傘のある風景
この国では傘を買う人はいない。傘は道端に生えている。突然の雨でも人々は冷静に、道端に生えている傘を抜く。
雨がやむと、傘を広げたまま地面に突き刺す。雲が去り太陽が顔を出して濡れた傘が乾いてくると、傘はゆるりと胞子を吐き出す。霞のように大量に撒かれた胞子は風に乗り、あるいは通りすがりの人にひっついて遠くまで運ばれ、地面に降り立つと、小さな傘が芽を出すのだ。
また雨が降ってきた。土砂降りに見舞われた女の子は、しかし小さな傘しか見つけられない。大きな傘は抜かれたあとだ。
困り顔の女の子の頭上に傘がかざされる。二人でも十分な大きさだ。
女の子と男の子は肩を寄せ合い雨の中を歩いていく。
この国ではよくある光景だ。
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