覆面の下のココロ

 私は現代のニッポンを生きる忍者。狙った相手から情報を引き出すために親密になり、必要な情報を芋蔓式に手に入れる。


 今もある人物に狙いを定め、チャットルームに誘い込み、日々親しくしている最中だ。

 しかし最近やや困惑気味だ。標的が私とオフ会をしたいというのである。ちょっと親しくなりすぎて彼女は私に恋をしているのだ。

 標的との直接接触はNGをモットーとする私だが、彼女の熱心な誘いを断れきれなかった。

 オフ会でも覆面をしていれば問題なかろう。

 逃げ出すことを期待していたが、彼女は驚いたものの逃げ出さなかった。

 逢瀬の終わり、笑顔を見たいとせがまれた。

 私は忍者。標的に素顔を見られるなど以ての外。しかし私の手は――。

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