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「そういえば、環さんはどこだ?」

 気づかれた。梶刑事が入ってくる直前、咄嗟にソファの後ろに潜んだというのに。鼻をヒクヒクさせて僕を探す姿は、完全に獣。というか匂いでわかるのか? 気持ち悪い。正確に距離を縮めてくる梶刑事の足音に、鼓動が早まる。

「ここか!」

 隠れていたソファが急に消えた。恐る恐る目を開くと、ソファを持ち上げる梶刑事ゴリラの姿があった。その選択肢は僕の頭にはなかった。流石は梶刑事。常人には計れない思考回路だ。

「……」

 なんだ? 何も起こらないぞ。梶刑事の顔が照明の逆光で表情が読めないので、恐怖が増してくる。

「……美しい」

 ソファが重い音を立てて床に落下する。視界の陰で鶴子が梶刑事に猛抗議しているも、彼は全く気づいていない。目を僕から一ミリたりとも離さず、固まっている。

「環さん、僕と結婚してくださ……」

「人の城を傷つけておいて、プロポーズとは……良い神経してるなぁ。梶?」

 梶刑事が振り向くと同時に、鶴子の拳が叩き込まれた。

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