第15話〜仮面を被った少年〜

 例の高台に着いた頃。まだ日は落ちておらず、青い空と眼下に広がるピンクの装飾が施された街並み。

 寂れたベンチが一つ、ボロボロで今にも崩れそうな落下防止の柵。あまりにも老朽化が酷いため、来月には完全に立ち入り禁止。再来月には取り壊しが決まった。

 真は薄々と気付いていた。どうして小春がこの場所に来たがっていたのかを。

 人がいない場所というのは決まって秘密の話をするのに適している。

 数週間前。小春から頼み事を受けた時。一昨年、昨年のあの時も。

 この場所についてからというもの、小春は落ち着かない様子であたりを見回し、何度も深呼吸を繰り返している。

 記憶喪失の時期と別れた時期に生じた矛盾の答えは、まだ見つかっていない。その事を今ここで、確認しよう。

「ねぇ、沖野さ」

「今日はありがとね!」

 タイミングバッチリ。被された。しかも、被せた本人は被せたことに気づいていない。

「一つ、聞いてもいい?」

 聞きたいことがあるのはこっち。なのだが、時間はまだある。ここは譲ることにする。

「どうしたの?」

「えーっと、その、どうして、今日は誘ってくれたのかなぁって」

 なんだ、そんなことか。

 和樹にも追求されたが、特別深い意味は無い。

「岸波さんが、記憶を戻すには付き合った方がいいんじゃない?って言ったのは覚えてる

 ?」

「うん。覚えてるよ」

「けど、僕はそれを断った。確かに、付き合えば記憶を失う前と同じことをすれば連想的に思い出すかもしれない。それでも、僕はそれが嫌だった」

 吐き捨てるように、けれどもはっきりとそう言い、一旦間をとる。

「僕は、我儘なんだ」

「わがまま?」

 話が変わりそうな気配に、小春は不思議そうに真の顔を見た。

「君とは付き合いたくない。記憶は取り戻したい。そのための方法として適切だと思ったのが、一緒にでかけること」

 なぁんだそういうことか。と、小春はがっかりしたように肩をすくめる。

「それで、その、真君はなにか思い出せた?」

「いや、思い出せそうで、何かが頭の中にぼんやりと浮かびもしたんだけど、全部形になる前に消えちゃってね」

 小春の言動、行動から、確かに何かを思い出せそうではあった。それら全ては夢のように形を掴むことなく消えていく。

 その感覚が、たまらなく気持ち悪い。

 記憶の欠片が思い浮かびもしなかったあの頃に比べては幾分マシではあるが、やはり簡単にはいかない、か。

 ただ、あと数回。チャンスがあれば。

「ね、ねぇ!真!」

「・・・・・・え、と。なに?」

 どうして突然の名前呼び捨て?初対面の人にですら呼び捨てにされることはあるから別に気にはならないけど、小春の顔は真っ赤だ。恥ずかしがってまで、呼び捨てで名前を呼んだその意図は・・・?

 屈託のない赤面の笑顔を浮かべた小春は、何も言わずに真を見る。

 なんだ。なんなんだ?

 意図は。その理由は

「!?」

 不意に頭に走る、ノイズ。

 真っ白なキャンパスに絵の具を撒き散らしたかのようにまとまりがなく、落ち着かない思考。

 目の前の景色が、書き換えられる。




 かつての沖野小春は、名前を呼び捨てにして俺のことを呼んでいた。

 ほかの人には、苗字でのさん付け。明らかに距離をとっていた。それでも彼女の周りには、いつも人がいた。

 人当たりがよく、社交的な性格。女子からも男子からも。挙句には教員からも好かれる優等生。

 写真を撮るときもいつだって笑顔。それが、世間一般の知る沖野小春と言う少女だった。

 それが普通だと、思われていた。

 彼女が見せる笑顔には裏があると気づいたものはいない。正確には一人だけ、知ってしまった。

 それが、俺。

 中学一年生。秋頃の話だ。当時俺は学習塾に通い、夜が遅くなることも多々あった。

 塾から帰るには、途中にある公園を通るのが近道。いつものようにそこを通り、俺は見てしまったのだ。

 星明りとわずかな電灯だけが照らす寂れた公園。ベンチの上で体育座りになり涙を流す、彼女を。

「どうしたの?」

 俺は、今と同じように人のよさそうな仮面を被って彼女に話しかけた。

 時刻は午後八時になろうかと言うところ。こんな時間に女子中学生が一人で泣いていれば誰だって不思議になるだろう。

「家に、帰りたくない」

 彼女は、いつもの仮面を脱ぎ捨ててそう言ったのだった。初対面だったのにも関わらず。

 当然、俺は困惑する。同時に、心の中で舌打ちをする。めんどくさそうだな、と。

「風邪、ひくよ?」

 秋の夜。冬の一歩手前ということもあってか、夜はかなり冷え込む。実際、その時もかなり寒く、それなのに彼女は中学校の制服であるセーラー服を身に着けた以外に、上着は着ていなかった。

「別に、いいもん」

 口をとがらせ、彼女は言った。

 そうかそうか。それじゃあさようなら。と言うわけにはもちろんいかず。中学生なりに頭を巡らせ、俺が着ていた上着を貸してやった。

「いらない」

「でも寒いでしょ?」

「寒くないし」

 どういうわけか彼女は強く反発し、受け取ろうとはしなかった。

「それに、君が風邪をひいちゃう」

 俺の体の心配までするのだった。

「大丈夫。僕は馬鹿だからね。風邪をひくことはない」

「そんなの、迷信でしょ?」

「まぁね」

 迷信でも、信じてみる価値はある。

 病は気からと言う言葉があるように。馬鹿は風邪をひかないと思い続けていれば本当に風邪は引かない。当時は本気でそう思っていた。

「だいたい。君は誰?」

 やっと彼女は俺の正体を聞きただす。多くの人間と関わる彼女ではあるが、俺と関わったこともなかったし、クラスが同じだったわけでもない。完全に、赤の他人。

 一方で俺の方は学校で有名な彼女のことを知っていたし、だからこそ今の今まで避けてきた。

「君と同じ中学校、同学年の一組。苗代真だよ。沖野小春さん」

「やっぱり、私のこと知ってるんだね」

 うん。もちろん。と言うのは、どういうわけか言えなかった。本能的に、彼女にとって自分が有名ということはコンプレックスになっていると感じた。

「あなたは、どういう理由で私に近づいてきたの?」

 もう一度言おう。夜は遅く、女子中学生が泣いていたら気にならないわけがない、と。

「ただの気まぐれ」

 しかし、そう口に出すのはなんだかとても恥ずかしかったのでぱっと思いついたことを口にする。

「だったら、放っておいて」

 彼女は、まるで死人のように顔を白くし、目つきを鋭くしてそう言った。

「あなたも、私をいいように使うんでしょ?」

 俺はこいつのことを噂でしか知らないし、話すのも今日が始めて。実質知らないに等しいのだが、俺が想像している人物ではなかった。

 ここまで敵意を剥き出しにしている。彼女をよく知る者から見れば、異常なのだろう。

 そして、小春の物言いから何を抱え込んでいるのかも容易に想像できてしまった。

「使う?僕が君を?違うよ。君が僕を使うんだ」

「え・・・?」

「君が僕の上着を使う。君は何も使われていない」

「いや、うん。そうじゃなくて。っていうかこの上着だっていらないし」

 明らかに困惑した彼女は、ぎゅっと体を縮こました。

「とにかく。君はこの上着を着て。体を冷やして体調を崩しても大変でしょ?」

「うるさい。私、風邪ひかないし。ひいたことないし。こんなの迷惑なだけだし」

 まるで子供のように。いや、実際に子供なのだが。クールビューティーというイメージは完全に消え唇をなおも尖らせた彼女。

 大人びているという噂も。所詮はただの噂。彼女は年相応の少女だ。

「頑なだね。学校に行けなくてもいいの?」

「別にいい。学校なんて、行きたくない」

「どうして?」

「・・・君には、関係ない」

「それもそうだね」

 俺は苦笑を浮かべ、上着を置いてその場を後にしようとする。

「あ」

 彼女が何かを言おうとしていたようだが、俺は気にも留めず家に帰った。

 これが、すべての始まりだった。

 俺のお節介。あえて上着を置き学校にこさせるように仕向けた。

 本当に些細なお節介から、始まったのだ。




 景色が、例の高台へと戻った。

 襲い始めた頭痛に顔をしかめながら、真は目の前の少女を黙って見据える。

(今まで何をやってもはっきりとは思い出せなかったのに。たかが名前を呼ばれただけで・・・!?)

 そのことが、真の心をひどく揺さぶった。

 記憶を戻すきっかけはどんな些細なものでもいい。それが、証明された。

「真君?大丈夫?」

 小春は、記憶が戻ったことに気付いていない。だが、様子がおかしいことに気付いてはいるのかもしれない。

「狙った・・・?」

「何が?」

 惚けているようだが、それは演技だろう。

「どうして急に名前だけで呼んだの?」

「呼んでみたかっただけ」

 嘘だ。この女は確実に俺が何かを思い出すのを期待していた。今度はお前が仮面を剥ぐ番だと言わんばかりに。

 こちらも、やられっぱなしと言うわけにはいかない。

 矛盾点を突きつけてやる。

「君が記憶を失ったのは、僕と別れた日。そうだったね?」

「うん。そうだよ」

「そして、君は三年生前期までの記憶もない、と」

「うん。そうだよ」

 こちらが何を言いたいのかわかっていないのか、小春は表情を変えずに頷いていく。

「僕と君が別れたのは、五月の下旬だと推測される。なにせ、僕がこっちに引っ越してきたのがその時期だったからね。それより後と言うのは考えられない」

 どうだ。この矛盾点。お前はどう返す?

 真は、絶対に答えられない。そう確信し、返答を待つ。

 だが、聞こえたのは小さなため息。そのため息は、呆れが混ざっているように真には思えた。全身に嫌な汗がまとわりつく。

「真君。何か勘違いしてない?」

「勘違い?」

 どういうことだ・・・?

「私が記憶を失ったのは、一回だけじゃないよ」

 ・・・は?

 それはいくらなんでも都合がよすぎる。前例があることをいいことに、陥れようとしている。

「最初は真君と別れたその日前後。次は、前期の修了式の日。その時は事故でね。生きているのが不思議なくらいの大けが。その代わりに記憶を失くした」

 ありえない!

 そう否定することはできたはずだ。なのに、真には小春が嘘を言っているようには聞こえなかったのだ。

 小春の嘘をつく時の癖はまだ見抜けていない。なのに、本能的にこの言葉が嘘ではないと、勝手に判断していた。危険な状態だ。

「本当は一回だけだと思ってた。けど、私は記憶を失っていたという記憶すら失くしてた。だから、真君には『前期までの記憶がない』って言った」

 まさか自分が二度も記憶を失っているなど思いもしないから、あんな矛盾が生まれた。

「けど、思い出した。少なくとも、真君から別れてから前期までの記憶は。あまり、信じたくはないけどね」

 記憶を思い出したはずなのに、真と別れてからの記憶はゼロ。

「ちょっと待って。じゃあ、カフェで話していた君が記憶を失った瞬間のあの話は?」

 時系列を考えると、小春が真に相談を持ち掛けた時はまだ思い出していないはずで。その後に、思い出したというのか。

「あれはれっきとした事実。一度目から二度目までの時間はそんなにないからね。何気なく卒業アルバムを見て思い出せた」

 嘘にも、本当にも聞こえる。

 何が正しいのかが、わからない。

 些細なことで記憶が戻るのは本当についさっき証明されたばっかり。

 いや、難しく考える必要はもうない。記憶が戻っていると本人が自称しているのなら、それでいい。第三者には関係のないこと。

 矛盾点は解決。そういうことにしておこう。そうじゃなければ、話は一向に進まない。

 仮に小春の話が嘘なら、いずれはぼろが出るは-

「ありがとね。上着、貸してくれてさ」

 え?

「・・・え?」

「あの時は言ってなかったから」

 何のことかはすぐにわかった。真がついさっき思い出したことの、続き。

 分かった途端に。真は驚愕で目を見開いた。

 やっぱり小春は、思い出しているのだ。付き合っていた時のことも。恐らくは、詩音から話を聞いたあの時には既に。




 初めて小春と関わり、上着を置いて行ったその次の日。

 朝、学校に行ってみると、机の上に自分の上着が置いてあった。普段一番早く学校に来ている奴に誰が置いて行ったのかを聞いてみたが、ついた時には既に置いてあったという。

 誰からにも気付かれる前の犯行。その犯人はすぐにわかったし、ご丁寧にメモまで添えられていた。

『昨日のことは誰にも言わないでください』

 彼女にとっては誰にも見せていなかった姿。わざわざ口止めしてくるのは、彼女のプライドなのだろう。

『あなたも、私をいいように使うんでしょ?』

 昨日聞いた言葉が脳内でリピートされる。

 いいように使う。彼女は、己のことを道具のように言った。

 彼女の行動を見ればわからない事でもない。彼女は、使われているのだ。

 勉強を教える道具。先生の手伝いをする道具。話を聞く道具。一緒に遊ぶ道具。

 そのすべてを彼女自身が引き受けているのだから、こちらとしてはざまぁみろとしか言えない。

 嫌なことを嫌と言えない彼女の自業自得だ。

 そんなことを考えていたその日の放課後。俺は沖野小春に呼ばれた。

 周囲の男子の目線が痛かったが、俺は周囲からの目を気にすることはない。こちらとしてはぜひとも代わってもらいたいくらいだった。

 俺は、この女が当時から苦手だったのだから。

 彼女と共に向かったのは昨日と同じ公園だった。

 そこにつくまでは無言だった彼女は、昨日と同じベンチに座り、ようやく口を開いた。

「昨日のこと。言ってないよね?」

「言ってないですよ。それとも、言ってほしかったんですか?」

 俺は冗談めかして笑い、それを聞いた彼女は顔を真っ赤にして怒った。

「そんなわけないじゃない!絶対にやめてよ?」

 学校では絶対に見せることのない感情の爆発。

「言われて困ることでも?」

「困るから言ってんの!」

「じゃあ、そうですね。取引しましょうよ」

 これは咄嗟の思い付き。

「取引?」

 訝し気に俺を見据える彼女に答える。

「えぇ。僕が昨日のことを言わない代わりに、昨日どうしてここで泣いていたのかを教えてください。そうすれば、言いませんよ」

「それ、私に得ないよね?」

 うん。

「公正な取引をするなら、あなたが私に何か秘密を教えてよ」

「お断りします。なんでわざわざ秘密をばらさなくちゃいけないんですか。秘密じゃなくなるじゃないですか」

「不公平」

 知るか。

 こっちは一つ弱みを握っている。それだけで優勢なのだ。わざわざ対等に並ぶ必要もない。

「噂って、所詮は噂なんですね。君は全然噂通りの人じゃない」

「噂に尾ひれがつくなんてよくあることでしょ?」

 それを噂の当事者が言うのかよ。

「いいんですか?僕なんかに噂通りじゃない姿を見せて」

 噂通りの姿。即ち優等生で社交的。クールビューティーな姿。

 現在の彼女。わがままな子供。

「だって。疲れるもん。あなたもでしょ?」

「ちょっと何言ってるのか」

「誤魔化しても無駄。その丁寧な口調。作ってるんでしょ?わかるよ。同じ匂いがする」

 同じ匂い、ねぇ。一緒にされるのも癪だが間違ってない。

「ま、ね。それが、君の本性か」

「気持ち悪い」

 え、なんで。この子優等生の皮を剥いだら急に毒を吐くようになったんだけど!?

「で?なんで真は口調を作ってるの?」

 急に名前呼び。最近では珍しくないが、彼女にしては珍しい選択だ。

「別に作ってないよ?」

 一緒にすんなボケ。

「逆に聞くけど、どうして君は口調を変えるの?」

「教える義理はない」

 はいはい。そうですね。そうでしたね。じゃあ話も終わり。

「それじゃあね」

「あ、待って」

「何?」

「あ、いや」

 なぜ呼び止めたのか、彼女自身もよくわかっていないようだった。だた、何度も何度も虚空を掴んでは離す。

「べ、別に。何でもない。帰るならさっさと帰れば」

 呼んでおいてなんだよこの対応。

「もちろん。そうするつもりだよ」

 俺はそう言って、その日は家に帰った。




 中学時代。出会った頃は別に仲が良いというわけではなかった。むしろ、悪かったといってもいいだろう。

 小春はどういうわけか、他の人とは違う対応で真に突っかかる。その理由は分からなかったし、教えてもくれなかった。

「君は、どこまで思い出している・・・?」

 気づけば喉がからからに乾き、絞り出すように声を出す。

「全部」

 全部・・・だと・・・?

 それはもう、真が関わる必要もないということで。特別何かをしたというわけでもないが、真の頼み事は終わったということになる。

 なら、それでいいのだ。・・・いいはずなのに。スッキリしない。

 順番に、小春との出会いは思い出した。そこから先は、まだ。

 自分の記憶だけが戻っていないという事実に、真の焦燥感は増していく。

 ようやく、思い出そうと動き始めたのに。こちらは、何も思い出していないのに。こいつはすべてを思い出したと言う。

「真君は、思い出していないんだよね?なら、知らなくてもいいよ。この記憶は、あまりにも残酷すぎるから」

 真の精神は、限界だった。

 嘘だ。負けた。負けた?何に?小春に?違う。自分の心に。どうしてこうなった。何が悪い。何が足りていない。俺とこいつ。何が違う。なんで思い出せた。なんで思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。思い出せない。

「あ、れ・・・?」

 足元がおぼつかない。視界がぐにゃりと曲がる。小春が何かを言っていた。それも、聞き取れない。

 目の前に浮かぶ光景は。とある公園。




 ―ごめんなさい。あなたとはもう、付き合えない。




 少女がそう言ったのを、真ははっきりと聞いたような気がした。

 去年の、春。




 ―だから。




 この続きを、俺は知っている。




 ―もう、別れよう。




 それに対し、俺は笑った。最後の最後まで仮面を被り続け、俺は感謝を告げた。

『今まで不甲斐ない僕と付き合ってくれてありがとう』と。




 ―こちらこそ、貴重な体験をありがとう。




 そう言って、彼女は公園から姿を消したのだ。

 思い出してみれば、簡単なことだった。

 詩音から聞いた話は、詩音が正しい。俺が、言われたのだ。『好きでもないのに付き合っていた』と。

 あぁ、なるほど。

 思い出せたのは、よりにもよって別れた時。

「もう、充分か」

「え?」

 小春の驚く声を無視し、真はどこかへ電話をかけ始めた。

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