何かがはじまる?

「いっけない、もうこんな時間!」

 一口かじっただけのパンを片手に、美紀は飛び出していった。短距離のエースである妹が全力で走れば、電車にぎりぎり間に合う。

「美紀の寝坊癖は治りそうにないね」

 呆れ顔の母に私は言った。近くの高校に通う私の方がいつも先に起きている。

 DNAまで一致する一卵性双生児だというのに、美紀と私の性格は全然違っていた。そのせいなのか、見間違えられることは滅多にない。

「いってきます」

 私は徒歩通学だ。走らなくても間に合う。

 それなのに学校近くの角で出会い頭にぶつかったのは、向こうが走ってきたせいだ。

「え? 君、さっきもぶつかったよね?」

 真新しい校章を付けている彼は目を丸くして、そう言った。

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