第3話 明日世界が終ろうがどうでもいいや
お題:暗い「うりゃあ!」
必須要素:うまい棒
時間:一時間
だいたい無理なんだよそんなの、なんだよあの女!
女?いやあれ女だったっけ。
訂正、あれは男だ。
いや胸はあるよ?結構尻もでかいんじゃないかと……でもサポーターで目立たなくしてるし、髪は短いし、あぐらかくし、Gパン履いてガハハ笑いしてるとこしか見たことねぇ。
「ある女性が○○○○に挑戦してます。これは機密事項です、○○○○にまつわる各国諸々の事情はあなたもご存じですね?彼女の挑戦を、止めさせてください」
黒服にサングラスなんて映画じゃねぇんだから、怪しいな、でも映画だったら俺にこの後美女とのロマンスとか色んな美味しい展開があるはずだ。
そんなこんなで、その怪しい仕事の依頼に俺は二つ返事でOKした。
だいたい無理なんだよそんなの、あの問題解くなんて!
そんなことしたら××で儲けてるあんな国やこんな国、もしかしたらこの国だってみんな損する。美味い汁が吸えなくなる。現実的に言って無理だろ、だってみんなそう言ってるし。
でもそんな既得権益のごちゃごちゃより、やっちゃくねぇ、気が乗らねえなんて言ってた俺にやる気スイッチきっと壊れてる♪を押してくれたのも、なんと彼女だった。
それは俺が退屈しのぎに開いたパーティー。
たわいもないどんちゃん騒ぎ、なんとなく色んな奴が来たらいいかなってだけで、参加自由にしておいた。
結構変わった奴が来て面白いなぁ、なんて漠然とビール飲みながら座っていたら。
彼女が来た。
カクテルドレス、化粧して。
ちゃんと体型も目立つ服だ、ちゃんと女に見える。
いや待てあれはあの映画のヒロイン役の服じゃねぇか!
「何?」
「あぁ嫌、あの赤い服の女……」
「知りあい?」
「の隣可愛くねぇ?誰?」
「あぁあれな、彼女、みんな狙ってるらしいぜ、よければ紹介するけど?」
俺は精一杯プライドを守った。
でも目は間違いなく泳いでた、そのはずだ、彼女も俺を見ていたから。
冗談じゃねぇ彼が私に夢中なのよなんて思われたら俺の気が晴れない。
俺は彼女に聞こえる大声でこないだの女の話をした。
何、たわいもない話だ。
なんとなく気になるから、○○○○について調べて、そのサイト作って、彼女の連絡待って、そのうち親しくなって、好きな映画、今日のパーティー、その他、勝手にくっちゃべってただけ。
まさかこんな風に言うこと聞いてくれるとは……なんだ簡単じゃん。
そんな女に俺興味ないし。
俺は友達にもらった一番人気の女の子の番号を登録しながら、そんな風に思ってた。
時期もありましたけど~!!
なんだよあの女!
女?あぁ女なんだよ。
困ったな……本当に某国が動き出した。
もっとも彼女によればそれは計算の内で、この後絶妙なバランスの上に色々あるが今の某国大統領なら多分うまくいくはずだそうで。
そんなこと言ったって某国にも色々なお化けがいるだろうし、ほら、もうこんな動きが……。
はいはい止めますよ、別に誰にもたのまれてないけどね。
だいたい俺は彼女のことを止めるのが使命のはずなのに、なんでサポートしてんだろう。
いや俺は諦める彼女が見たいんだよ、Sだから。
で色々な事情で物理的にできなくなるのは嫌なんだよ。
協力者のふりして、裏切って、大人の世界はそんな甘いものじゃありませんでしたなんて笑うのがいいんだよ。
だから、あれはサクッと止めました。
あぁ甘ちゃんは俺でしたね~!だ。
ついに完成した彼女の論理、自慢じゃないが、サイコーだ。
あぁ、彼女はサイコーだ、これなら俺の女にししてやってもいいかも、な~んちゃって。
ところが、気づいた某国が、あそこが、ここが動き出した。
色んな国がありとあらゆるパソコンをハッキング、最も、手立てを立ててない彼女ではない。
なんてったって彼女の原稿はアナログで、これなら、パソコンの中にはない。
俺はほっと胸をなでおろす。
なのに、そんな彼女を震災が襲ったのだ、逃げ惑う彼女。
勿論、その論文は持って……。
「この震災下、ある論文が完成した。その論文を持っている人物を追って、各国が動いてる」
「実力行使も辞さないらしい」
そんなうわさが立った、実際のところはどうかわからない。
でも俺は、暴力に脅されて、諦める彼女は見たくなかった。
だから俺はサイトを更新し、彼女に、論文を捨てるよう言ったのだ。
「命があればまた論文は書ける、頭に論理があるんだろう?」
そんなことを言った、気がする。
彼女は悩んだ、当たり前だ。
震災下当たり前だが各国で戦争は止まず、色んな国が色んなものを奪い合っている。
彼女は、論文を打ち捨て、動画サイトで我が身を晒し、自らそれを止めようと試みた……。
「うりゃあ!」
コンビニで弁当と一緒に買ったうまい棒をかじりながら、俺はやけになって叫んだ。
やってやるよ、人間一人、守って落ちるサーバーならいらない、また建てるだけだ。
だから誰も、あの女性に触るんじゃねぇよ!
あれは、俺の女にするんだ。
静寂の中、大仕事を終えた彼女が寝ていた。
俺はその指にちょっと触れた、気がする。
時が過ぎ、彼女に論文を捨てさせることに成功した俺は全てを手に入れた。
金と力と女。
女は、彼女じゃない誰かだ。
対する彼女は、何も手にできずに、誰もが彼女に対して「結果はどこにあるかね」という顔をする。
俺は彼女を裏切ったんだ、ほら、世の中なんて、こんなクソみたいなとこだよ。
君の守ろうとした世界なんて。
大人の世界はそんな甘いものじゃありませんでした。
なのになんで、こんな満たされないんだろう。
俺は今でも、彼女と同じ夢を見ていたフリをしていたはずのあの頃を思い出すんだ。
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