2話

2-1

 思わず大きなため息が出てしまった。やかましく流れるダンス・ミュージックに、下品な笑い声。頭がくらくらしてくる。鼻息荒く絡んでくる男たちに一発入れられたら、このストレスも解消できるだろう。しかし、今この場所で騒ぎを起こす訳にはいかない。潜入捜査がこんなにも面倒だとは思わなかった。

「鶴子め……恨むぞ」

「え、なんか言った?」

 環は恨み節を押し殺し、ナンパ男との退屈な会話に意識を戻す。目は口ほどに物を言う。男の目的は明らかに僕の体だ。鶴子に無理やり着せられた服装は扇情的で、男たちは虫のように誘われ集まってくる。こちらの思惑通りではあるが、こうまでわかりやすいと嫌になる。男というのは、本当に馬鹿だ。

(しかし、この格好はやりすぎじゃないのか?)

 鶴子に押し切られたが、あまりにも肌が見えすぎている。クラブという、ある種異次元な空間だからこそ成立しているが、一般的には露出狂と言われても仕方ないであろう。あの時、あいつらが寝返らなければこんなことにはならなかったというのに……。

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