救済する悪意
@hitogatahuman1938
第1話 クズの神と人
運動はまるでダメ
勉強もそこそこ
ニートで引きこもってパソコンをいじる
腹が減ったら母親に持って来させて
満たされれば寝る、そんな毎日の繰り返し
未来に対する不安は無い訳ではない
しかし、何をして良いのか、何からすれば良いのか
さっぱりわからない
こんな俺に何が出来るのか
ニートになって2年くらいまでは考えてたけど今ではそれもない
自分の事を振り返っていたらゲーム中の自分が死んだ
「はぁ!?今の避けただろクソが!」
あぁ、つまんねぇ
不満は無いが、幸福も無い。
「いえ、間違いなくあなたは攻撃に当たりましたよ、そして死にました。」
家の中に人が!?
椅子から転げ落ちる男、しかしリアリストは動じない、親が鍵でもかけ忘れたのだろう
ダメ親が・・・・・・
しかし、しかし美人だな
下卑た笑みを浮かべて思い付いたと口を開く
「あのさぁ、通報されたくなかったら服脱ぎなよ」
相手は犯罪者、何を躊躇うことがあるだろう
法を破る相手だ、ちょっとくらい無茶をしてやろう。
法を守らない者は法に守られる事も無いのだ!
「通報を強く推奨しますよ、不法侵入ですもの」
はぁ?頭おかしいのか?
携帯を手に取ったら爆発した
いや、俺の頭がおかしくなったのか?
世間とズレてるとは自覚していたがまさかここまでとは
「相手が私でなければ、ですがね」
幻覚、だったとしてもだ、眼前のコレが、人では、少なくともまともな存在では無いのはわかる
そして、所詮相手は女だ、それも華奢な
運動は出来ないとは言え相手は女だ
「っらぁ!」
振った拳は不自然に軌道を変える
あれ、パンチが当たらねぇ
当たらねぇっていうか勝手に腕が避ける
磁石の同じ極同士を近づけた様な感触
「さて!死んだあなたですが、あなたにはやって欲しい事があるので復活してもらいます!」
いやまて、そもそも死んでない
「ゲームの話だろ」
「まぁ、一緒じゃないですか、元から死んでるようなモノですし」
否定はできない、けどさ
「やって欲しい事ってなんだよ、それと拒否権は?」
力で勝てないなら適当にいちゃもんつけて追い返すか・・・?
相手は実在するかも、実体があるかもわからない相手だ逆らうのもバカらしくなる
はぁ、童貞卒業のチャンス、と思ったがまぁ仕方ない
こんな訳のわからないものはこれ以上相手にしたく無い
「戦争ですよ、戦争を起こして欲しいのです」
「んなもん、俺が起こさなくてもそこら中でやってんじゃん」
ほっとけば人は争う
植物から進化した知的生命体でもない限り
資源と権力さえあれば人は戦争をするのだ
大なり小なりはあるが
「ですから、戦争のない世界に送りますから、そこで戦争をして欲しいんですよ」
いや、平和なら良くない?
そっとしといてあげなよ
「なんで?」
理由が無いだろう、と付け足す
返ってきたのはこっちの神話のような、人間より高位の存在の勝手な理由
「私の作った世界は、争いが起こらないから文明があまり発達してないんですよ・・・
それで他の神たちにバカにされまして」
確かに戦争はあらゆる技術が発展する
必要は発明の母と言うが
不便と命がけではその加速力は圧倒的だ
「理由はわかった。で、なんで俺?」
もっと適任はいくらでもいる
アドルフ・ヒトラーとかマジで適任だと思う
差別意識は豊富で演説上手
そのくせ優しいから人望もあって味方も多い
戦争をする才能は無かったが、戦争を起こす才能はスゴイと思う
「だってあなたはクズですから、戦死してもこちらの良心が痛みませんし、あなたも戦争を起こして良心が痛まないでしょう?」
うんまぁ、自分が蚊帳の外である限り戦争万歳とすら思う
しかし、自分が蚊帳の外である限り、だ
「ちなみに拒否したらどうなんの」
「あ、大丈夫です、復活せずにそのまま死ぬだけなんで」
まてまてまてーい
それを人は大丈夫とは言わない
「その前に、俺もう死んでんの?」
「え、さっき攻撃が当たって死んだじゃないですか」
ふざけるなよ・・・
ゲームと現実は違うとまず教えてやらねば
と、思ったけどいいか、元から死んでるようなモノ、だし
だったら戦争を起こしてみるのもいいんじゃないか?
「まぁ、いいだろう、初期投資はどんなもん貰えるんだ。以前に!その前にもっと細かい事教えろ」
ファンタジーな異世界転生モノだとしたらモンスターが出る、強力な魔物の目の前に丸腰、となればさすがにここで死ぬ法を選ぶ
「あぁ!ありがとうございます!
まず、向こうの世界での容姿を自由に変えられるのと、奴隷が80名ほど付いてきます!」
戦争を起こすならそうか、この醜い顔よりもカッコ良くした方がやりやすいか、支持率に関わってくる
それに、奴隷という制度があるという事は格差が存在する、ならば戦争は簡単に起こせるはずだ
完全な共産主義国とかだったらまず不可能だ
格差?そうか
「俺のポジションは?」
そこは大事だ、俺も奴隷だったらたまったもんじゃない
奴隷の反乱なんて精々逃げ延びて獣に食われて死ねば御の字だから
「ある程度都合は付きますが、どうしましょう?」
ある程度都合がつく、それはとても制限されているという事だが
「王国の国王で」
まずこれは第1希望、ここからなら簡単
が、しかしそんなに甘いはずはなく
「あ、すいません・・・1地方の領主程度が限界です・・・」
じゃあそれで
領主か、ならば反乱を起こして公国に
・・・これは今考えても仕方ない事だな
ところで、だ
とても大事な事を聞いていない
「文明はどの程度の発達具合なんだ」
石器時代並みとなればまず意思疎通が可能かどうかを疑うべきだろう
かといって現代ほどでも悪い事をするとすぐにバレる、これはこれでめんどうだ
「魔法が発達しているので、科学はほとんど・・・
そうですね、こちらでいう、1800年代中頃、と思っていただければ」
中世ほどではない、こちらなら既に銃も自動車も出来ている頃だな
「銃火器、いや、火薬は?」
これがあるのとないのとでは大違いだ
「あっ、ボルトアクションの単発銃ほどでしたら」
まぁそんなもんか・・・マスケットや火縄銃じゃなくてよかった
じゃなくてぇぇぇ!!
「魔法、あるの・・・?」
危うく聞き逃すところだった
「はい、才能のある者にしか使えませんが」
なるほど、これはむしろ使えるかもしれない
簡単に説明をすれば才能とは最も身近な妬み嫉みの種だからである
万人が大小様々に持っているからこそ、自分より大きいものを妬み、小さいものを見下す
そこで重要になるのは
「俺は?使えるの?」
「何言ってるんですか、使ってみて下さいよ
できるんですか?ん?」
こっちの世界の話しなど誰もしていない
すっげームカつく
できるなら殺したい
「向こうでだよ!!」
「あぁ、向こうで、ですか、でしたら才能は付与しておきますので学習すればできますよ」
なるほど、ん?
「年齢は?俺の」
「適当にこちらで決めますよ」
「じゃあ18ぐらいで頼むぞ」
若すぎる程、ではあるが
未来に溢れていてかつある程度の発言力がある最低年齢、ってところだ
「まぁ、大体わかった、いつ行くんだ?」
「いつでも大丈夫ですよ!」
「こっちから物を持って行くのは?」
これは、だめだろうなぁ・・・
「一個だけですよぉ〜?」
いいんだ!
と、思ったけど、持って行くほど愛着のあるのは
「ん、じゃあこのネックレスで」
「そんなのでいいんですか?」
たしかに、なんの機能も無いし高級品でもない
でもこれは、できれば手放したくない
「では!レッツゴー!!」
はぁ、なんだかんだ引き受けちゃう辺り俺ってお人好しなんだろうな
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