コロシ屋の流儀

 昼間の私は平凡なサラリーマン。しかし夜、いきつけの居酒屋でほろ酔いになるとコロシの仕事が舞い込んでくる。

 あの娘、コロシてやってくれ。

 大将はカウンターの端で一人酒のOLをそっと指す。時々来てああやってやけ酒さ。先週からは毎日だ、と大将。

 大ジョッキが私の前に置かれる。すべて飲み干した時、私はコロシ屋に変わる。

 店を出たOLの後をつけ、人気のない道で声をかける。

 こんばんは。私は君が抱える憂えの感情をコロす者。私にかかれば、明日からすっきり爽やかな気持ちになること請け合いだ。

 しかし彼女は、コロさないで、この感情がなければ戦えないの、と首を振る。

 私は千鳥足で、彼女を家まで送った。

 彼女の明日に勝利あれ。

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