第11話 宗教を戦争に巻き込まないで!え?教団が戦争を起こした?そうですか、はい

「ナーシャ!ナーシャ!俺にも人の心がわかったぞ!」

突然出て行ったかと思えば何を急に?

この男が人の心?人じゃないこいつにわかるわけがない!

でも一応・・・

「聞いてあげるわ」

万が一は、あるのかもしれない

「人の心は人に移る!だからランス君の心は死んでないんだ!」

どんな人間も改心すると言うけど、この男も人間だったのかしら

「つまりお前の心は殺意だよ!俺を殺す、それがお前の存在意義であり心だ!」

この男に期待した私がバカだったやはりこいつは何もわかっていない、人の心なんてわかるわけがなかった

「あなた、何もわかってないのね。列席者の皆さんはもう広間で談話してます、出て行って下さい」

っ!?

苦しい!?痛い!?

お腹を殴られた!

言い返せないから暴力、こいつはやっぱり人じゃない・・・

殴られた方はたまったモノではないし、忘れないものだ

しかし殴った方は

「なるほど、それではどのような対策を?」

(あー、帰りたい、ナーシャを抱きたい)

この有様

「あぁ、避妊禁止令を」

「おっと失礼、少々席を外します」

ジジィの自慢話に付き合うのもここまでだ

ダッチワイフにでも話してろクソが

「お久しぶりですな」

アルベルト公・・・!!

厄介なジジィに絡まれたな

「えぇ、お久しぶりです」

適当な笑顔で誤魔化しきれるかは、微妙だ

「昨日、裏庭で襲われたと聞きましたが、ご無事そうで何よりですぞ」

なぜこうも突かれたくないところをガサガサと!

「えぇ、なんとか」

このジジィ、戦争が起こった後には敵として使えるからな、今排除出来ないのが実にメンドくさい

「反乱を起こした彼は優秀で誠実と聞いておりましたが」

もうやめてくれ!リスクを避ける為ならやっぱ殺しておくか・・・?

「何が起こるかわかりませんね、彼の事は信じていたのですが」

なんかこの世界に来てから嘘ばっかついてる気がする。むしろ嘘しかついてない

「では、少々館内を散策して参ります」

フハハ、ここには見られて困る事など何も無いわ!!

「えぇ、どうぞごゆっくり」

あ、アナスタシアァん・・・

いいや、余計な事言ったらここら一帯全部焼け野原にしてやろう

元から死んでるような身だ、処刑など・・・

ちょっとしか怖くない!

「フィリップ卿、少々よろしいですかな?」

あぁ!?またジジィだよ!

列席者ジジィしかいねーのか!

「はい、なんでしょう?」

「ここでは・・・別室で2人で話しましょう」

なんだなんだ不穏な空気が漂って来やがった

暗殺されるのかなぁ・・・

銃持って来てないよぉ・・・

「さて、話とはなんですか?」

防音の部屋、作っておいて良かった

プレイ用だったんだけどね

一回も使ってねーや

「改宗して頂きたいのです」

・・・はぁ!?

いきなり!?なんで俺!?

「まず理由をお伺いしても?」

神に選ばれし俺が改宗はダメだろ!

神話の戦争に突入しちゃうよ!

「私の領地ではアルナ教を信仰しているのですが」

あぁ〜、なんかあったな

「ストラ教とは不可侵でお互い見て見ぬフリをしてきたのですが、こちらの領土のすぐそばに教会を建てられまして。」

わかっちゃったぁ〜

「私の領土にアルナ教の教会を建てたい、と?」

良い事ばっかり舞い込んでくるな

人付き合いはすべきという事か、神のお導きか・・・

「はい、宜しくお願い致します・・・」

「良いでしょう、ただし条件を付けてもよろしいでしょうか」

これは完全な僥倖。

宗教は平和の維持に非常に優秀に働くファクターだ

統一できればね

不可侵条約があるとは言え異なる宗教があるなら戦争は起こしやすい

人は自分の信じたい事しか信じないもので

思考、信条は変化するクセに現在の自分と異なるモノは理解できないのだ

今の俺がこの世界の人間達が理解できないように!

「飲めるものであればなんでもしましょう!」

「そうですか、では1つずつ書いていきますね

・収入の一部を収める事

これは私の領土内の教会だけで良いですよ

・教会は軍部に従属するものとする」

「お待ち下さい!教会が軍部に!?一体何を!?」

そりゃ慌てるか、でもさぁ、教団という名の軍隊よりはマシじゃね?

カトリ、いやなんでもないけど

世の中そういう宗教もあるからね

それも国ぐるみで

「あぁ、それはもう少し後に説明しますから

とりあえず最後までお聞きください」

「は、はぁ」

「はい、その次ですね

・戦時において教会は銃火器、及びその弾薬の集積所も担う事

そして最後に、これは教会は関係なく領主としてのあなたに、ですが。」

これがまぁ本題と言えば本題なのよね

いやーしかしこんなに良い提案が来るとは

「これから私が起こす戦争に加わって頂きたい」

「き、き、貴卿は一体何を!?そんな事は」

わかっている、そうはしゃぐでない

「ただ事じゃない事はわかっています、けれど私は本気です」

アルナ教とストラ教は問題を抱えている

ざっくりと言えばストラ教は古くから地に根付いて政治への影響すらある、当然信徒も多い

一方でアルナ教はストラ教から分離した割と新興の宗教で信徒はそれなりにいるがまだまだ

お互い1つの宗教から分離しただけに丸ごと敵とみなして妨害する事もできず。といった感じだ

〜〜〜え?こっちの世界では分離した奴らを弾圧したり処刑したりしたって?

ご冗談を!異教徒、異端者は人ではありませんから!博愛主義は一度たりとも破っておりませんとも!!〜〜〜

それを大々的に、直接的に行えるのだ、魅力的、と言えば魅力的だろう

そうだ、この手で他のアルナ教の領主も勧誘してみよう

「しかし、それでは・・・少しお時間を下さい・・・」

「良いでしょう、一週間ほどでよろしいですか?」

「あぁ構わない。ではまた来る」

「えぇ、それではまた」

有意義なパーティになったな、素晴らしいぞ

あ、名前聞くの忘れてた

どこの領主だアレ!遠くだったらどうしよう

まぁ、良いか!晩餐までは時間あるし部屋でゆっくりしよ!

「・・・では・・・よね」

「それ・・・ですぞ」

あん?この声はアルベルト公?

やっぱり変な勘があるなピンポイントでここかよ

ノックを3回コン、コン、コン

マナーを忘れない俺、かっこいい

「失礼、何の話しで盛り上がっていたので?」

ニコやかに入り込むそれとなく追い出さねば!

「おぉ、これはこれは、私の昔話ですよ!」

「凄く楽しいお話でしたわ」

この雰囲気、ただの昔話では無いっぽいが

まぁ、放置しておいて良いだろう

「私も混ぜて頂けますか?」

「いえなに!私ももう行かねばなりませんから!」

やっぱり何か隠してんな、逃げようとしやがる

まぁ、今日は見逃してやろう

「そうですか、ではいずれ私にも」

「もちろんですとも、ではこれで、さようなら」

よし・・・出ていったな?

「おい、何を話してた」

「本当に昔話しよ、ただの」

なぁ〜んか隠してんだよなぁ・・・

痛め付けたら吐くだろうか

2、3発殴ってみる

「ゔぇっ、げほっげほっ」

「言いなさいってぇ、言えばもう何もしないから!」

非合理的じゃないかな?

復讐の話しだとしてもどうせ戦争が起きるんだからいつでもチャンスはあるし、うーん・・・

苦しい思いは誰だってしたくないだろうに

あ!マゾなのかな!いや違うか

「言う事ないわ、本当にただの昔話なんだから」

はぁ〜・・・

「わかったよ、じゃあ俺自分の部屋にいるから、なんかあったら来いよ」

ムカちん〜、部屋でゆっくりしよう

お高い、良いタバコを貰ったんだ

「あんまりですよ!ヒドいです!」

なんか、もう慣れたな

「いきなり大きい声を出すんじゃない、聞こえたらどうするんだ、意外と壁薄いんだぞ」

「私の力で壁から数センチの空気は動けないので大丈夫です!」

さらっと恐ろしい事を!

それできるならいつでも窒息死させれるって事やんけ!

「これからお前に逆らうのやめるわ」

逆恨みなんかで殺されるのは本意じゃない

「逆らう?改宗をあっさり承諾した人の言葉じゃ無いですねぇ」

知ってんのかよ

「あぁ、それも含めて聞きたい事がある、前に言ってたお前のプライベートルームとかその辺」

気になっては・・・気になっては・・・

気になってもいなかったわ、忘れてたし

「では今から行きましょう!

レッツ!ゴー!」

あ、これ前もやったヤツだ!

体制を整えて!

「何してるんですか?」

「このままかよ!!」

なんか、何これ、真っ白

壁なのか地平線かもわからんし

真っ白な丸テーブル1つにイスが2つあるだけだし

「え、これお前の部屋?趣味壊れてるの?」

「清潔感と言ってください。どうぞ、座ってください」

そりゃ無菌室だろうよ

女性と向かい合って座るのってなんか・・・

恥ずかしいな・・・

「あー、どっから聞いたらいいかなぁ」

「何飲みます?」

「ライ◯ガード」

これは外せない、こっちに来てから飲めなかったから久々に飲みたいんだ

指を鳴らすのと同時に目の前にオシャレで真っ白なティーカップ、そしてその中に神々しく薄黄緑に輝く神秘の超生命体飲料ラ◯フガード

これはただの炭酸飲料ではない、砂糖は控えめで蜂蜜、ローヤルゼリーで甘さを作り出し少量のカフェインでスッキリさせる飲み口

そして微炭酸によるまろやかな喉越し

そのクセ色は体に悪そうな薄黄緑

この色じゃなきゃチェリオじゃないね!

美味しくて尚且つゴクゴク飲めちゃう、しかもあのコカとかペプシの黒い悪魔とか

C.C.なんちゃらとかと違って体に良い!!

まさにライフガー◯!!その名の通りだ

これこそが超生命体飲料と呼ぶに相応しい飲み物。

美味い!

「すまん、お代わりくれ」

一瞬で目の前に現れる。ここが・・・天国・・・!

「そうそう、質問なんだけど、お前の名前ってミヒロ・ストラ?」

「アルナです!」

イスから落ちました、ふざけるな

「はぁ!?改宗うんぬんはぁ!?」

「ミヒロ・ストラもアルナも私ですよ」

あぁ、なんだ、そういう事か

最高神が同じなのか

「お前的にはどうなの、自分の宗派が分かれて対立するって」

これは神にあったら聞きたいと思ってたこと

「他の神々はわかりませんが、私は気にしませんねぇ。あんまりヒトに興味も無いですし!

安定した信仰があれば問題もありませんしぃ

中にはわざと対立させて信仰を集めてる方もいらっしゃいますよ!例えばギリ」

「それ以上はいけない、やめよう!

じゃあ宗教戦争起こすのは?信徒死ぬよ?」

そうだ、信仰を集めるなら戦争なんてよろしくないのでは?

「人間は年中繁殖できますからね、問題ありませんよ。10億年くらい放っといたら人間が増えすぎたので急いで宇宙規模の災害を起こした方もいるみたいなんで」

ふぇぇ〜、宇宙規模の災害とか、こわっ

「あぁ、そうだ、あんまり関係ないけどさ、なんで神って人の姿してんの?」

これは気になってた、向こうにいた時からずっと

「なんでって、大人が子供の目線に合わせて会話するのは当然でしょう?動物に対して赤ちゃん言葉みたいになるのと同じですよ」

すっごい鼻で笑われた。腹立つなコイツ

「それに人間は人間至上主義の個体が多いですからね」

それは一理あるな

「ふーん、じゃあ神の本当の姿ってどんなの?」

「我々に姿なんてありませんよ、肉体もないですし」

不思議な生き物だな〜

いや、生き物じゃないか

「そうかいそうかい、まぁ後は特に聞きたい事はねーよ」

さぁ、帰ってゆっくりしようか

でもなぁ〜まだ飲みたいし

「では今度はこちらから質問しましょう」

「え?」

神なんてお前、聞くまでもねぇんじゃねぇの?

わかるもんじゃないの?

「あなたは誰です?」

なんだ急に気持ち悪っ

「フィリップ・ド・エルディンだけど?」

「違いますよ、あなたはーー」

あれっ、戻ってきた

なんだ途中で切りやがって

わけわかんねー、俺はフィリップだろ

何を言っているんだあいつは

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