第10話 兵器学者に学ぶ心の不思議!
式典パーティーか
向こうの世界にいた時はパーティなんて呼ばれたことないからな
パーティってなんだ(哲学)
一般的なイメージとしてはわかる
しかし、どう楽しめばいい!?
「ポーレットさんポーレットさん」
唯一ある程度同じ価値観で生きている我が友人に尋ねる
「パーティって何したらいいんですかね」
「大丈夫かね?一度解剖しようか?生物学には自信がないのだが・・・」
わかる、その気持ちはわかる
しかしわからんのだ!
だってだって経験無いし!
「違うんですよ、いやなんていうか、パーティってなんですか」
この質問はあまりにもヒドかったかな
「パーティというのは特権階級や貴族が自分の力を見せびらかす機会の事だよ」
なるほど、余計にわからんな
今でこそ貴族だが元は一般人だし
生まれた時には貴族制度は廃止されてたしな
「何をしたらいいのかわからんのです」
この人に聞いたのが間違いだったか?
「広義で言えばこの場合の君がする事はたった1つ、会話だよ」
?
ぼくの ちせつ な のう じゃ わかんない
「つまり?」
「ちっ」
舌打ち・・・
ふぇぇ怖いよぉ
「つまり、貴族連中に民衆、その他重役共から欲しい情報を絞れるだけ絞り、与えたい情報をぶち込む、これを礼節をわきまえておけば合法的に行える機会。ここまで説明すればわかるかな?」
なるほどん!!
「愛想振りまいて餌付けすればいいんですね!」
完全に理解した
理解したのならば動くだけだろう
「そういう事だ、一応着いてきた私だが、犯罪者として追われている、くれぐれもボロは出してくれるな?」
どうせ追われるならって事で結構な罪を被って貰ったからね仕方がない
「大丈夫で〜す、そんなバカじゃありませぇん」
「パーティを知らなかった人間の言葉じゃないな」
違う、それは違うぞ
断じて違う・・・
あっ、もう会場か、早いな
「お次は新たな領主、フィリップ様の挨拶となります。どうぞ」
マイクを受け取って言葉を継ぐ
「挨拶に預かったフィリップです
新たにここの統治を任される事になりました
皆様ももうご存知だと思いますが先のエイヴァロン卿の事件、あの事件に関わった者は皆等しく不幸になりました。
今も苦しんでいる方が大勢います、皆んなで手を取り合って乗り越えていけると信じ、私は微力を尽くしますので、皆様もどうかお力を貸し下さい
では、この事件の被害者の1人エイヴァロン卿のご息女、アナスタシア様に変わります」
あー、反吐が出る
胸糞悪い話しさせやがって、いっそここで皆殺しにしてやろうか。冗談だが
ちなみにナーシャには余計な事を話したらヤケを起こしてここら一帯を全て火の海にしてやると脅しておいた、よっぽどトチ狂ったりはしないはずだ
私は胃がムカムカするので自室に戻る
飲み会が始まったらまた行かねばならないので億劫だが仕方あるまい
部屋でタバコを吸っているとナーシャも戻ってくる
「お疲れ様ぁ、どうだった〜?」
「・・・・・・」
シカトかぁ、泣きそう
それだけの事はしてるんだろうけどさぁ
「無視されちゃった八つ当たりにその辺でガキでも拾ってきていたぶろうかなぁ」
キッ!と睨みつけてくる
それが主に向ける顔かよ!
出来るだけニコやかに、優しく話しだす
「では、状況確認からしましょうか
あなたは犯罪者の娘で腫れ物、権力は無い
そして僕はそんなあなたでも庇うほど優しい良い領主様、権力は国でも指折り、王の折り紙付き
さて、あなたがすべき行動は?」
簡単だろう。こんなの野生の動物もやっている事だ
「慰み者にはなっていますが?」
なんでこの人こんなに怒ってるんだろう
やっぱり精神異常者だ、怖いな
「不正解です!
お前がすべきなのは媚びを売る事なんだよ
むしろそれ以外に何もできないだろう?
媚び売って愛想振りまいて俺を油断させて、時が来るまで虎視眈々と狙い続ける。それ以外にお前に生きる道も存在理由も無いんだよ」
我ながら素晴らしい優しさだな
わざわざ自分を殺す毒のレシピを教えてあげるが如く、だな
「あなたに生かして貰わずとも!自分で生きれる!」
生意気な事を言ったので拳銃を構える
見た事のない者ならともかく、その威力を間近で見たこいつにはこうか は ばつぐん だ!
ビクッとして顔が青ざめる
チョロいっす
「じゃ、頑張って生き延びてみようか」
スライドを引いて銃口を向ける
正直言うと女性を傷付けるのは趣味じゃないんだけどね
うふふ、どこ狙おうかな
目立たないとこだと足?
いや、傷のある女性も素敵だし顔いってみるか
「あなただって生きてる訳じゃない癖に!」
お?苦し紛れにしてはぶっ飛んだ事言うじゃないか
だが、なかなか
「続けてみろ、面白くなりそうだ」
随分なご高説が聞けるかもしれんな
綺麗事をぬかしたら頭ぶち抜くけど
「貴方は、何かが憎くてこんな事をしてるんじゃないのは私にだってわかる、でも大層な目的があるわけでも、固い意志があるわけでもない!
あなたには何も無いのよ!ただなんとなく、きっと下らない理由でこんな事をしているの!
あなたは・・・生きても生かされてもいない、死んでないだけよ」
図星をガンガン突いてくるなこいつ
半端なメンタルしてたら自殺モノの暴言だよ
っていうか神の意志で動くのは大層な理由にはならないだろうか
「だから、どうした?そうだよ、こんなのは暇潰しだ」
所詮は暇潰し、それは向こうにいた時から変わってない
死ぬまでただなんとなく飯食って呼吸しているだけだ。動く肉と言っても過言では無い、そんな事はとっくに理解している
「それの何が悪いのかな?」
「悪いなんて一言も言ってないわ、でもそんなあなたなんかに私の人生を侮辱されるのは我慢ならないの、あなた如きに私達の心は絶滅させられないわ」
心なんぞ肉体ごとぶっ殺してやっても良い所だが、意味が理解できない・・・
肉体を潰せば心もくそも無くなるだろう
どういう事だろう・・・
こういう時は本人に聞いてみるのが1番だね!
「心が殺せない?そんなもの肉体をぶっ壊せば同じだろう?」
「ふふっ、やっぱりあなたには理解できないのね。ランスさんの心は死なずにまだ残ってるわよ、人の心を持ってないあなたにはわからないでしょうけどね。それに気付くのはあなたが死ぬ時かしら」
さっぱりわからない
心が生きてようと肉体が無ければ何の意味もないだろう。いや、肉体さえ生きてれば良いとも思わないけどさ
「わからんな、わかりたいとすら思えん。
だが面白かったぞ、今日は殺さないでおいてやる」
精一杯強がってカッコつけた上で部屋を出る
ダッシュで向かったのは
愛しのメガネの元だ
「ポレえも〜ん!!肉体ごと心も何もかもぶっ潰せる兵器出してよぉ〜!!」
正直くっっっそ悔しい!
腹立つ!なんだこの敗北感!?クソが!!
「そんなものはない!あるとすれば惑星ごと粉微塵に出来る兵器だがそれは子供達も巻き添えになってしまう!それは許さないぞ!」
っち!使えねぇ
何のために研究資金出してると思ってんだ
待てよ?
「惑星ごと粉微塵にしてやれば心も殺せるのか?」
なんかコイツもわかってる感あるぞこれは!
あのメスガキなんかよりも頭の良い人の説明の方がわかりやすいのは火を見るより明らか!!
「そうだな、確定ではないがそこまですれば殺せるだろう。絶対にやらないが」
これはわかってる!ならば説明してもらおう
「そもそも心を殺すって何ですか、はい、ポーレット君、答えたまえ」
ヒョイとメガネを奪い取る
こうなったらこいつもう白衣しか特徴ねぇじゃん
「メガネを返したまえ!」
「答えてくれたら返すよ」
「・・・はぁ、そうだね、まずは心って何かわかるかね」
ここ・・・ろ・・・?
おで・・・わからない・・・
「脳細胞の電気信号によるホルモン物質の分泌反応の事ですかね?」
メガネをクイッとあげる。完全にインテリだ
目が悪くないのでグラグラする
気持ち悪!
「それはどちらかと言うと感情に近い」
あっさり否定されるとイラッとする
「大脳新皮質の理性、倫理、そして大脳辺縁系の古皮質の感情や欲望、同じく大脳辺縁系の旧皮質の本能、これらの機能を全て使う事、つまりは欲と理性と本能を織り交ぜて導き出される個人の信条だったり主義思想が心と言えるだろうね」
感情だけでは心とは言えないわけか
「でもじゃあなんで肉体をぶっ壊しても心は死なないんですかぁ!?」
そうだよ、脳の機能である以上物理で破壊できる!!
「情報に実体はないからだよ、主義者を殺してもその主義は無くならないし紙媒体や口伝でいくらでも主義者は増える、自分の考えでその主義に到達する者もいるでしょうから、ヒトを絶滅でもさせない限り心を完全に殺す事は出来ないんだよ」
ならほどなぁ、つまりランス君の俺を殺すっていう心がナーシャに移って増幅したからランス君の心は死んでない訳か
そんで俺がこんな事を続けている限り第2、第3のナーシャが生まれるから絶滅はしない、と。
「じゃあ俺に人の心が無いってのはどういう事なんだろう」
主義や思想こそ無いものの信条くらい俺にだってあるぞ!?
「心が無いというのも今初めて知ったがね、恐らくさっき言った欲だとか理性、本能、それらが分離しているのが原因では?矛盾しているようだが合理主義者に多いんだ、それらを区別して考えるが故に生物らしさが薄れる、というのはね。本能や欲が混ざる以上、理非的な行動も当然含まれるが、そういう本能や欲、感情を優先してしまう事もまた心と言えるんじゃ無いかな?だがやはり、定義は自分で考えるのが1番だ、それが人間らしさで心なんだと私は思うよ」
なんとなくだけどわかった気がする・・・
よし、さっそくドヤ顔しに行こう
「そうだなぁ俺って結構、合理主義的な所あるからね、ありがとう!なんとなくわかりましたよ!」
「わかったらメガネを返したまえ」
メガネは取られたがまぁいい
それでも俺はインテリなのだ。あいつには心という物を教えてやろう!
だがその前に!!
「生物学は自信無いんじゃ?脳みそについてすっごい詳しかったけど」
「何を言っている、この程度は一般教養だろう」
これだからインテリはぁ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます