2-3

「……犯行方法がわからないんです」

「なに?」

「何が起きて昏睡状態に陥ったのかが、どうやってもわからないんです。被害者に外傷はなく、検査をしても山古の体液以外におかしなものは検出されません。脳波を調べても、同じく異常は見当たりません。状況やアリバイでは山古が犯人で間違いないですが、犯行方法がわからないので検挙できないんです……」

 珍しく落ち込んだ様子の梶刑事に、真人がお茶を差し出す。一気に飲み干すと、梶刑事は大きくため息を吐いた。その風量で資料が一部飛んでいく。どんな肺活量しているんだ。

「これは、被害者か?」

 飛んでいった資料を見て鶴子が質問する。

「はい、被害者の一覧です。何かわかるかもしれないので、現場写真も同封しています」

 興味深そうに鶴子は資料を読み漁る。嫌な顔だ。鶴子があの顔をしている時に、良いことがあった例がない。

「環……」

 神妙なトーンで名前を呼ばれる。嫌だ。これは、マズい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る