秋は夕暮れ

1話

1-1

 ジリリリリリリ! 

 けたたましい音で職務を遂行する目覚まし時計。テーブルには空いた缶ビールと、数種類の錠剤が散らばっている。

「……夢か」

 そう呟いて、目覚まし時計を止めた。体が震える。秋の気温に服装が見合っていなかった。もう、こんな薄着で寝る季節ではないと身をもって感じる。

 シャワーを浴び、下着姿でクローゼットを開く。右から左まで三周ほど睨みつけるが、どうやら外に着れるような服はこれしかないようだ。

 ため息をつき、仕方なく袖を通す。仕事終わりに服を買いに行くことを決意し、重い面持ちで外へ踏み出した。

(やっぱり、すっぽかそうかな……)

 どうにも気分がのらない。道行く人の視線が思っていた以上に突き刺さる。渋谷駅に着く頃には、ひと仕事終えた以上に心が疲弊してしまった。

 渋谷の裏路地にある雑居ビルの四階。ここが仕事場だ。慣れた手つきで扉を開けると、タバコの煙が充満していた。

「……毎度」

 早々に挨拶を終え、ソファに腰掛ける。イジられずにサッサと帰りたい。その思いはむなしく散った。

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