エピソード10『決戦前夜!』

決戦前夜!その1

 5月1日の一件とは別に、様々な勢力が動いていたようだが――その行動がネット上に拡散される事はなかったと言う。

一体、何があったのかは誰にも分からないが、一部マスコミはスクープ用に写真を確保しようと動いていたらしい。

【芸能事務所の圧力でもないのに】

【あの写真が手に入らないとは】

【一体、何がどうなっている?】

 実際に写真を入手できたのかは定かではないが――つぶやきサイトでは行動の失敗を示す書き込みが存在している。

これが偽物かどうかは不明だが、写真も添付されているのに加えて――合成や加工が難しい写真を使って実況している人物もいたようだ。

それを踏まえると、情報が単純にガセやまとめサイトの釣りとは考えにくかった。



 5月2日、午前8時の報道バラエティーで早速だがスクープが報道される。

そのスクープとは週刊誌サイドを出し抜くような物――と思われていたが、実際には違っていたと言う。

『最初のニュースは、新たなジャンルを開拓するようなニュースです』

 男性キャスターの切り出しの後、映像で出てきたのは何とARゲームだった。

ARゲームと言っても様々なジャンルがあるのだが、映像に出てきたのはAR対戦格闘だったのは――見栄え的な問題だろうか?

その他にも様々なジャンルが出てきたが、ARパルクールやリズムゲームは出てこない。

映像の使用許可が出なかっただけという理由ではないと思うが――どんなやりとりがあったのだろうか?

『ARゲームで新たなジャンルを開拓する為に、ARゲームのプレイヤーを芸能人化――』

 キャスターが何かを言おうとしていたのだが、その後は言わせないと言わんばかりにチャンネルを切り替えた。

切り替えた先では美肌グッズの宣伝をする通販番組が放送されている。

「まるで、ゲーム実況者や動画投稿者の芸能人化と同じような流れ――それをあの大手芸能事務所がやると言う事は――」

 リモコンを片手にテレビのチャンネルを切り替えたのは、少し眠そうな目をしていたビスマルクである。

彼女は自宅で暇そうにテレビを見ていた。その目的は、情報収集がネットに偏っても大変な事になるのでテレビを見ていたとも言えるが。

「ここにきて、ARゲームがテレビで特集される割合が唐突に増えている。一体、何が起きているのか」

 コーヒーを飲みつつ、ビスマルクは再びテレビのチャンネルを変更し、株式関係の番組に変えていたのである。

ビスマルクは株を買っている訳ではないのだが、今回のARゲームが唐突に特集される一件は――何かがおかしい。

『VRゲーム、ソーシャルゲームに変わるジャンルとしても注目をされ始めたのが――』

 その予想は的中した。午前の市場が始まる前なので、株価は昨日の数値だが、その平均株価は――。

「25000円? ARゲームバブルでは一時期3万円もあったけど――」

 バブルの時期には3万円という平均株価で、ある意味でも考えられない額だった。

それが2年前位に下落し、19000円辺りまで落ちる。しばらくして、2万円に回復する時期もあったが――。



 午前9時、アンテナショップにも一連のニュースが真実であるのか確かめる為にマスコミが押しかけると言う店舗もあったが、落ち着いている場所が多い。

「開店前だと言うのに――空気を読まない連中だ」

 身長163、ぱっつんの黒髪セミショートの女性がマスコミを皮肉っている。

彼女の名は磯風(いそかぜ)――服装はあきつ丸(まる)等が着ていた物と同じガーディアンの提督服だ。

磯風は周囲のマスコミに対し、営業妨害をしているという事で退去命令を出そうとしていたのだが、それを遮るかのように何者かが姿を現す。

「実況者や動画投稿者を芸能人化した事で、BL勢力の拡大を許した芸能事務所を許すな!」

「芸能事務所は賠償金を支払え!」

「あのプロデューサーは吐き気を催す邪悪――芸能界から追放――」

 磯風をさえぎるように姿を見せたのは、あからさまにマッチポンプを誘発しようとしている一般人だ。

彼らはアイドル投資家や反超有名アイドル勢力等に迷惑メールとして捨てられるようなメッセージを真に受け、何も知らずにコンテンツを炎上させようと言う気配さえ見せる。

まるで、超有名アイドルの芸能事務所に操られたと言ってもいいようなモブと断言出来るだろう。



 しかし、その抗議の声を瞬時にして遮ったのは――予想外とも言える人物だった。

「まさか、コンビニに立ち寄ろうとしたら――こういう場面に遭遇するなんて」

 金髪デカリボン、明らかにセーラー服テイストなアーマーを装備した二丁拳銃使い――島風朱音(しまかぜ・あかね)だった。

下の名前が朱音なのは、ある種の偶然だったのだが――それを逆に利用し、今では超有名アイドルハンターと言う異名も持っている。

もちろん、もう一人の朱音は大和朱音(やまと・あかね)の事であるが、これを知ったのはごく最近らしい。

大和と遭遇する事も何度かあっても、彼女が大和に名前を尋ねる事はなかったのである。

「私は――超有名アイドルに対して、改めて宣戦布告するわ!」

 彼女の放った二丁拳銃の銃弾が次々とアイドル投資家が雇ったと思われていたモブに命中――。

本来であればARゲームのビームや弾丸などが人間に命中するはずがない。まして、ARアーマーも装着していない生身の人間に。

そこで、やっぱりというか想定外の事が起こった。何と、弾丸が命中した人間は消滅してしまったのだ。

「やはり――あの人間はARアバター技術を応用した物か」

 磯風の方も目の前の人間が消滅した事に関して、何も違和感を感じなかった。

悲鳴を上げたのは、ARゲームの事情を知らないマスコミやレポーター位である。

その後、ARアバターを操っていた人物を特定しようとガーディアンが出動する事になったが、特定するには至っていない。



 これは、ほんの始まりでしか過ぎなかった。一部勢力が、ARゲームの存在そのものを邪魔だと思い始めたのである。

しかも、超有名アイドルが売れなくなったり、マスコミに叩かれるようになったのはARゲームの仕業だと八つ当たり的な事を言い出す事務所まで現れた。

やはり――コンテンツがある限り、炎上マーケティングが繰り返されてしまうのか?

こうしたデモ活動の動画を拡散して、何かに利用しようとしていた勢力もいたのだが――予想外の対策で一網打尽にされた。

「まさか、別勢力が用意したトラップで一網打尽にされるとは――何と足の引っ張り合いをしているのか」

 そのやりとりをタイムラインで確認していたのは、大和である。

やりとりを要約すると、デモ活動の映像がテレビ番組の映像を勝手にアップロードしていると通報され、動画を拡散しようとした勢力が著作権法違反で逮捕されるという光景だ。

当然だが、デモ活動はテレビで使われた訳ではない。芸能事務所側がARゲームプレイヤーを陥れる為に用意した罠で間違いない。

しかし、デモ活動の動画を拡散仕様としたのはある男性超有名アイドルファンクラブの会員であり、芸能事務所としてはサクラに利用していた人間を予想外の形で切り捨てた事になる。

「これによって、障害を排除できたのは大きい。向こうのランカー王が開催されるかどうかは、運営次第という事か」

 この様子を別のエリアで見ていたのは、飛龍丸(ひりゅうまる)だった。

彼女も、大和とほぼ同じ意見である。芸能事務所側を追いつめれば、今回の事件を生み出した人物を発見しやすくなるからである。

この程度で追いつめられると――思っていない人物もいるようだが。



 あの時のニュースが伝えた物、それの衝撃度合いは――特定の勢力には劇薬に近い威力だった。

『最初のニュースは、新たなジャンルを開拓するようなニュースです』

『ARゲームで新たなジャンルを開拓する為に、ARゲームのプレイヤーを芸能人化。新たな収益スタイルを確立すると言う発表がありました』

『動画投稿サイトではARゲームを扱った動画が増えており、それに芸能事務所側が一定の収益を得る事が出来ると判断し、投資を行う模様です』

『一方で、このような動きは過去にあった実況者や動画投稿者を芸能人化して収益を上げようとしう事例があり、一部では反発があると予想されています』

『芸能事務所側は、今回の提案を皮切りにしてコンテンツの輸出を更に広げようとしている模様です――』

 ビスマルクだけでなく、アイオワも途中でテレビのチャンネルを変えていた。

それ程にニュースの内容は衝撃的と言える物だったと言えるかもしれない。ガーディアンや運営サイドにとっては、寝耳に水かもしれないだろう。

おそらく、ARゲームがクローズド環境を求めているというネットの噂は――こうした事件が起きる事を懸念していた可能性もある。

しかし、それは本当に良い事なのだろうか? ゲーム内容をプレイせずにウィキやまとめサイト等の情報で判断し、つまらないと断言するような人物を信用出来るのか?

そうした人種を信じた事で炎上するのが、俗にいう炎上マーケティングと言う可能性もある。

「このニュースは、明らかに何かを狙っている可能性がある。もしかすると――」

 ビスマルクはふと考える。超有名アイドル商法を永遠に存在させる為に他のコンテンツを平気でかませ犬とするような炎上マーケティング――。

こうした商法を否定する勢力がいる事も、事実ではある。しかし、この商法がなければ発見できなかった者があるのも、また事実なのだ。



 午前10時、ニュースの詳細を調査し、対応の必要ありと判断したのはガーディアンだった。

彼女たちの目的はARゲームの正常化。つまり、一連の芸能事務所が起こそうとしているプランは炎上マーケティングと判断し――阻止しようとしている。

ガーディアンの秘密基地は複数あるのだが、その詳細は一部勢力等に悟られないようにする為に秘密とされていた。

とあるビルにテナントで借りている某所、そこには秘密基地という言葉の割に内部は事務所っぽい雰囲気と言うギャップがある。

事務所と言う割には着替え用のスペースとか、シャワールームと言う物も常設されていた。

近場にスパでもあれば、そちらで何とかなりそうだが――現実は非情であると言うべきか。

「ここは相変わらずだな――」

 身長170センチ、グリーンの髪色にセミロング、Cカップ――しかし、着ている服は某バーチャルアイドルのコスプレである。

この姿を見て、一部のガーディアンは敵の侵入と勘違いするのだが、彼女の顔を見て敵ではないと確信した。

「ビスマルク――どういう事?」

 ビスマルクの姿を見て驚いたのは、あきつ丸(まる)だった。

彼女の方も別の出撃指示が出た事もあって、そちらに出撃しようとしたが――ビスマルクがやって来たのである。

「こちらも聞きたい事がある。CD大賞の買収をした芸能事務所についてだ」

 ビスマルクがあきつ丸に聞きたい事、それはCD大賞の買収についてだった。

それも去年あたりの話であり、タイムリーな話題でもない。それを今更聞いてどうするのか――と。



 事務所の応接間で話すのも――と言う事で、あきつ丸はビスマルクを事務所の内部へと案内する。

内部と言っても最深部へ案内する訳にはいかないので、オフィスを思わせるような会議室の方へと案内した。

「芸能事務所Aではなく、Cを聞きたいと言うのか?」

 あきつ丸の方も若干困惑気味だ。近くにいたガーディアンのメンバーも驚きの声をあげる為、相当珍しいと思われているらしい。

何故かと言うと、芸能事務所Aの方が一連の事件で話題となっており、そちらの方が需要があると思っていたからである。

「日本の芸能界を牛耳る事務所はAとBとCの3箇所しかない。Bの勢いは有名グループが解散してからは落ち込んでいると聞く」

「ビスマルクは、2.5次元アイドル等には興味がないのか? 向こうも人気が上昇していると聞いている」

「2.5次元に興味がないと言うと嘘になるが――障害となっているのは芸能事務所CとAの暴走だ。反超有名アイドルも同じ事を言うだろう」

「こちらとしても――2.5次元アイドルが何かを仕掛けるだろうと予測しているが、そちらは無視するのか?」

 2人の会話は続く。あきつ丸の言う2.5次元とは2次元と3次元の間であり、アニメから飛び出した声優ユニットやアニメや小説作品等の舞台化が該当する。

特撮は2.5次元と呼ばれず、むしろ3次元でまとめられている印象もあるが――あきつ丸は、2.5次元の方も少し心配をしているようであった。

しかし、今のビスマルクには全く眼中にないと言うよりも――優先して芸能事務所Cを潰したいと言う気持ちがあるのかもしれない。

「芸能事務所にカチコミ(物理)のような展開を起こせば、それこそマスコミに芸能事務所Aの株を上げる材料を提供するだけ。少しは落ち着いたら?」

 あきつ丸は別のメンバーが持ってきたコーヒーの入ったプラスチック製のタンブラーを手渡す。

コーヒーの方はホットコーヒーらしく、ビスマルクがこぼしそうになる一幕も。

その辺りはタンブラーに特殊なふたがしてあったので、テーブルに落としてもこぼれる事はなかった。

「――さすがに言いすぎたわね。下手にネタを提供すれば、今度こそARゲームは芸能事務所に買収される」

 ビスマルクは、この事を懸念していた人物がいるのか――とコーヒーを飲みながら考える。

おそらく、運営本部は把握していても問題がないのではないか、とも考えたが、ホームページには特にお知らせが更新されている形跡がない。

比叡(ひえい)アスカはどうか?

彼女のチートプレイヤーを排除しようと言う気持ちは、誰よりも強いだろう。

それこそ、ホビーアニメではあるあるな『ルールを守って、正しくプレイ』を体現するような――。



 午前11時、芸能事務所がネット上の情報が誤報である事を説明する記者会見を緊急に開く。

この様子はテレビ局でも報道される結果となったが、唯一放送していない放送局があり、そこでは通販番組が放送されていた。

テレビ中継では、放送局が違う、コメンテーターが違う、コメントを入れる個所が違う等――それ以外では、ほぼ同じと言ってもいい。

これでは、単純に視聴率稼ぎの為に番組を差し替えただけと言う印象をネット上で受けるのは間違いないだろう。

【このレベルの記者会見では、時間稼ぎと言うのが有力だな】

【何の時間稼ぎだ?】

【それは分からない。証拠を消す為とか、あるいは――】

【自分達が無実であると証明したいがためにネタを集めている可能性もある】

【今更、無罪だと言うのか? 自分達がやった事を棚に上げて】

【それは記者会見を行っている芸能事務所だけではない】

【自分だけ逃げようという算段なのか、それとも別の理由か?】

【あるいは、自分だけ爆弾発言をして、他の勢力の仕業と罪のなすりつけも――】

 つぶやきサイトのタイムラインを見て、若干呆れかえっているのは意外な人物である。

それは、この流れをARバイザーで確認し――芸能事務所の社員と名乗るサクラを撃破している飛龍丸(ひりゅうまる)だった。

彼女は西新井から谷塚までの大規模移動をしていたのだが、下手に気づかれるのもアレだったので、電車移動で谷塚駅までやってきたのである。

さすがに西新井からメイド服とARメットは――と思われたが、さすがに不審者と思われるのも問題があったので、電車に乗るときだけはバイザーメットを装着しなかった。

そして、谷塚駅に到着して改札口を通過後、ARメットを装着して駅を出た所で謎の集団が襲ってきたのだ。

「あいた口がふさがらないとは――よく言った物ね。これでは、パワードミュージックも買収されるのは時間の問題――」

 飛龍丸は理由があってパワードミュージックのアカウントを所持していない。厳密には正規方法におけるアカウントであるが――。

ロケテスト当時の物を持っているかもしれないが、バージョンによっては引継ぎが出来ない可能性もある。

ただし、ゲスト扱いの特別アカウントをあるタイミングで受け取っている為、アカウントなしプレイヤーとは扱われないようだが。

しばらくして、飛龍丸が上空を見ると、無人ドローンと思わしき物が飛んでいた。

テレビ局のマーカーが確認出来るが偽装の可能性がある。もしかすると、炎上狙いだろうか?

あれだけのサクラを投入し、作戦は失敗した以上――芸能事務所側も黙ってはいないだろう。



 10分後、記者会見は続くのだが――別のテレビ局が会見中継を打ち切る。

『会見の途中ですが、たった今、速報が入りましたのでお伝えします』

 この状況には他局の方も出し抜かれたと思い、中継を打ち切ろうともしたが――ほとんどは続行した。

視聴率で少し下がったとしても、完全中継をした方が視聴者をくぎ付けに出来るとテレビ局は思ったのだろう。

しかし、つぶやきサイト上では通販番組を放送していたテレビ局を『平常運転』として賞賛するようなコメントが多い。

それを打ち破れるニュースであれば、テレビ局としては都合がよかったと言えるが――。

『女性アイドルグループKが、本日付で活動を休止する事を発表しました。現在、芸能事務所側が確認を行っている模様です』

 そのニュースは、現在会見を行っている所属事務所のアイドルグループに関係する物だった。

何と、活動休止をするのだろ言う。速報と言う事で、詳細な情報は入り次第と濁される結果になったが。

【グループKが解散か?】

【活動休止だけだろう。事務所が事実確認中だと言う事は、まとめサイトの記事を鵜呑みにしたか?】

【グループKって、2つなかったか?】

【2つはないだろう。芸能事務所としても風評被害防止の観点で、似たようなパターンのグループ名は立ち上げないはず】

【じゃあ、今のは誤報?】

【誤報だったら速報はしない。それも、記者会見と言う視聴率が取れそうな中継を途中で中断してまで――】

 つぶやきサイト上では、今回の速報に関しての反応は二分しているような状態だ。

一体、何が起こったと言うのか? 仮にまとめサイトがソースだとしたら、そのサイトがアクセス殺到でパンクするはずだ。

そうしたつぶやきもない以上、ソースがまとめサイトと言う事はないらしいが――それでも、チャンネル争い的な部分では負けている。

「一体、何が起きようとしているのか――アイドルグループKは、そちらに関連するニュースは大きく報道されていないはずだが」

「大きく報道されていないからこそ、裏で政治家が口利きをしているのではないか、と疑われる」

「そう言う勢力を撒く為に活動休止と言うニュースを発表した。違うのか?」

「しかし、何処のアイドルグループも地下アイドルも一連の超有名アイドル商法等の風評被害を受けて、何処も壊滅的なダメージを受けている話だ」

 アンテナショップのスタッフも、一連のニュースを見て不安に思う個所がある。

ARゲーム用のモニターにはARゲーム関連のニュースも流れるが、一般のニュース番組で扱う物も流れる事が稀にあった。

アイドル関連のニュースは流れないが、別のテレビで民放のニュースが流れている関係で知ったという事らしい。



 更に5分後、記者会見も終わりに近づき――質疑応答に入っていた。

結論としてはVRゲームの一つで超有名アイドルタイアップイベントを開催した際、買収があった等――独占禁止法に関係する物である。

しかし、芸能事務所としては警察からの逮捕状が出ていないことを理由に無実であると説明、それがエンドレスで続けられていた。

強制捜査の連絡が入ったのは事実だが、それを何処からの物か説明しなかった事が事態を混乱させていると言ってもいい。

仮に強制捜査の指示をしたのがガーディアンだった場合、彼らからの追及は避けられないだろう。

別の組織だったとしても――組織が代わっただけで似たような対応をとる必要性があるだろうか?

『それでは、質疑応答に入ります。質問のある方は――』

 質疑応答に入った途端、即座に手を上げる人物がいた。彼は声を出す事無く、無言で挙手をしたのだが――。

その挙手をした人物の方をマスコミ等が確かめようとした途端、その顔を見て驚きの声を上げる人物もいた。

「私の名は西雲響(にしぐも・ひびき)――」

 その人物とは、西雲響(にしぐも・ひびき)だったのである。一体、どうやって記者会見に潜り込んだのか?

今は、その事を追求するよりも――マスコミは彼がどのような質問をするのか、そちらの方を注目していた。

『では、最初の質問はあなたにします。こちらとしても、下手に週刊誌の記者が――っと、失礼』

 司会進行の男性が何かを滑らせるような発言をするのだが、それは他のマスコミも聞き流してしまった。

それほど、西雲がこの場に現れた事に衝撃を受けたのかもしれない。

西雲の方は真剣な表情をしているのだが、表情はARバイザーの影響で確認が出来ない為、マスコミは何かを疑っている。

『しかし、あなたも他人の事は言えないと思えますが――偽装記者会見やアカシックレコードの書きかえ――』

 司会進行の人物は、西雲が名前を名乗ってから質問内容を言わないので、先制パンチを仕掛けるかのように発言をする。

しかし、それでも西雲が表情を変える事はない。どちらにしても、ARバイザーに隠れて顔は見えないのだが。

『それは都合の良い事を――我々を出しぬけると思ったら、大間違いだと言う事です。ガーディアンを甘く見てると、痛い目を見ますよ』

 西雲が司会進行の人物からアカシックレコードの話が出た所で、スマホ端末を取り出したのである。

それは通話状態になっており、ある人物に繋がっている状態でもあった。盗聴器とは違うのだが、マスコミの方も驚きの声を上げる人物が――。

そのスマホからの声を聞いて驚いたのは、司会進行である。

本来の芸能事務所社長が驚くような様子はなく、それに加えて表情の変化すら見せない事に違和感を感じていた。

「ジャミング!」

 西雲が一言叫ぶと、左腕に隠していたユニットからジャミング音波が発生し――会見に出席しているはずの芸能事務所社長の姿がノイズで正常に表示されなくなったのである。

表示されなくなったというよりは、人物にノイズが混じるような状態になっていた。まるで、アバターが表示バグでノイズだらけになっているような――。

『なるほど――。アカシックレコードの単語が出てきたのも、納得と言う事か』

 ジャミングに関してはARゲームのシステムにしか干渉しない物であり、そこで社長の姿が消えたという事は――。

記者たちはARバイザーを装着していないのだが、記者会見会場で配られたメガネをかける事が指示されている。

つまり――目の前にいた社長がARアバターと言う事を、誰も疑おうとはしなかったのだ。



 午前11時15分、記者会見会場に入りこんだ西雲響(にしぐも・ひびき)は、ある人物と接触をしていた。

それは記者会見の進行役をしていた男性である。その人物は、記者会見をしている芸能事務所とは別の関係者だった。

『なるほど――。アカシックレコードの単語が出てきたのも、納得と言う事か』

 ジャミングに関してはARゲームのシステムにしか干渉しない物であり、記者会見をしていた社長の姿が消えた。

目の前にいた社長は、ARアバターだったのである。芸能事務所自体が税逃れのダミー会社と言う訳ではないのだが、周囲の記者達も困惑をしていた。

「この記者会見自体がでっちあげだったのか?」

「視聴率稼ぎで、別の芸能事務所を持ち上げるのが目的なのですか?」

「噂によると、芸能事務所Aは政治への介入をしている噂も――」

「井の頭公園の――」

「2020年の東京の国際スポーツ大会で芸能事務所Aのアイドルをタイアップさせるのは――」

「日本の国政に超有名アイドルメンバーを――」

「他のコンテンツ潰しは、全て超有名アイドルを――」

「第4の壁の先で行われている事例を真似したというのは――」

 ここにきて、記者たちが不満を爆発させたかのように質問をぶつける。これがガーディアンの目的とは全く違うのだが、別の意味でも想定外だ。

この状況に便乗して芸能事務所を潰すのも簡単かもしれないが――それは今回の計画を考えた人物の本来の目的ではない。

西雲としては、この状況で便乗すればARゲームにとっては今までの不祥事やスキャンダルなども上書き出来るかもしれないが――。

それをやってしまうと、やっている事がネットのまとめサイト等と同じである。あくまでも、そうした勢力とは別の考えで動かなくてはいけない。

「芸能事務所と国会が裏でつながっているとも――」

「超有名アイドルコンテンツ以外を規制する法案を提出すると言う話があるようですが――」

 この状況はしばらく収まりそうにない。

それ程、彼らがやってきた事は人心掌握や恐怖支配等の単語では片づけられないような――。



 午前11時20分、記者会見の場がカオスと化している中、ある人物の声が周囲に響く事になった。

『シャラップ!』

 スマホの主は記者達に対して黙るように叫ぶ。まだ、自分達の質問はしていない事に加え、答えももらっていない。

そんな中で割り込みを仕掛けようと言うのは、まるで恋人発覚や不倫騒動を無理やり聞き出そうとするようなマスコミの姿勢と変わらないのである。

それを踏まえると、現在も通販番組を放送しているテレビ局だけが神対応をしているようにも思えてくる。

ネット上では、そのテレビ局を名指しは避けるのだが『神対応』をたたえていた。

「これ以上は無理だ――あきつ丸、こちらも最後のカードを切る」

 西雲はスマホの主であるあきつ丸(まる)に対し、何かの考えを伝え、遂にはARバイザーのシステムを切った。

システムを切ったと同時に、ARバイザーが開き、西雲の素顔が徐々に見え始めている。それは黒髪のセミショートヘアの女性だった。

目の色は銀なのだが、これはARシステムの影響による物であり、カラーコンタクトではない。それに、彼女の顔を見て誰かと分かって名指しする記者は皆無である。

それだけ、彼女の正体は完全に秘匿されていた。まるで、機械仕掛けの神が降臨したかのような――そんな様子を感じさせる。

結局、マスコミが彼女の正体に言及する事は出来ず、中継映像を見たコメンテーターも困惑していた。

ネット上では、憶測こそは飛んでいるようだが――正体を特定するに至っていない。

『馬鹿な――お前は行方不明扱いだったはず!?』

 司会の人物は、西雲の正体を見て驚いているようでもあった。西雲の声は男性だった事もあり、彼にとっても予想外だったのだろう。

しかし、周囲の記者が誰なのか分からない以上、芸能人と言う訳ではないようだ。

芸能人と言っても、テレビで活動している芸能人だけを指す訳ではない。

動画サイトに動画を投稿する投降者、歌い手、実況者なども芸能人というカテゴリーにしようという動きは存在する。

「こちらとしても、行方不明を偽装し――芸能事務所の行っている不正を発見するのには、苦労した物よ」

 彼女の目は、司会進行の人物の方を向いている。マスコミなど眼中にはない。

『では、改めてこちらから一つ質問をしよう。芸能事務所が行ったグレーゾーンスレスレのゴリ押しの数々――何故、独占禁止法が適用されないのか?』

 あきつ丸(まる)は手元にある書類をチェックしつつ、何を話すべきなのかを選んでいた。

ちなみに、彼女がいる場所はガーディアンの秘密基地であり、隣にはビスマルクもいる。

ビスマルクの方は声を出してしまうとややこしくなるという関係上、現状では静かにしているようだ。

その中であきつ丸はビスマルクに読む書類を指さされるのだが、それを敢えてスルーして書類の一つに手を付けた。

『独占禁止法が何かを論じたりすると、この場のマスコミ等にも影響を及ぼすだろう。それゆえに要点だけを伝える』

 あきつ丸は長々と語るよりも、要点だけを伝えた方が分かりやすいと判断した。

1から10を説明するよりも効率が良いという事で――マスコミの方も、ある程度は分かっているような表情だが。

『芸能事務所が行っているネット炎上、違法ガジェットバイヤー事件、プレイヤーの襲撃事件――それらは、明らかに超有名アイドルが日本を支配しているかのような幻想を抱かせる』

 要点を掴んでいるかどうかは不明としても、あきつ丸の一言は司会進行の人物を動揺させるには効果が抜群らしい。

そして、遂にはARガジェットのガトリングガンを呼び出し、それを西雲に向ける。

「その引き金を引けば――芸能事務所は反対勢力に対して血の制裁を与えると言う話が拡散し、最終的には日本から3次元アイドルの全てが輸出禁止となるだろう」

『そうなるとは限らないぞ。こちらには大物政治家の大半を金で買収している。いざとなれば超有名アイドルの方が正義だと証明してくれる』 

 ガトリングガンを向けられても、表情一つ変えない西雲に対し、司会進行の人物は徹底的に煽りまくる。

まるで、炎上ブログや悪目立ちしようと言う一般つぶやきユーザーの様に――。

「結局、そうなるのか。アカシックレコードは予言書ではないという話だったが――」

 西雲は展開しようと思えばARガジェットを展開する事は出来る。

相手がARガジェットを展開しているという事は、この記者会見会場その物がARゲームのフィールドになっているからだ。

既に一部の記者は避難しており、テレビカメラマンなどの一部が残る程度になっている状況だが――。

『お前達に忠告しておく。既にARガーディアンは、お前達と芸能事務所、それにアイドルグループに関してブラックリスト入りを決めた。独占禁止法という法律さえも守らないとは――コンテンツ流通を含め、語るに落ちたという事か』

 その後、あきつ丸は通話を切る。そして、ビスマルクにある物を指示するのだが――それを芸能事務所側は知らない。

通話を切った後、西雲の方もため息交じりに呆れかえっていた。

このような状況になった事に対し、何故に止める事は出来なかったのか――と。

「超有名アイドルはご都合主義で地球を救えるような存在ではない。WEB小説にあるような魔法的なガジェットもなければ、この世界には賢者の石もない――そう言う事だと、何故分からないのか」

 西雲は再びARメットを展開するが、今度はボイスチェンジャーを使っていないので女性声である。

その方が都合がよいという訳ではなく、既に正体を明かしてしまったという事もあるようだが。



 午前11時25分、会見の中継は民放を含めたすべてのテレビ局が終了と判断して打ち切りを決めた。

理由は色々とあるようだが、西雲が正体を見せた辺りから映像が表示されなくなったのも理由の一つだろう。

放送事故と言う訳ではないようだが――そう判断されてもおかしくはないだろうか。

過去には音声だけが放送されると言うテレビ中継も存在し、その際はテレビカメラがNGだったという経緯が存在する。

それに似たような状態ではあったのは間違いない。

しかし、ネット上では放送事故とみる過去の事例を知らないユーザーがクレームのメールや電話をした事で打ち切りを決めたようだ。

通販番組を放送していたテレビ局は11時30分からニュースを流すのだが、今は通販番組のままである。

「結局、何を訴えようとしていたのか――」

 今回の記者会見に対し、ガーディアンのメンバーも疑問に思っていた。

やはり一部勢力のプロパガンダに利用されてしまったのか?



 午前11時30分には通販番組を放送していたテレビ局でもニュースが放送されたのだが――。

『最初のニュースです。アイドルグループEが解散を発表しました。ネット炎上の事件にメンバーが関係したとして、未成年のメンバーが逮捕されたのが原因と――』

 かなり具体的に報道されていて、別の意味でも驚きだったのだが――アイドルグループEが解散と言うニュースをトップで伝えた。

その一方で、他の放送局は人気VRゲームに関係したスマホ事故を報道している。一体、この差は何なのか?

ARゲーム専門のニュースチャンネルでは、さすがに今回の件は取り扱っていない。さすがに、重要ではないニュースと判断して切り捨てたのか?

「芸能事務所側も事の重大さに焦り出しているか」

 このニュースをガーディアンの秘密基地で視聴していたビスマルクが、芸能事務所の不手際を指摘する。

国営放送では更に別のニュースを報道していたので、おそらくは伝達ミスと言う可能性が高い。

それだけ、西雲が起こした一連の流れは――芸能事務所の独占禁止法違反を告発するには都合がよかったのかもしれない。

「問題は、この後か――」

 あきつ丸は、一連のニュース報道を見て何か怪しいとも感じていた。ネット上では特にニュースを実況している様子が見られないからだ。

これは単純にあきつ丸がチェックしているタイムラインだけの話と思われているが、更に限定的なコミュニティで実況をされていると、さすがのガーディアンでもチェックは出来ない。

果たして、彼女の不安は的中してしまうのか?



 午前11時35分、アイドルグループ解散のニュースを受けて――そのグループを応援していたファンが暴走した。

何と、風評被害や二次災害と言わんばかりに次々と他ジャンルの虚構記事をアップしていき、ネット炎上を狙っていたのである。

その目的は超有名アイドル以外のコンテンツでは日本経済が闇に沈むと思い知らせる為――それを世界中へ配信し、海外ファンからの融資を取り付けようとしたのだろう。

ネットを炎上させようと言う超有名アイドルファンや特定アイドルファンもネットを炎上させ、ARゲームの失墜を図ろうとしている。

それに加え、超有名アイドルが出演したテレビ番組の違法動画をアップロードしようとしたのがARゲーム勢に責任転嫁しようとも考えていた勢力がいた。

しかし、その考えは明石零(あかし・ぜろ)に事前察知されており、あっさりと全てが崩壊した。

その詳細情報を語れば、一種のネタバレではなく明らかな犯罪行為に転用される危険性がある為――詳細は省く。

これは、アカシックレコード以前にハッキングと言うカテゴリーに当たるかもしれない。



 その一方で、ニュースの一つは現実になってしまったのである。

よりによって――パワードミュージックに関する事だった。これは、当然のことだが公式も発表していない案件であり――。

【パワードミュージックは、元々はリズムゲーム要素がなかった。リズムゲーム要素を追加する事で新規ファンを集めようとしていた】

 初期の計画書と題する物がネット上に拡散し、その中身を見たネットユーザーは驚きの声を上げた。

【パワードミュージックは確かにバトル的な要素が没になった雰囲気があったが、こういう事だったのか?】

【確かに、あの作品をARFPSに当てはめる事は出来ないが――】

【単純にパルクール要素だけでは、他の作品の影に隠れると言う可能性があったのだろうか】

【だからと言って、リズムゲームの要素をARパルクールに入れる必要性はあったのか?】

【走るだけであれば、アスリート系ARゲームも開発中と言う話を聞いている。ジャンル的に迷走していた可能性は高い】

【しかし、あれだけのトップランカーに近い人材を発掘した事は非常に大きい。些細なネット炎上記事に反応する事自体が――】

 ネット上では賛否両論であり、こちらの方も迷走していると断言出来るだろう。

確かにARパルクールは走ると言うのがメインであり、ターゲットを撃破する、目的のアイテムを回収する、相手プレイヤーより先にゴールへ辿り着く等と言った物はゲームのクリア目標にすぎない。

最終的にはゲームをクリアしてしまえば飽きてくる――それはゲームと言うカテゴリーで展開している以上は把握しているだろう。

クリアが難しいガジェット等を仕掛けたり、課金要素を強化していくというのは――本当にユーザーが求めていた物なのか?

ソーシャルゲームで一時期問題視されたコンプガチャ、今も問題視されるRMTやチートを初めとした不正行為――それを根絶できないのか?

そもそも、ARゲームはどのような経緯で生まれたのか?

古代ARゲームのくだりは超有名アイドル投資家がアフィリエイトまとめサイト等へ誘導する為の罠らしいのは分かっている。

しかし、本来のARゲームはどの方向に向けられるべきなのか?

「ARゲームの理想形――それこそ、夢物語か」

 天津風(あまつかぜ)いのり、彼女がチートハンターとしてチート狩りを行っている裏事情――それは超有名アイドル投資家の存在でもあった。

草加市内を含め埼玉県内ではジャパニーズマフィアは完全駆逐されており、その代わりとして存在していたのが超有名アイドル投資家である。

彼らの目的は、超有名アイドルのCDやグッズを大量に購入して芸能事務所に金を回す――こういう言い方をすると、何か巨悪の存在を感じさせるが、その通りとしか言いようがない。

彼女は一連のつぶやきサイトのタイムラインを見て、強行手段に出たガーディアンや反超有名アイドル勢力を責める事は出来ないと思った。

逆に向こうを非難すれば、自分が今までやってきたチート狩りも似たような物だ。

いくらチートが違法な物であり、運営側から賞金をもらっている事情があったとしても。

「ARゲームに、専用ガジェットが必要な理由――」

 天津風は別の問題を考えた。それぞれのジャンルでARガジェットは共通でも、一部で専用ガジェットが必要な理由を。

一説によれば――そのアイディアと類似するヒーローが出現したというのもあるのだが、天津風はそれではないと考えている。

「やっぱり、アカシックレコードを調べる方が先になるのか」

 彼女は、再びチート狩りの為に動き出した。ズルをしてまでゲームをクリアしたとしても、そこに本当の達成感があるのだろうか?

最速クリアして、ゲームソフトを売り、またゲームを買う――こうしたサイクルを否定はしないのだが、本当にそれが正しいスタイルなのか?

ネットを炎上させる為にネタバレを拡散し、ゲームの売り上げを下げようとするようなネット炎上勢力、非BL作品をBL作品にするフジョシ勢力――。

こうしたコンテンツ流通を妨害するような勢力を――いつしか、天津風はチート勢力と同様にハンティングの対象にしていった。



 それから一週間、超有名アイドルは次々と解散を発表していった。

その理由は会社の不祥事、メンバーの契約違反、それ以外にもスタッフによるセクハラ等――解散理由は、ありきたりな物だった。

しかし、そうした本当の理由をマスコミは報道せず、予想外な理由を報道していたのだ。

通販番組を放送している民放テレビ局と地方局は含まれていない。それに加え、CSの専門のチャンネルも。

『ARゲームコンテンツが海外進出する為、超有名アイドルをかませ犬にしようとしている。その手始めに超有名アイドルを強制的に解散させている』

 どう考えても、八つ当たりとネット上で炎上しそうな理由である。

これを国営放送局と通販番組を放送している民放以外が報道しているのだ。どう考えても、芸能事務所が他のコンテンツも道連れと言わんばかりの暴走である。

これにしびれを切らせてアイドル投資家を襲撃すれば、明らかにネット炎上をさせると言わんばかり――。

これを脅迫と受け取る勢力は沈黙をする事を決定し、これを挑戦状と受け取る勢力は反撃に出る為の作戦を考える。

「まだ分からないのか――それが、マッチポンプである事に」

 このニュースを見て、警戒をしているのはビスマルクだった。

芸能事務所の狙いは自分達がコンテンツ流通の勝ち組になる事なのは、ネット上のタイムラインやまとめサイト等でも予測できる。

しかし、超有名アイドル商法の極みとも言える賢者の石――それを使ってまで、芸能事務所は自分達がこの世界の神とでも名乗るつもりなのか?

そこまでやろうとすれば明らかに海外から孤立するのは目に見えているのだが――。


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