2-4

「潜入捜査をするための衣装を決めるぞ。こっちに来い」

「嫌だ!」

 先手必勝。逃げるが勝ちだ。しかし、あんなに笑顔が似合わない女もいない。邪悪な笑みだ。

「真斗、梶。捕まえろ」

「状況が掴めないんですけど……」

「そうです! 嫌がっている環さんを捕まえるなんてできません!」

 僕と鶴子の間に入る二人。助かった。逃げ切れる。

「これを見ろ」

 鶴子が二人に資料を投げる。

「潜入捜査の効率を上げるため、環には被害者たちと同じような服を着てもらう」

 やっぱり変なことを考えていた。二人には悪いが、ここは盾になってもらおう。

「ごめん! この借りはどこかで……って、え?」

 真斗の手は鶴子ではなく、僕の肩に。梶刑事はいつの間にか事務所の扉の前に立ちはだかっている。何が起こっているんだ。

「あの資料にいったい何が……」

「お前も見てみろ。ほら」

 身動きの取れない僕の目の前に、鶴子が資料を広げる。被害者の写真だ。露出度が高く、まるで娼婦のような服装だ。

(まさか……これを僕に着ろと言っているのか?)

 キッと真斗と梶刑事を睨みつける。二人は変わらずに顔をそむけているが、口元のゆるみを隠せていない。

「さぁ、着替えるぞ」

「っ! この糞どもが!」

 満面の笑みを浮かべる鶴子に引きずられていく。最後に見た二人の顔は、欲望にまみれていた。おぼえてろよ。

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こころの在るところ 六連すばる @mutusrasubaru

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