第2話 クズ、初めての犯罪
いってぇ〜・・・!?
あれっ!?えっ!?こんな急に!?
見渡す限りの野原、現代日本で、引きこもりなら尚更見る事のない景色、それも突然の変化だ、脳は混乱する、更に
馬がっ、馬がいる!!
「落ち着いて下さい!」
あ、クソ神
「ねぇ、1地方とはいえ、俺、領主だよね?
なんで野原にほっぽりだされてるわけ?」
「理由はわかるはずですよ?」
記憶を辿り過去に遡る
向こうの世界を出てから今に至る部分に、身に覚えのない記憶が挟まれている
なんだコレ
知らない記憶がいっぱい
あぁ、俺今18歳なのか
18年間の記憶かぁ
えーっとぉ?
「奴隷の取引に向かう途中、と」
なんで落馬したところからなんだよふざけんなよ!
このすぐ後の馬に乗り直した所ではダメだったのだろうか
「そういえば前の世界の俺はどうなったの」
馬に乗り直しながら訪ねる
「部屋で心臓麻痺で死にました」
攻撃に当たって死んだんじゃないのかよ
「ふーん、そうか」
一応、親孝行は果たせたんだな
あ、葬式しなくていいよって遺書ぐらい残してくれば良かったか。まぁいいや
「で、お前はこっちでどういう扱いなの」
曲がりになりにも神な訳だし
「あぁ、奴隷商と合流する直前に消えますよ。神ですし」
えっ、領主1人でって思ったけど
平和なんだっけか、じゃあいいか
「族とかもいないわけ?」
「いますが、この辺は安定してますね」
それを俺が崩すのかぁ〜
あ、向こうから馬車がいっぱい来てる
「あれか?」
あれ、無視?
「おい、こら、おま」
もういない、消えるのはやいな
「これはこれは領主様!わざわざお出迎え頂いてありがとうございます!」
元の世界での常識に合わない、面構え
こちらと元いた場所の奴隷の定義の相違に他ならない
うわー、奴隷商人なのに優しそう
「うむ、早速商品を見せていただこう」
なんだこいつ、急に睨んできやがった
お?俺領主やぞコラ
「あの、領主様に失礼とは思いますが、その・・・奴隷とは言え、商品という言い方は・・・」
奴隷商人の癖にめちゃくちゃいい奴じゃん
え、だめなの奴隷って人権無いんじゃ・・・
「ほう、奴隷に人権があると?温情をもって接するべきだ、と言うのか?」
なんだこの喋り方、でもつい、なっちゃうんだよね
「当然です!奴隷達も生きておりますから!」
ははっ、泣けるぐらい優しいなコイツ
「まぁ良い、奴隷を見せてもらうぞ」
馬車を覗いてみる、コレは・・・
漫画とかでみるボロ切れじゃないし
ケガも無いとは・・・
でも一応、手枷、足枷は付いてんのね
「こやつらの、枷の鍵を貰おう」
「はっ、すぐに!それと
代金の方なんですが金貨480枚になります」
おぉっとぉ!?
そんな金持ってないぞ!?ってか支払い終わってないんだ!?
そうだな・・・まぁいっか☆
「先に鍵を預かっても構わんか」
「へい!かしこまりました!」
鍵を外しながら奴隷達に耳打ちをする
「お前らの新しい所有者だ、馬車の御者に商人を殺せ。さもないと私兵を使ってお前ら皆殺しにするぞ」
馬車の中が少しざわつく
最後の1人を解放したところで男が1人飛び出す
他にも、30人ほど続く
馬車に乗っていた全ての奴隷が一斉に飛び出し
奴隷商人、それから御者、寄ってたかって素手で殴り殺していく
他の馬車の奴隷も解放されて暴行に加わっているから上手く伝えてくれたのだろう
血の匂いが充満して、気持ち悪い・・・
めちゃくちゃ生臭い・・・
奴隷の中でも何人か吐いてるな
俺のところから死体が見えないのが唯一救いですな
さすがに現代日本人には刺激が強すぎる
しかしまぁ、これで金はなんとかなったな!
「よーし、全員並んでー!」
掛け声と共に俺の周りに集まってくる
整列は、できんか・・・
俺も襲われるかと思ったけど、剣も銃も持ってるし、領主だもんね、権力万歳
「死体を埋めるぞ!」
穴を掘ること20分ほど、目撃者もなく全ての工程を終える事が出来てホッとする
さてさてぇ〜?
「結構馬車の運転できる者は多いのだな」
「はい、ほとんど皆、農村の生まれですから。しかし、何故こんな事に・・・」
「こんな事、とは?」
領主だし、殺しくらい揉み消せるよ?
「人殺しです、いったい何故・・・」
あーまぁ、治安が良いから殺しもほとんど無いのかぁ
「その辺は帰ったら話す、さっさと帰るぞ」
「はい・・・」
それぞれがまた馬車に乗り込み帰路に着く
部屋から出なかったからこういう、アウトドアって新鮮ね〜
「領主様、馬が疲弊しております、そろそろ休憩を取ってもよろしいですか」
1人の若者が寄ってきて質問を投げてくる
「うむ、良きに計らえ」
人生で言いたかったセリフ言えたぜやった
「泉がありますのでそこで」
「うむ」
そういえば俺も喉乾いてんだよなぁ
水でも飲みに・・・!?!?
水に映るこの金髪イケメンはだぁれ!?
ママ!知らない人が
じゃねぇや、自分で設定したんだった
忘れてたわ
そうかそうかぁ、俺は今イケメンなのかぁ
「おい、そこの娘」
「はっ、領主様なんでしょう!」
ナンパとはちょっと違うけどこんなかわいい子と話せるなんて!
「私はその、かっこいいか?世辞は抜きでだ」
「ええはい、端正というか、控えめに言っても美男子の類でございますが」
フッフフ、やったぜ
「そうか、うむうむフフッ」
そっかぁ〜、俺イケメンになったんだぁ
やったぜ
「さぁ!帰路に着くぞ!早く帰ろう」
「「「はい」」」
再び馬に揺られる事30分ほど
記憶によるとどうもコレが家らしい、しかし、これは・・・
控えめに言っても、城だ。
当然1人で住んでいる訳でないにしても、慣れねばならない
そして堀の外側すぐに奴隷用宿舎が、これも知っているような奴隷用の宿舎では無く、普通にレンガ造りの集合住宅だ
目の前の建物、そして建設を命じた記憶もある。この記憶は偽物では無さそうだ
検証もしてみるがな
「さて、今回の件だが、口外したものは処刑する、良いな?」
「「「は、はい!」」」
脅迫といえば脅迫だが私は権力者になったのだそして権力は使うものだ、文字通り減るもんじゃないし
「そして、あの男を殺した理由だが、事前に入った情報で族に加担し諸君を法の及ばない土地へ売ろうとしていた事がわかった。諸君を救うにはああするしかなかったのだ、すまぬ」
微妙な空気になったけど、おい
俺のせいか?俺が悪いのか?
「み、皆の暮らす場所はここである、入るが良い。部屋は自由に決めよ、業務に関しては明日の朝にする」
各々が話し合い適当に部屋に入る
何か違和感が・・・あぁ、奴隷が明るいってのと、妙に行動が早いんだ
ラノベとかだと
「奴隷がこんな良い部屋に!?」
みたいな、これは調べなくては
とりあえずまずは側近達と話しておかねば
「奴隷が反乱を起こし脱走しておったのでこれを説得、鎮圧した、教練を施して配下とするが、良いな?」
「代金はどうされたので?奴隷商人はなんと?」
「到着した時には殺されておった」
側近達がザワつきだした
まぁ、当たり前か
「殺人は重罪です!王都に突き出すべきでは!?」
「待遇があまりにも酷かったのだ、この件は隠蔽せよ」
「しかし!」
おれ領主様、おまえ側近、逆らうんじゃあないよ
「良いのだ、隠蔽せよ」
「か、かしこまりました」
困惑してはいるものの命令には従ってくれる
良い部下とは彼女らの事を言うのだろう
自室に戻ってひたすら本を読む、この世界の文化、風習、向こうと違いすぎる!
平和過ぎるのだ!
戦争を起こすにしてもただ兵を起こしても自国、諸外国、そして国民に押し潰される
大義名分を得て、味方を得て
それから文明を発達させなきゃいけないなら前線で膠着状態を作る必要がある
難易度、高すぎない?
くそぅ、一国の王ならもっとやりやすかったのに、まずは勉強せねば!知識がなければ現状の把握もできん!
ふと、辞書で「奴隷」を引いてみる
〜人間としての尊厳を損なわない程度において私有し労働を行わせても良い人材〜
嘘やん・・・優しすぎるやろ・・・
「俺の知ってる奴隷と違う!」
思わず声を上げる、まぁ部屋の中でしか聞こえない程度に
「当然です!あなたの世界の奴隷はひどすぎますよ!」
びっっっくりしたぁ!!!
「あのさ、急に出てくるのやめて」
俺の世界でも無いし
「あ、すいません、ずっと近くにはいたのですが」
まじかぁ、ずっと見られてたのか
「じゃあ、あの殺しも?」
「はい・・・むごかったですね・・・」
戦争を起こせと言ったやつのセリフじゃねぇな
「戦争なんかしたらもっと酷い事になるぞ?」
「文明が発達するなら大丈夫ですよ!」
血も涙もねぇな、コイツクズだ
「いくつか質問がある、この領地の現状は?」
「そうですね、まず王都ハーヴェンから数えて4番目に栄えています」
「このクソ田舎が!?」
「えぇ、そして、治安は良好です、北の領主との仲は険悪ですが紛争の1つもなし。
あ、あと特産品は薬草ですよ!よく効くって評判です!」
薬草かぁ・・・武器とか食料と違ってドカッと稼げないんだよなぁ
戦時中でも無いし・・・
「この近辺で1番規模のデカイ野盗のアジトを教えてくれ」
「細かい位置は教えられませんが、北西の山にあるって噂ですよ!」
位置も丁度良いじゃねぇかハッハッハ!
恵まれてんなぁ
「さぁ〜て、明日はお出かけだな!」
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