バドラー

隣乃 清鷹

第1話 小麦お兄さん

「ねぇ、まだ着かないの~」


軽快なジャズが波浪家の車内を和ませていたが


小学生のメイには雑音でしかなかった


一人だけ渋った顔を膨らませた


「もう~ちょいだから、チョコでも食べてなさいな」


母が幼いわが子の機嫌をとった



ジャズのBGMがちょっとだけ落ち着き始めた


*           *           *


ぶーぶー言いながらもなんとか目的地の体育館にたどり着いた


本日は大会会場へ、バドミントンの試合が行われる日

父の友人が大会の選手で出るということで観戦に来たのだ



ずっと拘束されていた窮屈な車内から解放されたメイは勢いよく会場へ駈け出して行った


「僕はウルトラマンランドに行きたいんだー!」


メイはそう言い放って駐車場を駈け出して行った


道路沿いを走っていると車道から何やら反発音がした

メイは気づかない


その音は大型車の車輪から弾かれた石で、メイの顔めがけて飛んできたものだった


「ピンッッ...!!」

気づいたらメイの目の前には見覚えのない十字状の糸があった



「あぶないね~あんちゃん、どこからきたのー?」


少し小麦色に焼けたお兄さんがラケットで顔を守ってくれていた



そこへ息を切らしながら波浪家の父母が駆け付けた



「すみません...!うちの子を気にかけていただきありがとうございました...」


父がすかさず頭を下げる



「あーご両親でしたか。良かった。一人で車道沿いを幼い子が走っていたので、なんか心配で追いかけてたんですよ笑、それでは私は戻りますね!」


そう言って小麦色のお兄さんは来た道を引き返していった

広場で基礎打ちをしていたみたいだった(※基礎打ち…2人ペアとなりシャトルを打ち合うウォーミングアップのようなもの)



「ダメだろう飛び出して行っちゃ」

父が心配そうに告げる


「だってずっと座ってたんだもん、なんでバドミントンなの?ウルトラマンランドに僕いきたいの」


メイが駄々をこね始めた



「んなもん、これから行くところにいっぱいいるぞ、みんなすごい速いビーム出すからびびるんじゃねぇぞ~」


ウルトラマンは一人しかいないじゃないか!と不満を垂らしながら一行は会場へ向かった






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バドラー 隣乃 清鷹 @tonari_kiyotaka

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