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「先ほど説明したとおり、被害者は全員女性です。容態は芳しくなく、今も意識を取り戻していません」

 深刻そうな顔の梶刑事。しかし、冷たい床に正座し右頬が腫れている姿では、どうにも話が頭に入ってこない。

「容疑者は山古覚やまこかく。クラブ・ベネットという渋谷のクラブでディージェイをしている男です。昏睡状態に陥った被害者全員が、山古と肉体関係を持っていました。第一発見者も全て山古。状況証拠などを考えても、山古以外に犯人と思しき人間はいません」

 粘りつくような嫌な空気だ。確かに、資料から読み取れる範囲では、山古という男が犯人である証拠が書かれている。だからこそ、おかしい。

「梶。そこまでわかっていて、なぜ山古を逮捕しない? ウチに依頼するような内容なのか、これは」

 そうだ。梶刑事が持ってくる案件は警察ではどうにもならないような事件。あやかしが関わっているような、超常の事件。聞かされているのは、可哀想な事件のあらましだ。ウチで扱う案件とは到底思えない。

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