第3話 ちょっと頑張ったクズ
目が覚めたら屋根が石だった、夢じゃなかったんだ、疑ってたわけじゃないけどね
「誰ぞ〜誰ぞあるか〜」
この呼び方、一回やってみたかったんだよね!
「はっ、こちらに!」
「奴隷の住民登録と、例の荷物を」
「かしこまりました!」
打てば響くとはこのこと、すぐに駆けつける側近はエリートであると言える
さぁ〜て、昨日奪った奴隷に挨拶に行くか
風呂にも入り身だしなみも整え、彼は歩き出す
「おはようございます!」
「ん、おはよう」
平和ボケした兵士でも武器はもってんだなぁ
でも槍かぁ・・・昨日、本で調べたら銃は狩猟用で人に向けて撃ってはいけないのだと
バカげてやがる・・・
俺のいた世界と根本的に違いすぎる!
非常に厄介だ
奴隷用宿舎の鐘を鳴らすと慌てて出てくる
ふふっ、アリの巣に水流したみたい
「おはよう諸君」
「「「おはようございます!」」」
点呼確認してみたら脱走者はいなかった、当たり前だけど
「では、この名簿の50名は私と共に、他の30名は城に入り手続きを済ませて言われた通りの訓練をしておけ」
読み書きができるもの、魔法の才能があるもの、身体能力の高いものを集めた名簿を渡す
配下にする本命はこの50人だ、まぁ、今から少し減るかもしれんが
そして、なぜ読み書きができるもの、魔法の才能がある者までもが奴隷になっていたかと言うと、昨日調べた限りでは災害などにより村が壊滅すると畑も仕事もあったもんじゃない、それで奴隷商に行きなんでも(尊厳が損なわれない限り)するから働き口を見つけてくれ、というわけだそうだ、あくまで本からの知識だが
まぁこのいい人ばかりの世界での奴隷は大半がこのパターンらしい。ヌルいなぁ・・・
「例の荷物は?」
「こちらに」
素晴らしい手際ですね、さすがにそこは奴隷とは違うか、比較的に高学歴の人達だし
「この袋に銀貨が10枚ずつ入っている、これを1人1つずつ取って馬車に乗ってくれ。」
奴隷達には北の関所近くの村で買い物と言っておいた
好きなものを買っていいぞ、とまぁ完全に優しいイケメンとなったわけです、まぁ、嘘だけど
私は愛馬に乗り込む、昨日からしか知ないが記憶を辿るとどうやら子供の時から一緒らしい。御者にはついて来い、としか命令をしていないのでどこに行くかは知らないはずだ
そうです、野盗のアジトに行くのです
道中、休憩中にて
「そこの、君は名前をなんと言ったかな?」
「はい!僕はティトリです!」
こいつにした理由は簡単、顔は良いが俺よりイケメンじゃないのと、気が弱そうだったからだ、あと年下の方が楽だし
「小話しなのだが、なぜ銃は人に撃ってはいけないのだね?」
「えっ!?死んでしまうからですよ!」
うん、そうだね、当たり前だね
「そうだな、なに、気にするな」
「は、はい」
ここまで意識の違いがあるとは・・・
戦争を起こさせるのも一苦労だぞ!
せめてもの救いか、野盗や族は人を殺す事があるそうだが、あまり多くはないそうだ
どうやったら戦争になるんだこれ!!
戦争を起こす方法を考えていたら着きました
アジトに
「この辺で休憩しよう、あそこの民家に食料を分けて貰ってくる」
用意していた荷物を家の裏において、細工は流々!ドアをノックしたら出てくる悪そうなツラの人たち。
対して俺はニッコニコのイケメン
「あん?なんだてめぇ」
顔通りのドスの効いた低い声
「あ、私アグルテス国のエルダード地方を治めさせて頂いてます、領主のフィリップ・ド・エルディンと申します」
貴族しか持ってない紋章も見せる、警察っぽい!っていうか初めて名乗ったね
国の名前もこっちに来てから初めて口に出したし
「・・・貴族様がなんの様だ」
「そうですね、あなた方をこちらで雇用させて頂きたいな、と」
まぁ、嘘は言ってない、かな?
「この暮らしも悪くないと思っている、帰ってくれ」
「あなた方のやってる事は犯罪行為ですよ?
わかってます?」
「殺すのは最終手段だ!そんなに殺してねぇ!」
いやいやいや・・・
いや、それは極端だが、そういう意識ならやりようはある!
「そうですね、では雇用ではなく、今回限りでの、ちょっとした手伝いをお願いしても?」
顔の筋肉が疲れてきたが、笑顔は崩さない!絶対に!
「自分とこの兵士じゃいけねぇのかい」
良かったらとっくにやってんだよブスが!
「えぇ、なにぶん都合がございまして」
こっからは嘘のオンパレードだけどいいよね!見抜かれなければ嘘は真実なんですよ!
事実ではないけれど
「話しは聞いてやる、入れ」
やったぜ、チョロい
「で、要件はなんだ?」
ほうほう、結構人数が多いなこれは
すこし計算がずれるかもなぁ
「表に奴隷達がいるんですけどね、そいつらは1人、銀貨10枚持ってるんですよ、捕まえたら、それを差し上げますので、追いかけ回して欲しいな、と」
何言ってんだ俺
「わけがわからねぇよ!そんな事してあんたに何の得があるんだ」
本当、俺もそう思うよ
「避難訓練ですよ、緊急時の対応を調べたいんです。あ、それと麓から少し北の村、わかります?」
「あぁ、でもあそこはあんたの領地じゃないだろ」
そうだ、境界線ギリギリの辺境ゆえに
「合同演習と区画整理を兼ねてまして、そこの村の金品も同様、こちらが支給した物で個人の物は残っていないので持って行って貰って構いません、建物の破壊も積極的に行って欲しい、と」
出まかせに嘘をかけてハッタリで味付けしてる感じ。しかしまぁ、領主様だからね
戦争なんて起こそうとは思ってないだろう
事前に練って来たのだよ、戦争を起こすにはまず恨みを募らせねば
「そちらは儲かるし、ストレスも発散できる、こちらは手間と金が浮いて訓練になる、どうでしょう?」
「そうだな、まぁ、悪い話じゃない、が」
断られそうな雰囲気を察して慌てて言葉を紡ぐ
「それと!これは独り言なんですが、城の兵士は来ていないんですよねぇ、それに奴隷達は犯罪者の集団だし、不安だなぁ、逃すくらいならいっそ・・・・・・
おっと失礼、では、よろしくお願いしますよ?」
あぁ、この深みのある笑顔は伝わったようだ
うむうむ、彼らならキッチリ恨みをばらまいてくれるだろう。
家から出ると中に聞こえる様に大声で叫ぶ
「逃げろー!!山賊だー!!」
「行くぞお前らぁ!!」
「あ、馬車があるんですけど、火をつけて放置してくださいね!僕ももう逃げますんで!」
アリの巣に水を流したみたいパート2
「北に村がある!そこまで逃げるんだ!」
蜘蛛の子を散らす様だアッハッハッハ!!!
鼓膜が破れそうになるほどの衝撃と爆発音
お、言った通り馬車に火を付けてくれたな?
あの爆発で村人が死んでくれてたら良いが!
じゃあ、帰るか!
「あ、ティトリ君、奴隷をすぐに召集するんだ!」
「しかし村がこの様な!!」
「それより人命が先だ!早く!!」
「はい!!」
村は阿鼻叫喚だな・・・
「兵士も連れていない我々ではどうする事も出来ん・・・逃げるぞ!!」
生き残ったのは48人、2人死んだか
まぁ見積もりより多く生き残ってくれたしいいかさぁ、帰りはひたすら走る!
命がけで走ってくれたまえ!
私は愛しのお馬さんに乗ってますけどね
「大金を持って出かける事がバレていたようだ、まさかあそこまで過激な攻撃を仕掛けてくるとは・・・」
半日近く走って逃げて休んで歩いて
やっとこさ自領の街にたどり着きましたとさ
「皆は休んでくれ・・・すまぬ・・・」
奴隷達は一回休み
次は兵士達の番だ
「兵を集めよ!山賊の襲撃だ!人も死んでいる!直ちに制圧に向かうぞ!」
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