第9話 武力は大前提


私のエデンに帰って来ました

そうです、我が家です

1番落ち着く場所です

「ゔぅ、ゔっ」

そこで泣いてるのは奴隷です

仕方が無いですね、ですもん

「風呂に入ったらとっとと戻れ」

「はい・・・」

スッキリしたらもう用は無い

用もないのに部屋でメソメソ泣かれるのはウザったいんだよなぁ

部屋でやれ。部屋で

わざわざここで泣きやがって当て付けか!

「早く帰らないと弟さん、流行り病にかかりそうで怖いね!」

「は、はい!」

慌てて出て行くくらいなら最初から出ていけ

バカが

そして僕の夜は更けて行く

安眠の底に沈んだと思ったら、もう朝だ

「ふぁ〜ぁ!おはようトゥ・ザ・ワールド」

今日の予定はなんだっけ

枕元に置いてある書面に目を通す

あぁ、奪い取った領地の偵察と式典か

向こうの生き残った元重役とか人間との顔合わせも含めての式典があるそうです

列席者は、ヒゲくそじじぃ(アルベルトさん)に、近衛騎士団長ランス君と・・・これはこれは、楽しいパーティになりそ・・・いや、してやるか

ポーレットさんが発明中の蒸気自動車の試作機に乗って本当に従順な男の奴隷達と移動中

他の兵士は馬や馬車で後から追いつくそうだ

これはウチの領地も鉄道整備した方がいいな

資源は余裕があるし絶対あった方がいい

いやー、領地が広いっていいね!

資源はガッポガポ、金もガンガン入ってくる

仕事に追われるのは辛いが、奴隷さん達のおかげでストレスは今の所溜まりすぎもせず無さすぎもせず

人間はストレスが0になってもダメになりますからな

適度に必要なんスよ、やっぱ

流れる景色を見ながら物思いに耽っていたら着いた

やっぱ車は速いね

イカレ白衣が作った車なだけにいつ爆発するかとビクビクしていたが杞憂だったようだ

「記念式典は明日、執り行われます」

「わかった」

適当に返事してエイヴァロン卿の館跡地に向かう

バカが土地だけは持ってやがったからな

跡地には私の別荘兼合同庁舎を建てておいた

その完成式典でもある

色々を同時に祝ったパーティだからね

「荷物はこちらでよろしいですか?」

「あぁ、そこに置いといてくれ」

王都と違って俺の命を狙う奴も無い

目上の人間も少ないから気を抜いて会話もできる

いやぁ、素晴らしいね

地元が落ち着くって気持ちがわかった気がするよ

人目に付かない裏庭を作れって言っといたアレ

ちゃんとできてるか見に行こう

何が起こるかわからんから拳銃は携帯してますよ

当然です

「こんにちは、フィリップ様!」

「あぁ、こんにちは」

ガキ相手でも笑顔は基本

人と話すときはほぼ絶対に笑顔だぜ〜

誰にそうしろって言われた訳でも無いけどね

向こうの世界じゃ笑顔じゃなきゃ死ぬのよ

「あ、そこの君、他の兵士達にも徹底して欲しいのだが」

兵士の中でも立場のそこそこ高そうな人間に話しかける

新しい土地だと、見慣れない顔も多いが

なんとなく立場のあるものは顔でわかる

顔色ばかり伺って生きてきたからかな

なんとなく、そう思う。そしてそのなんとなくは外した事がない

「今から18時までの2時間、裏庭には誰1人近付けないでくれ、誰1人だ」

「はっ、かしこまりました!」

「何があっても、だぞ」

釘は刺しておく、なぜなら裏庭には今、素敵なゲストがいる

相手次第では、楽しめそうじゃないか

その足で裏庭に向かう

「やはり、ここでしたか」

黒髪ロングが綺麗な女性、だが性的な目的で近付いたわけじゃないんだな

肩がビクリと跳ねて振り向く

「あっ、その」

言いかけたが俺の顔を見た瞬間表情が変わる

「あなたは・・・!!」

凄んでくるけど、全然怖くない

そうです、この人はエイヴァロン卿の娘さん

「アナスタシア・エイヴァロンさん、で合ってますよね?」

「その口で名前を呼ぶな!!」

俺が何をしたっていうんだ

あまりにもヒドい仕打ちじゃないか

「あなたさえ!貴様さえいなければ!!」

うわっ、なんかこっちに走ってくる

「ぐゔっ」

咄嗟にお腹蹴っちゃった

正当防衛だよね!

あんな血走った目で迫られたら誰でもそうするって

「なんですか急に、やめてくださいよ」

転がってるアナスタシアさん(以降ナーシャと愛称で呼ぶよ、僕達もう、友達だよね!)

の手元にナイフが握られている

こいつやべーな

イカレた人間は相手にしないに限るが

残念ながらこいつには戦争の糧になって貰わねばならない、相手せざるを得ないのだ・・・

殺そうとしてきたのだからそれなりに悪意が育ってるようだ

俺が一般人ならともかく領主だからね

俺1人を殺そうとするだけで大きな争いになる

いいね、素晴らしい。完璧に近いぞ

「う、うぁぁぁぁぁぁ!!!」

なんか急に泣き出したし。怖っ

情緒不安定かよ・・・

「あのさぁ、半端な覚悟で殺そうとなんてすんなよ。責任を持てよなぁ、ほら来いよ、殺したいんだろ?泣いてても俺は死なんぞ」

稚拙な頭脳で思いつく精一杯の煽り、折れるようならここで殺すつもりだ

そんなハンパなヤツは生かしておいても役に立たん

敵対してる上に使えないとなればそりゃ殺すわさ

「何をしているんですか!!」

ランス君じゃないか

でも大丈夫だよね?だってあの時俺を信用するって言ってたもんね?

でもなんかすっげー怒ってるな

めっちゃ睨んでくるやん

「なにって、あぁ族だよ、俺を殺しに来たんだ

連れて行きたまえ」

最初に状況確認してくるあたり優秀さが伺えるな、褒美でも取らせよう

「アナスタシアさんに何をしたんですか!場合によっては!!」

あちゃー、困ったな、褒美は鉛の弾に決まりそうだ

「何って、殺しに来たから返り討ちにしただけだ」

「しかし、相手は女性ですよ!?それに言い方は悪いですが父の仇を見たのですから錯乱する事もあります!」

???何を言っているんだこいつは

「錯乱して人間を襲う可能性のある人間を危険人物と呼ぶんだろ?事実俺は今被害に合いかけた、返り討ちにしただけだ」

「あなたという人は・・・!それが本性だったのですか!我々を騙していたのですか!」

人聞きが悪い、事実を言わなかったら都合よく勘違いしてくれただけだ

まぁ、それを騙すというのだとして

「だからなんだ?それがどうかしたかな?」

知った事ではないぞ!だって俺悪くないし!

「あなたに、決闘を申し込みます!

私が勝ったらアナスタシアさんにこれ以上何もしないでください」

ちなみに私、剣術はくっそ弱い

そこそこ筋肉はあるとはいえ、剣術なんて素人がかじってできるもんじゃない

剣術ならば、だ

「いいよ、私が勝ったら、そうだねソレの人権を剥奪でもしようかな」

我ながらいい考えだ、適当に虐めたら野に放って戦争の種にしよう

「あなたはそこまで腐っていたんですね」

凄い気迫だ、見た感じ隙も無いし、やっぱランス君って強いんだなぁ

頭も良いし顔も良い、完全にリア充じゃないか

「では、行きますよ」

剣を構えるランス君

パァン!

剣での勝負とは言われなかったのでつい撃ってしまった

でもちゃんと急所は外したよ!下腹部右側

股間を狙ったんだけどね、全然狙い通りにいかねぇや!

「ぐぅっあぁぁぁ、貴様ぁ!どこまで腐っている!」

倒れるランス君とカッコつけて銃口に息を吹く俺

「野蛮な武器で文明に勝てると思ったのかね?」

わざとゆっくり歩いてナーシャに向かう

へたり込んだままひっ!と声をあげるが反抗はしてこない。なんだ、随分脆いな

「あのマヌケが負けたせいで君は今日から俺のペットになりました。まぁ、頑張れ☆」

自信があったのか知らんが、他人の人権を賭けて戦うのも良くないだろうよ

「その人に、手を出すな!」

勝負も着いてる上に生意気な事を抜かしたので腹を蹴り飛ばす

「「ぐっあぁ!」」

鎧着てるのを忘れてたので足が痛い!!

ランス君も悶えている、ハモった

ダメージは確実にランス君の方がデカイから俺の勝ちだ

「もう良いでしょう!?その人には手を出さないで!」

この女悪魔かよ!

このタイミングでそのセリフは、俺でもちょっと引くよ!?

最大限利用するけどさ

「守ろうとした女に守られる気分はどうかな?」

「卑怯なマネをして、この下衆がぁ!」

とんでもない暴言を吐いてくれるね

「ははっ、そのゲスに負けた挙句、メスの1匹も守れんヤツが口だけは偉そうだな」

正論が必ずも正しいとは思わんが

こういうアホには正論が良く効く

「もう一度!もう一度決闘を!!」

立つのがやっとのクセに何を言っているんだか

「いいだろう」

と同時に左足を撃ち抜く

この距離なら外さないよ!さすがに!

「っぐぁぁ!」

「やめて!手を出さないで!!」

いやだって・・・決闘を申し込んで来たの向こうだし・・・

「あぁ、そうだ、いい事を教えてあげよう、えーっと、名前は忘れた。君の父上は俺を殺そうとなんてしてなかったよ」

おぉ〜、凄い顔してるな

訳がわからないって顔だ

「では・・・ではなぜ父上を殺したのです!?」

よしきた挑発ターイム!!

「えっいや、理由はあんまり無いけど・・・

あっあぁ!強いて言えばちょうど良かったからとか!」

なかなか演技力あるな、俺!

「許さない・・・ユルサナイ・・・」

怒ってる怒ってる

「あなただけは絶対に許さない!!!」

油を注ぐのもここまでだな

「そうか、許さないからって出来る事は無いぞ」

「貴様ぁぁぁぁああああ!!!」

ランス君・・・どうした急に、君も錯乱したのかね

「貴様は!やり過ぎだ!死んで償え!!」

すっごい怒ってるけど、動けないランス君と比べるんだったらまだナーシャの方が怖いよ

「威勢が良いのもいいが、君はここで死ぬのだランス君、最後の言葉がそれで良いのかい?

少しだったら聞いてやるぞ」

深呼吸をしたランス君、目つきが変わった

ほう、これが覚悟を決めた人間の目、というやつかな?

ナーシャが膝をついて手を握っている

今気付いたけど手、綺麗だな

食べちゃいたいというか、なんというか

・・・腹減ったな

「アナスタシアさん、これから大変な目にあうでしょうが、でも必ず生き延びて下さい、その男を殺して下さい!あなたは幸せに」

パァン!と頭の風通しを良くする

いや、少しって言ったし、 途中だけど別にいいだろ

空腹には勝てねぇや

「ゔゔゔぅぅぅぅあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

泣き叫びながら掴み掛かって来たので拳で叩き落とす

「すいませんちょっとやめて下さい」

ほんと、疲れたんで勘弁して欲しい

やれやれ、なんだって俺がこんな目に・・・

指笛の合図で奴隷3名が来る

「あ、こいつを俺の部屋に連れてって、拘束しておいてくれ、猿轡もしておくように」

「かしこまりました」

すんなり言う事を聞く人間は実にやりやすい

なぜ彼らが言う事を聞くかって?

甘い汁を散々吸わせたからね

俺の指示に従う限り女は抱ける、酒は飲み放題、多少の犯罪は揉み消せる、肉体労働もしなくて良い。特に家族もいない、大きな夢も無い、そんな人間にとって素晴らしい雇用条件なのだ

ゆえに彼らは実に従順になってくれた

ナーシャが連れて行かれるのを見送ってから兵士を呼び寄せる

「はっ、なんでしょう!」

「突然襲いかかって来た。反逆罪を現行犯で処した、教会に報告して葬儀を行うぞ」

訂正するほど間違ってないね!

なんか、あの白いヤツみたいだな

「か、かしこまりましたっ!」

葬式では結構な数の兵士が泣いていた

人望があったのだなぁなんてしみじみ

「領主様、団長は・・・団長は本当に襲いかかって来たのですか」

「私も信じられん思いだよ・・・武装解除させて事情を聞きたかったが彼が相手だ・・・

いや、言い訳だな・・・すまない、私の力が至らないばかりに・・・」

今日の晩御飯なんだろう、そろそろ肉が食いたい、豚の角煮とか食べたいなぁ、こっちには無いのかな。

「いえ・・・しかし黒幕の調査を任せては頂けませんか・・・!!」

「既に私の直属の部下が調べているが、怪しいものは出てきていない・・・」

「そうですか・・・」

ワインじゃない酒も飲みたいな〜、日本酒とかもこっちには無いのかな

日本酒なら作り方知ってるし作ってみようかな

いや、せっかくだしハーブ酒とかにしてみようか

新しい名産品はアリやなぁ

「皆、今日は好きなだけ飲め、明日に響かないようにな」

「はい・・・!」

俺は自室に戻って楽しみがあるからな

その日は遅くまでベッド・ハッスルが続いた

すっごい興奮した

そりゃもう!凄かったんだからぁ!

なんか俺って泣いてる女としかヤったことなくね?

誰が素人童貞や!ちゃうわ!!

まぁ、いい。

拘束具をはめ直しながら目をこする

自由にしたまんま寝たら多分そのまま目が覚めなくなるからね

大事な作業ですよ

good night、世界!

明日は・・・式典・・・

ねむ・・・

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