼女が渡してくれたのは、つるつるとした板だった。
文字が浮かんでは消える不思議な板で、暗い夜でも本を読める。
最近は、彼女が書いたという小説を楽しんでいる。
感想を届けるため、今日も波に紛れて彼女に会いに行く。
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